ドイツ産業連盟(BDI)は28日、ドイツは深刻な経済危機に見舞われていると指摘し、2025年のGDP成長率がマイナス0.1%との見通しを示した。ドイツ統一後初めて、3年連続のマイナス成長となる。
ドイツ企業の景気見通しは、1月に一段と悪化した。来月の選挙を控え、同国の速やかな成長回帰はさらに疑問視される格好となった。Ifo研究所が27日に発表した1月の期待指数は84.2と、前月の84.4から低下した。
『ロイター』(1月28日付)、「ドイツは深刻な経済危機、25年GDPはマイナス0.1%へー産業連盟」と題する記事を掲載した。
ドイツ産業連盟(BDI)のペーター・ライビンガー会長は、ベルリンで「状況は非常に深刻。特に産業の成長は構造的な打撃を被っている」と指摘。危機は、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻が影響しただけではないと語った。
(1)「原因は国内要因であり、政府が取り組めなかった18年以来の構造的弱さの結果だと述べた。「近代的なインフラや経済の転換と耐性への公共投資が早急に必要」とし、官僚主義の是正、エネルギー価格の引き下げ、ドイツの技術革新と研究を強化するための明確な戦略も求めた。同会長はドイツが再び自信を持って欧州連合(EU)で指導的役割を担い、欧州がより戦略的に自立することが重要だと主張した」
ドイツ経済は、25年もマイナス成長のリスクを抱えている。原因は、国内要因としている。財政赤字制約が大きく響いており、インフラ投資が遅れている。問題は、基本法(憲法)の財政制限条項にある。これが、ドイツ経済の立ち直りを遅らせている。
(2)「トランプ米大統領の返り咲きと関税警告の影響で、25年のGDPが予想の0.1%減ではなく約0.5%減に下振れするリスクがあるとの認識も示した。「最も重要なことは、取引関係を構築し、われわれにしか提供できない戦略的に重要な能力を確立することだ」と述べた」
25年は、トランプ関税で引上げられればマイナス0.5%成長に落込むリスクもある。ドイツ独自の製品をつくり出すことが経済立直しの基本としている。
『日本経済新聞 電子版』(1月15日付)は、「ドイツ経済、2年連続マイナス成長に 中ロ依存が裏目」と題する記事を掲載した。
欧州最大の経済大国ドイツが景気低迷から脱せない。連邦統計庁が15日発表した2024年の実質GDPは暫定値で前年比0.2%減だった。マイナス成長は2年連続だ。ロシアの資源や中国市場への依存が構造不況を招き、2月の総選挙では経済政策が最大の争点になる。
(3)「マイナス成長はドイツ政府や独連邦銀行(中央銀行)も予測していた。連邦統計庁は「循環的かつ構造的な圧力が経済成長を妨げた」と指摘した。2年連続は景気低迷から「欧州の病人」と呼ばれていた02〜03年以来で、これまで東西ドイツの統一後では1度しかなかった。ドイツ経済はフランスやイタリアなどユーロ圏20カ国GDP全体のおよそ3割を占める。2%台後半の成長が見込まれる米国や1%程度のフランスなどと対照的に、景気回復の遅れが一段と鮮明になった」
2年連続のマイナス成長は、統一ドイツ後では一度しかない。25年もマイナス成長であれば、ワースト記録を塗り替える。
(4)「最大の理由は、ロシアによるウクライナ侵略だ。安価なロシア産ガスの途絶が製造業を直撃し、生産が落ち込んでいる。主な貿易相手国である中国も内需が振るわない。主力の機械や自動車を中心に24年の輸出は0.8%減となった。インフレ鈍化で回復するはずの個人消費も鈍い。家計の最終消費支出は0.3%増にとどまった。年末のクリスマス商戦も、物価高を考慮した実質売上高は前年比でゼロ%程度の横ばいとみられている。景気不安から節約志向が強まり、家計の貯蓄率はコロナ禍前の水準を超えてきた。欧州中央銀行(ECB)は24年6月から利下げを始めたものの政策金利は3%台と歴史的に高く、賃上げが進んだ分のお金は消費ではなく銀行預金にとどまりやすくなった」
ドイツ経済の落込みは、中ロ依存度の高さが裏目に出たことだ。安価なロシア産ガスの途絶と中国への輸出不振である。かつての好景気を支えた要因が、すべてマイナスになったのだ。消費者の節約意識が強く、貯蓄に励んでいる。
(5)「ドイツ産業界からは悲鳴が上がる。基幹産業である自動車の業績が悪化し、フォルクスワーゲン(VW)やボッシュは工場の稼働停止や大規模なリストラの検討に追い込まれた。ウクライナ危機のエネルギー不安は景気不安に変わり、倒産件数も増加基調にある。自動車だけではない。独化学工業会によると、同じく基幹産業の化学・製薬は24年の年間売上高が2%減った。「電気コストが国際的に高すぎで負担軽減に向けた法人税改革も必要だ」(同工業会)と訴える」。かつて2年連続のマイナス成長になった02〜03年と比べ、足元は低い失業率と景況感の冷え込みが特徴だ。高齢化に伴う労働力不足が深刻で、皮肉にも低い失業率がドイツ経済の供給力の限界を映し出す」
高齢化に伴う労働力不足が、低い失業率と供給力の限界を映し出している。ドイツ経済は、人口高齢化で潜在成長率が1%へ落ちている。それでも、日本より高い潜在成長率である。ドイツは、政策ミスが明らかだ。
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