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安倍元首相は、トランプ氏と会見する際に必ず持ち込んだのは、日本企業が米国経済へいかに貢献しているかを示すグラフだったという。石破首相も、この前例に倣い日本の米国対内投資残高が1位であることを説明すべきだろう。ついでに、日鉄のUSスチール合併が、米国鉄鋼業の近代化に役立ち、鉄鋼価格を引下げユーザーの利益になるかを説明することだ。さらに、インド太平洋の平和戦略の核である日本の防衛努力を説明する。こういう微に入り細に入り説明すれば、トランプ氏も首を横には振るまい。要するに説明力だ。

『日本経済新聞 電子版』(1月18日付)は、「対トランプ、日本のディール材料は 防衛支出や対米投資」と題する記事を掲載した。

米国で2期目のトランプ政権発足が20日に迫る。新政権は経済や安全保障で各国とのディール(取引)を重視するとみられる。トランプ氏の1期目が始まった2017年以降の日本の対米直接投資残高や防衛費を分析するとそれぞれ6割ほど増えている。日本にとって交渉材料になりうる。

(1)「トランプ氏は、17〜21年の大統領1期目に安全保障で日本の負担増を求めた。通商分野でも農産品の関税の引き下げなど2国間で市場開放を求めた。2期目を前にしても関税引き上げに言及するなど同盟国を含む各国に取引を迫る構えをみせる。一方で、日米両国を巡る環境は変化しており、トランプ氏の1期目当時と比べても異なる。日本の経済、安保両面の貢献拡大、中国の軍備増強といった国際情勢の変化は日本にとって対トランプ政権の戦略に直結する」

日本は、米国にとって最強の同盟国である。トランプ氏に、この実態を認識して貰うことだ。

(2)「代表例が、日本が踏み出した防衛力の拡充だ。22年に新たな国家安保戦略を策定し、23〜27年度の防衛費の総額を43兆円程度と定めた。24年度当初の予算額は17年度比で6割弱増えた計算になる。27年度には他省庁の防衛関連費も含めて国内総生産(GDP)比2%の達成を目標にする。1期目のトランプ政権は、日本の防衛費の大幅増を迫った。2期目も同盟国の負担増を求める可能性がある。北大西洋条約機構(NATO)に国防費目標を30年までにGDP比5%に引き上げるよう要求する意向だとの報道も出ている」

日本は、防衛費を対GDP比2%へ引上げる。

(3)「日本周辺の安保環境は、一段と厳しさを増す。中国は、東・南シナ海での威圧を強め、北朝鮮は核・ミサイル開発を加速している。防衛白書をもとに計算すると中国軍は17年に比べ24年までに艦船の総トン数を5割、作戦機数を2割ほど増強した。中国との戦力バランスの変化は米国に中国を抑止するうえで日本が重要だと訴える要素になる。同時に日米協力の深化に加え、日米同盟を軸にした多国間の対処が必要になっているといえる。日米は、バイデン政権下で日米豪印のQuad(クアッド)や日米韓、日米比など、同志国間の格子状の協力体制を強化してきた。21年には、クアッドを閣僚級から首脳級に格上げし、23年8月には日米韓首脳会談の会合の定例化を決めた」

日本は、日米豪印のQuad、日米韓、日米比などの同志国間の格子状の協力体制を強化してきた。トランプ氏に、こういう努力を認識して貰うことだ。

(4)「トランプ氏は、1期目の外交方針から多国間協力より、2国間交渉を重んじる傾向にあるとされる。日本は安保環境の変化を伝えつつ、インド太平洋地域や欧州諸国を含めた枠組みの維持を提起する必要がある。トランプ氏は、日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)に安保面の保障を引き換えに経済的な妥協を求めてくる可能性もある。1期目でも南シナ海で「航行の自由作戦」などを実施するなど中国を抑止しつつ、貿易不均衡の是正を求めてきた」

日米の貿易不均衡は、ほとんど解消した。それどころか、日本企業の研究開発が進んでいることを取り上げるべきだ。特にラピダスが、「2ナノ」半導体で成果を上げていること。NTTの光線融合「IOWN」(アイオン)が、米国の国益に大きく貢献することを説明しておくことだ。米国企業が開発できない問題を、日本企業が解決しているからだ。

(5)「日本の対米直接投資は、23年時点で8000億ドルほどにのぼる。17年と比べ6割弱積み増し、カナダや英国を抜いて金額で首位になった。米商務省によると21年に日本企業は米国で96万人以上の雇用を創出した。外務省のまとめで米国に進出する日本企業数も過去10年間で1000社以上増えた。足元でバイデン大統領が日本製鉄によるUSスチール買収計画を阻止するといった動きが出ている。日本側は日本の投資が米経済にも重要だと訴え、対米投資への日本企業の不安が広がることに懸念を伝えている」

日本企業が、米国でどれだけ貢献しているか詳細に説明すべきだ。日本の雇用は製造業主体で、「質の高い」雇用とされている。

(6)「日本から岩屋毅外相が、20日の大統領就任式に出席する。岩屋氏は17日の記者会見で「防衛力や対米投資の強化といった取り組みを通じた日本の貢献や努力をしっかり説明して理解を得たい」と語った。「日米は法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の中核となるべき2国間関係で、国際社会に大きな責任を有する」と強調した」

岩屋毅外相が訪米する。日米首脳会談への準備をしっかりやってきて貰いたい。