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中国商務省は1月17日、2024年の中国への対内直接投資額(IDI)が、前年比27.1%減の8263億元(1127億5000万ドル)だったと明らかにした。IDIの減少は、中国経済の未来が明るくないとの予測を示している。もはや、「世界の工場」というイメージは消えてきた。世界の企業は、中国市場から「脱出」を始めているのだ。

中国の対内直接投資(IDI)の推移は2020年以降、以下の通りである。
2020年 1兆元
2021年 1兆1339億元(前年比8.0%増)
2022年 1兆2327億元(前年比6.3%増)
2023年 1兆1000億元(前年比10.8%減)
2024年   8263億元(前年比27.1%減)
出所:中国商務省
2022年がピークであった。不動産バブル崩壊よりも1年遅れて起こっている。こういう状況下で、中国経済はどのようにして軌道回復させるのか。

『東洋経済オンライン』(1月14日付)は、「2025年の中国経済、回復の鍵は『構造問題』にあり」と題する記事を掲載した。この記事は、中国『財新』の転載記事である。

中国経済は目下、減速方向への圧力がかかり続けている。この状況を打開するため、2025年のマクロ経済政策はどうあるべきだろうか。「単純な財政刺激を通じて中国経済を立て直すのは困難だ」。野村グループの中国担当首席エコノミストを務める陸挺氏は、同社が開催したメディア向け説明会でそう指摘した。「陸氏によれば、中国経済が抱える問題の本質は(財政刺激の効果が大きい)典型的な需要不足ではない。不動産不況の長期化がもたらした負の連鎖反応や、より複雑化した地政学的な環境変化など、中国経済が直面する構造的問題(への対応策)を同時に考える必要があるという。

(1)「陸氏は、「仮に景気サイクルに伴う周期的な不況なら、ケインズ経済学の理論に従って金利を下げ、財政支出を増やすことで経済を回復軌道に導ける」と前置きしたうえで、目下の中国経済に伝統的な景気刺激策が効きにくい理由を次のように解説した。「中国の不動産セクターは、一時はGDP(国内総生産)の約4分の1を生み出し、(公有地の払い下げを通じて)地方政府の財政収入の4割近くを占め、中国国民の総資産の7割近くに達していた。その大幅な縮小が2021年から長期にわたり続いている。このことは、中国経済が周期的な景気後退ではなく、構造的要因による不況に直面していることを示している」と指摘する」

中国経済が、不動産バブル崩壊の影響下にあるという事実を忘れてはいけない。これが、構造不況を生んでいる要因だ。

(2)「不動産不況の長期化は、1つの問題が新たな問題を呼ぶ負の連鎖を中国経済にもたらしている。中でも深刻なのが、地方政府の土地売却収入の激減が地域経済に与える影響だ。中国財政省のデータによれば、2024年1月から11月までに実施された公有地の払い下げに伴う財政収入は、2021年の同じ期間の半分未満だった。「土地売却収入の減少により、地方政府は(インフラ投資などへの)財政支出の削減を迫られ、総需要の縮小を招いた。さらに、地域経済に対する地方政府の関わり方が(財政支出を通じた)『支え手』から(徴税強化などによる)『収奪の手』に変わり、地域経済の活力を損なっている」(陸氏)」

地方政府は従来、財政支出を通じて経済の「支え手」であった。現在は、財政支出の削減を迫られ、総需要の縮小を招く「収奪の手」に変わった。この変化が大きい。

(3)「陸氏はさらに、アメリカでの第2次トランプ政権の発足が中国の輸出に与えるインパクトを過小評価してはならないと指摘した。中国の対米輸出は、アメリカの政権交代に伴う不確実性の増大に直面している。中国製品に対するアメリカ政府の関税引き上げに対応して、中国企業は生産拠点の(東南アジアやメキシコなどへの)海外移転を進めた。だが、第2次トランプ政権はこうした“迂回輸出”に厳しく対処すると見られる。また、「Temu(テム)」などの越境EC(電子商取引)サイトは、個人宛て小口貨物の関税を免除するアメリカの特例措置を利用して対米輸出を急拡大させた。しかし今後は、特例の見直しや通関手続きの複雑化などの不確実性に直面する可能性が高い」

「トランプ2.0」が、中国の輸出に大きなブレーキになる。越境ECサイトは急伸したが、米国はこの抜け穴を塞ぐであろう。

(4)「陸氏は、次のように警鐘を鳴らしている。「アメリカの政権交代が中国経済に与える影響は、関税の問題だけにとどまらない。アメリカが自国のサプライチェーンから中国を排除する動きを強めることで、海外から中国への直接投資が減少し、中国の科学技術の進歩や産業の発展にも影を落としかねない」。

2024年の中国への対内直接投資額(IDI)が、前年比27.1%減の8263億元となった。現在、中国の科学技術の進歩や産業の発展にも影を落としかねない事態が始まっている。中国が、世界の中心という始皇帝の発想が消えてきたのだ。