経済産業省の工業統計調査によると、2019年時点の半導体産業(素子・集積回路・製造装置)の従業員は約16万人で、20年間で3割も減った計算である。電子情報技術産業協会(JEITA)は、今後10年間に全国で4万人超の半導体人材が不足すると見込まれる。それだけに、早急な人材育成が求められている。
近年、人工知能(AI)用データセンターなど向けに需要が急拡大している。国内でも大型投資が相次いでいる。熊本県に進出した台湾積体電路製造(TSMC)は、2つの工場で3400人の採用を予定するほどだ。ラピダスは、北海道千歳市で最先端半導体の量産を目指している。このように、軒並み半導体人材需要が増える見通しである。
『日本経済新聞 電子版』(1月18日付)は、「半導体人材、7大学に育成拠点 成長産業の即戦力輩出」と題する記事を掲載した。
文部科学省は国内7大学に半導体の設計や生産に関わる人材育成の拠点をつくる。選定した大学の教育プログラムに各地域内の専門教員が加わり、即戦力を輩出する。半導体人材の不足は先進国に共通する課題で、日本では今後10年で4万人足りなくなると見込まれる。成長産業で世界と競うため教育基盤の強化を急ぐ。
(1)「拠点となる大学は、2025年度内に公募で選ぶ。拠点校は教育プログラムを策定し、周辺の大学の教員と連携して授業を行う。文科省は教育環境の整備のため7校にはそれぞれ年間1億円弱を補助する。7校のうち数校程度は実習の拠点とする。半導体の製造を体験できる装置を用い、全国の学生も参加できるようにする。製造現場や研究開発で中核となれる人材の育成を想定している。半導体分野では電気電子や機械といった幅広い基礎知識が必要とされる。先進的な人材育成に取り組む大学はあるものの、全国的にみると教育体制は整っていない。拠点校を設けることで専門教員が各大学に分散しているという課題を解消する」
文部科学省は24年9月、すでに欧州の大学と連携して半導体や人工知能(AI)など先端分野の人材育成に取り組む大学院を支援する事業で、筑波大や慶応義塾大など10校を支援対象に決めたと発表した。2028年度までの5年間補助する方針で、支援総額はそれぞれ年1億円程度となる見込みだ。
これとは別に、今回の国内7大学に半導体の設計や生産に関わる人材育成の拠点をつくることになった。7校のうち数校程度は、実習の拠点とする。半導体の製造を体験できる装置を用い、全国の学生も参加できるようにするという。人材育成の裾野を広くする方針だ。
(2)「日本の半導体産業は、1980年代に「日の丸半導体」として世界を席巻したが衰退。企業の技術者や研究に携わる人材が減少した。半導体の製造は様々な工程があり、全てを自社で網羅する企業は少ない。指導にあたれる人材も十分ではなく、職場内訓練(OJT)での養成には限界がある。半導体の国際団体SEMIの幹部は24年12月、30年までに世界でも約150万人の労働者が新たに必要だとの見通しを示した。人材の育成は各国共通の課題となっている。米国半導体工業会(SIA)によると、米国では30年までに6万7000人が不足。22年成立の「CHIPS・科学法」は人材育成への多額の投資を盛り込む」
企業の職場内訓練には限界があるので、大学の課程で実習をさせようという狙いだ。世界では、30年までに約150万人の労働者が新たに必要とされている。世界中が、半導体競争に向っている。
(3)「台湾は、24~28年の5年間で52億台湾ドル(約240億円)を投じ、半導体やSTEM(科学、技術、工学、数学)などを学ぶ留学生の受け入れを強化する。当局や企業が奨学金や生活費を支援し、代わりに卒業後の一定期間、台湾で働いてもらう仕組みも設けた。韓国は22年、10年間で半導体関連人材を15万人養成する計画を発表。サムスン電子など大手企業が資金を拠出して有力大学に専門学科を整備し、卒業生を自社に迎え入れる。米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、世界市場は30年までに1兆ドル(約150兆円)と、21年の6000億ドルから約7割増える見通しだ」
台湾は、半導体を学ぶ海外留学生を受入れる。当局や企業が、奨学金や生活費を支援し、代わりに卒業後の一定期間、台湾で働いてもらう仕組みも設けている。
(4)「英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクターは、「国内の半導体人材育成の取り組みは始まったばかりで、世界中から優秀な人材が集う研究拠点を持つ欧米などと比べると遅れている点もある」と指摘する。そのうえで「海外からの人材獲得も進めるべきだ。日本企業にも巻き返しのチャンスはある」と強調した」
日本も、海外から半導体留学生を受入れる取組みが必要とされている。
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