中国の2024年のGDP成長率は5%と、政府目標の5%前後と一致した。昨年後半の刺激策が寄与した形である。だが、有力エコノミストが昨年秋、「実態は2~3%成長」と発言して、習国家主席から発言を禁じられている事実と重ね合わせると、「はてな」という疑問符がつくのだ。5%成長という経済の勢いではない。その証拠として、相変わらず「無駄な」インフラ投資や住宅投資を続けているからだ。瞬間的にGDPを押上げても、継続的な付加価値を生まないので「線香花火」に終っている。
『日本経済新聞 電子版』(1月17日付)は、「中国、未完インフラ野ざらし GDP減速の現場を行く」と題する記事を掲載した。
中国の2024年の実質経済成長率は5.0%と、23年の5.2%から減速した。住宅不況が景気の足を引っ張った。不動産収入に依存してきた地方政府の財政難は極まり、停止に追い込まれた公共事業も多い。未完成のままのインフラが放置された地方都市の現場を取材した。
(1)「中国南部に位置する広西チワン族自治区の柳州市。市街地にある公園内の展望台から見渡すと、市中心部を走る幹線道路に鉄道用の橋脚が数キロメートルにわたって等間隔で並んでいた。肝心の線路はない。近くに住む女性、李さん(76)は「何年もこのままの状態でさらされている。何の役にもたたないまま、遺構になっちゃったね」と憤った。市中心部を走る全長45キロメートルの鉄道建設は16年に始まった。25年に運行開始を予定していた。同市は総工費126億元(約2700億円)と見積もったが、市の予算不足で21年に工事が止まり、橋脚や駅だけが残された。「毎朝通う公園を整備した方が安上がりだし、たくさんの人に使ってもらえたのにね」。李さんはあきれ顔だった。鉄道建設の効果と言えば、「遺構」をSNSで紹介しようと展望台を訪れ撮影する観光客が少し増えたくらいだと笑う」
25年に運行開始を予定していた鉄道が、橋脚建設まで済ませて野ざらしである。柳州市は総工費126億元(約2700億円)の予算が息切れしたのだ。「もったいない」話である。橋脚まで建設が進んだ以上、あとわずかな資金が続かなかったのだろう。
(2)「広西チワン族自治区に隣接する貴州省にも財政難で行き詰まった公共事業がある。省都の貴陽市には、21年に完成するはずだった幹線道路が建設途中のまま残っていた。アスファルトはところどころはがれ、雑草が生えたり水たまりが点在したりしていた。同市は当初、市中心部と新たな開発区を結ぶ全長12キロのバイパス道の完成に、52億元の費用を見込み建設を始めた。資材高でコストが膨らみ工期が遅れるなか、マンションバブルが崩壊した。税収に匹敵する規模だった不動産収入が大きく落ち込み、追加費用を捻出できなくなった」
貴陽市には、21年に完成するはずの幹線道路が未完成のまま放置されている。不動産バブル崩壊で土地売却益が急減し、建設資金を調達できなくなったのだ。
(3)「土地が国有である中国では、地方政府が国有地の使用権を不動産開発会社に売り渡す。不動産バブルに沸いた頃は使用権の価値も右肩上がりで、売却収入は地方税収に並ぶ規模まで拡大した。地方政府はその不動産マネーを公共インフラの整備などに充てた。21年半ばに住宅不況へ陥ると、状況が暗転した。バブル崩壊から3年あまりがたち、国有地使用権の売却収入は半減した。かつてインフラ開発のために発行した地方政府の「隠れ債務」の返済負担も重くのしかかり、財政が逼迫。未完成のまま放棄された公共事業が増えた」
地方政府のインフラ投資が、21年以降に滞る事態になったのは、不動産バブル崩壊の結果だ。不動産バブルが、どれだけ中国経済を支えてきたかが分る。
(4)「それでも中央政府は景気下支えのため、地方政府に「公共事業を加速せよ」と指示する。地方政府にインフラ建設のために地方債を発行させて、公共事業を上積みするようせかす。バイパス道の建設を停止した貴陽市も23年に79億元のインフラ債券を新規に発行した。調達した資金を使って、ダムや病院など61件の開発に着手した。そのうちの一つにオフィスと住居を一体開発した省エネ企業向けの開発区がある。雪がちらつくなか労働者らが工事を急いでいたが、1月初旬時点で入居予定の企業はないという。地元住民の反応は冷ややかだ。タクシー運転手の雷さん(35)は「どうせ借金するなら、今ある道路を舗装してほしい。道路がきれいになれば速く走れてお金も多く稼げるのに」とぼやいた」
中国政府は、惰性で政策を進めている。インフラ投資と企業補助金の継続である。政策見直しが、全く行われないという「不思議な国」である。
(5)「借金を抱えてまでインフラ整備を進めても、景気回復という実感は市民に生まれない。国有地使用権の売却収入という自主財源が細るなか、地方政府には将来の返済リスクだけが残る」
今後も、雪だるま式の負債残高を抱えて行く中国経済に展望があるわけでない。習氏は、自己の国家主席継続が最大目標になっている。
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