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セブン&アイ・ホールディングスは、カナダのクシュタールから合併申し入れを受けているが、あくまでも「日本企業」として守り抜く動きが強まっている。日本の消費者にとって、セブンイレブンは単なる物販業という位置づけ以上の存在である。ATMという金融インフラでもあり、市町村への届け入れ窓口でもある「国民企業」である。

(1)「セブン&アイ・ホールディングスの創業家などは、経営陣が参加する買収(MBO)計画を進めている。総額9兆円以上という超大型案件だ。創業家は、資金調達を巡って種々の動きをしており、新たに米プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社のKKRが優先株による出資を検討していることが分かった。数千億円単位の出資を模索している」

MBOのメリットは以下のようなものが指摘されている。
1)中長期的な経営が可能 経営陣が株主となることで、短期的な利益追求に縛られず、中長期的な視点で経営を行うことができる。
2)意思決定の迅速化 経営陣が株主であるため、重要な意思決定を迅速に行うことができる。
3)従業員のモチベーション向上 経営陣と従業員の間に信頼関係が築かれやすくなり、従業員の働きがいやモチベーションが向上する。
4)コスト削減 上場企業が非上場化することで、上場維持コストを削減できる。

要するに、一般株主への配慮した増配など行わず、従業員への待遇改善を行えるメリットだ。株式市場からの資金調達はできないが、社債や金融機関からの融資で賄える。セブンイレブンが非上場となれば、ローソンやファミリーマートもすでに非上場であるので、日本の三大コンビニはすべて非上場となる。

(2)「複数の関係者が明らかにしたところでは、KKRと米アポロ・グローバル・マネジメントが、優先株で計1兆5000億円出資するのに対し、セブン創業家と伊藤忠商事は普通株で、それぞれ約5000億円、1兆円超の出資を検討しているという。出資総額は4兆円規模の見通しだ。

KKRと米アポロ・グローバル・マネジメントは、優先株で計1兆5000億円出資するという。優先株であることが、長期保有で配当を稼ぐという戦略だ。セブンイレブンは、十分に高収益企業へ転換できる見込みが立ったのだろう。

(3)「実現すれば、史上最大のバイアウト案件となるセブン創業家によるMBOの提案は、巨額の資金調達がハードルとされてきた。アポロに加え、世界有数の規模を持つKKRが出資に前向きな姿勢を示していることで、計画の現実味が増す。KKRの広報担当者は、コメントを控えた」

KKRが、出資へ前向きな姿勢を示しているのは、セブンイレブンが高収益企業になる計画を提示していることであろう。それは、海外出店のスピードを上げることだ。国内市場はすでに飽和状態である以上、海外出店しか発展の道はない。

(4)「出資者を募り資本性資金の割合を高めることで、銀行融資の格付けをトリプルB以上の「投資適格」に引き上げ、銀行が融資をしやすくする狙い。アポロとKKRに加えて、三井住友銀行などメガバンクからの融資をあわせ総額約9兆円の資金を確保する計画だ」

創業家陣営は、MBO終了後に北米で手がけるコンビニエンスストア事業、セブンイレブン・インク(SEI)の新規株式公開(IPO)を検討している。1兆円を超える規模の資金調達につなげ、MBOに伴う借り入れの返済に充てるとしている。IPO後もセブン&アイは、一定程度の持ち分を維持する計画という。『ブルームバーグ』(12月4日付)が報じた。