米国次期大統領に、トランプ氏が就任する。「不安と期待」を担っての再登板である。トランプ氏は、ロシアのウクライナ侵攻を止めると広言してきただけに、休戦させ平和を実現しなければならない。それには、ロシアのプーチン大統領を説得しなければならないが、前段で中国の習近平国家主席を引きつけなければならない。こういう状況下で、トランプ氏は100日以内に習氏と会談を希望しているという。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月19日付け)は、「トランプ氏、就任後100日以内に訪中の意向=関係筋」と題する記事を掲載した。
ドナルド・トランプ次期大統領は、就任後に中国を訪問したいとの意向を側近らに伝えている。事情に詳しい関係者が明らかにした。同氏が中国製品への追加関税を警告していることで米中の緊張が高まる中、習近平国家主席との関係を強化する狙いがある。
(1)「トランプ氏は2017年、1期目の就任から約1年後に北京を訪問している。側近らによると、再訪問はまだ決定されたわけではない。関係者の一人によると、トランプ氏は就任後100日以内の訪中に関心を示している。トランプ氏の政権移行チームはコメントの要請に応じなかった。トランプ氏と習氏は17日、昨年11月の大統領選後初めて電話会談を行い、貿易や合成オピオイドのフェンタニル、TikTok(ティックトック)などについて協議した。「われわれが多くの問題を一緒に解決することに期待している。すぐにも始めたい」。トランプ氏は会談後、ソーシャルメディアにこう投稿した」
トランプ氏は17日、習氏と電話会談を行った。トランプ氏側からかけた電話という。地ならしをしたのであろう。
(2)「中国政府の意思決定に近い関係者によると、トランプ氏と習氏はそれぞれの担当者を通じ、直接会談についての協議を進めており、選択肢の一つしてトランプ氏が習氏を米国に招くことが挙がっているという。トランプ氏が17日に習氏と電話会談した際、訪中のことに言及したかどうかは不明だ。トランプ氏は20日の大統領就任式に習氏を招待していたが、中国側は韓正国家副主席を派遣する予定にしている」
米中首脳会談の場所は、中国か米国か決まっていない。トランプ氏が訪中する可能性もあるのだろう。
(3)「中国で経済的圧力が高まる中、同国政府はトランプ氏が公約に掲げる関税引き上げを回避するか、少なくとも引き上げ幅縮小に向けた交渉を行うことに強い関心を持っている。中国の意思決定に近い関係者によると、首脳会談が実現すれば、このプロセスを勢いづける可能性がある。トランプ氏は中国からの輸入品に最大60%の関税を課すと主張していた。中国側は17日の電話会談の内容について、戦略的な対話チャンネルの確立で両氏が合意したと発表。中国側の説明によると、トランプ氏は習氏に対し「できる限り早期に会えることを楽しみにしている」と伝えたという」
トランプ氏が、掲げた中国への最大60%の関税は「ディール」(取引)の条件を示し、最悪ならばここまで引上げると「脅し」をかけているもの。中国から譲歩を引出す戦術である。
(4)「トランプ氏の1期目の2017年11月に訪中が実現したのは、同氏のフロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」で習氏と初の対面会談に臨んだ数カ月後だった。トランプ氏は側近らにインドを訪問する可能性も語っていると、同氏に近い関係者が明かした。トランプ氏は就任当初は国内政策に注力し、厳格な国境警備に向けた新たな措置や、移民の強制送還の加速などに取り組むとみられる。同氏の計画を知る関係者によると、最初の週に全米各地に足を運び、署名予定のエネルギー問題などの大統領令についてアピールするつもりだという。また山火事で大きな被害を受けたロサンゼルスを週内に見て回ることも予定している」
トランプ氏は当面、国内対策に全力を挙げる。不法移民の送還問題が控えている。
(5)「北京で首脳会談が行われれば、世界の大国間の関係がまさに緊迫しているさなかとなる。トランプ氏は中国製品への追加関税だけでなく、メキシコの麻薬組織にフェンタニルの原料を供給する中国化学メーカーの取り締まりも中国に迫っている。もう一つ火種になり得るのは台湾だ。中国は台湾を自国の領土だと主張し、武力行使も辞さない立場を取っている。トランプ氏は台湾指導者に防衛費の大幅増額を求める他には、台湾との微妙な関係をどう扱うかについて多くを語っていない。17日の電話会談では、習氏がトランプ氏に台湾問題を「慎重に」扱うべきだと念を押し、国家主権と領土保全に関わる問題だと指摘した、と中国国営メディアは伝えた」
トランプ氏は、台湾問題について発言を控えている。ウクライナ問題解決を前に、中国の協力を引出すためにあえて沈黙しているのであろう。
(6)「トランプ氏は、ウクライナでの戦争を終結させるため、習氏をパートナーと考える可能性がある。中国はロシアに支援を提供し、米議員らの怒りを買っている。トランプ氏は17日の電話会談に関するソーシャルメディアへの投稿で、この紛争に触れることなく、「習主席と私は世界をより平和で安全な場所にするためにできることは何でもする」と述べた」
トランプ氏は、ウクライナ問題を解決して「ノーベル平和賞」を目指しているという。それだけ、外交努力を払うという意味だ。
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