テイカカズラ
   

中国経済は、かつて日本経済が歩んできた「ケチ・ケチ・ムード」が若者世代に広がっている。消費よりも貯蓄をと節約に励んでいるのだ。日本では今、若者が率先して消費に励んでいる。海外旅行にも積極的である。日中が入れ替わった感じである。それぞれの国が示唆する将来展望が、若者の消費高度に反映している。

『ロイター』(1月26日付)は、「節約志向強める中国Z世代、経済成長にリスク」と題する記事を掲載した。

中国では、新型コロナ禍に始まり不動産危機によって深まった倹約志向が一段と強まっている。Z世代が政府の消費奨励策に背を向け、ますます貯蓄を増やしているのだ。中国版インスタグラムの「小紅書」では、30歳未満の多くの若者がオフィスでのランチ代や買い物代を節約する方法について意見交換をしている。

(1)「インフルエンサーも、倹約をライフスタイルに取り入れるためのヒントを共有している。節約術に関する投稿は150万件を超え、閲覧数は1億3000万回を突破した。「経済状況はかなり悪いと感じている。お金を稼ぐのはだれにとっても難しそうだから自分の財布は自分で守ることが重要だと思う」と語るのは、6カ月前に大学を卒業して電子商取引(EC)大手アリババに入社し、比較的高給を得ているアバ・スーさん(26)だ。インターネット業界を「不安定」だと考えるスーさんは衝動買いを控え、月給の100倍に当たる200万元(4260万円)を貯金する長期計画を立てていると語った」

中国は、「稼ぐよりも節約」という消極的な時代に入っている。消費不振が不可避である。

(2)「一部のエコノミストは、貯蓄傾向が根を張れば需要を空洞化させかねないと警告している。折しも政策当局は、国内総生産(GDP)の押し上げを国内消費に頼ろうとしているところだ。根強い悲観論は既に、自動車からタピオカミルクティーに至るまで消費者物価の下落を招いており、中国の長期的な潜在成長力にも打撃を及ぼすだろう。この状況は、いわゆる「月光族」世代の浪費的な態度とは対照的だ。月光族とは1980年代から90年代生まれの世代を指す。米ジョンズ・ホプキンス大学の政治経済学教授、ホーフン・フン氏によると、この世代は雇用機会の拡大、所得の増加、生活水準の向上しか経験せずに育っており、月給をその月に使い切ってしまうことで知られている」

根強い悲観論は既に、消費者物価の下落を招いている。中国の長期的な潜在成長力にも打撃を及ぼしているのだ。中国の個人消費は、対GDP比で37.01%(2022年)だ。この低い個人消費がさらにシュリンクしている。

(3)「新型コロナウイルスや景気後退、政府によるハイテク企業など民間セクターへの締め付けを経て、今日の若者は最悪の事態に備える必要があると実感していると、フン氏は語る。「楽観主義が失われるのは、1978年に改革解放政策が開始してから初めてのことだ」という。悲観論が広がる中、多くの若者は政府機関や国有企業などで「鉄飯碗(安定した雇用)」の仕事を求めている。スーさんは将来、公務員試験を受けるつもりだと語った」

中国社会から楽観主義が失われるのは、1978年に改革解放政策以来である。これが、不動産バブル崩壊後遺症というものだ。

(4)「16歳から24歳までの約1億人の失業率は過去2年間、高止まりしている。2023年6月には若年層の失業率が21.3%と過去最高を記録。これを受けて当局はデータの公表を停止して算出方法の「再評価」に乗り出し、調整を経て発表された昨年12月の同失業率は15.7%だった。深セン市在住の高校英語教師、リリー・リーさん(26)は、9月に現在の職に就いたばかりだが、1万元を超える月給の80%を貯金し、洋服やコンサートチケットなど不要不急の支出を大幅に減らしている」

若者が、多く失業している。中国経済の矛盾が凝縮されているのだ。これでは、「社会主義の勝利」とはほど遠い。

(5)「彼女は会社勤務を希望していたが、安定性を求めて学校の教師になった。2、3年後には別の仕事を探そうと考えているが、見つかるかどうかは分からないと語る。人生を最大限に楽しむというミレニアル世代の哲学とは異なり、中国のZ世代は「実存的不安」を抱えており、その不安は同国の経済停滞とともに深まるばかりだ」

実存的不安とは、人間の存在そのものに関する究極の不安である。「死が不可避である」ことに対する不安、「自分の人生には意味がない」という不安、「人間は所詮一人である」という根本的な孤独感などをさす。こういう「究極の不安」が、無差別殺人などを引き起している背景にある。中国社会は、完全に行き詰まっている。