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最先端半導体の国産化を目指すラピダスは、国内の無理解によって「いずれ倒産してTSMCへ吸収される」というデマで飛び交っている。日本の技術開発力を全く信用しない「暴論」と言うほかない。最近の特色である「非公式情報」が、あたかも信頼度100%の威力を持って通用しているから驚くのだ。最近は、農業専門家までが「参戦」しており、ラピダスがTSMCに買収されるのが「オチ」としているから驚く。

こういう俗説・珍説をよそに、半導体人材養成は着実に進んでいる。ラピダス進出先の北海道大学は、政府支援で半導体ラボを設置する。実際の製造装置を使った半導体教育を行うもの。国策事業である半導体育成は、雑音をよそに確実に進んでいる。

『日本経済新聞 電子版』(1月28日付)は、「北大に半導体製造の試作ラボ、国が採択 人材育成拠点」と題する記事を掲載した。

北海道や札幌市などは1月28日、内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金」の対象事業に採択されたと発表した。千歳市や北海道大学、公立千歳科学技術大学とも連携し、半導体の製造や研究、人材育成を一体的に手掛ける複合拠点の形成を目指す。



(1)「北大内に、半導体の一連の製造工程を再現して試作する「半導体プロトタイピングラボ」を新設する。専用のスペースに機材などを順次導入し、2027年度をめどに本格的な体制を整える。ラボを使った実習プログラムもつくり、道内の他大学や高等専門学校(高専)にも提供することを想定している」

日本政府が、半導体人材教育支援体制を組むのは、2030年までに半導体育成で10兆円を投入する一環である。半導体が、日本産業の強化の上で大きな柱になることを見込んでいるからだ。これまで北海道は、半導体ビジネスと無縁の地域であっただけに、人材育成の種まきを行う。

(2)「北大は学内の半導体リソースを一元化し、半導体教育研究の司令塔となる「半導体フロンティア教育研究機構」を25年4月に開設予定だ。同機構を中心に大学院まで一貫して半導体を学べる体制を構築する計画で、今回の交付金も活用する。千歳科技大とも連携し、千歳市に進出した最先端半導体の量産を目指すラピダスを含めた関連企業との共同研究にもつなげる」

北大が、半導体技術教育のセンターになればその波及効果は大きい。クラーク博士の「少年よ、大志を抱け」(1877年)から147年で、北海道に最先端技術の種が蒔かれる。


(3)「同交付金は地方創生のため、魅力的な地域産業や雇用を創出することなどを狙いとした事業にあてる。事業開始から5年間、国から事業費の一部として年間5000万〜7億円を目安に補助を受ける。道などの事業は25年度から29年度までが補助の対象。詳細な支援額は当該自治体の予算編成の進捗によって決まる」

北海道には、高専4校が設立されている。半導体教育の底辺を担う優位な人材が育てられる。このように、人材供給のきめ細かい計画が作られているが、ラピダスを軌道に乗せるには4つの要素が必要である。

技術・人材・資金・需要である。「ラピダス否定派」は、これまですべてを「不可能」としてきた。だが、現実は次々と難問が解決されている。
1)技術:25年4月から「2ナノ」半導体の試作が始まる。実は、すでにラピダス千歳工場隣接設備を利用し、試作準備過程が始まっている。
2)人材:北大中心に準備が始まる。
3)資金:政府が全面的責任を果すことを公表している。
4)需要:試作品をユーザーへ提供されてから具体化する。現在、すでに40社と交渉中とされる。


『日本経済新聞 電子版』(1月30日付)は、「中国AIと開発競争、ASMLのCEO『勝者はまだ見えず』」と題する記事を掲載した。

オランダの半導体製造装置大手、ASMLホールディングのクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は29日、日本経済新聞の取材にも応じた。フーケ氏は、日本市場への期待を口にしながらも、復活には「早期の顧客獲得が課題になる」との見解を述べた。

(4)「24年にCEOへ就任したフーケ氏は、ラピダスのEUV露光装置の導入を「重要なマイルストーン」とした。さらに長い半導体産業の歴史や、多くの技術者がいる点を強みとして挙げ、「日本には(成長の)機会がある」と話した」

ASMLは、ラピダスが独自の製造技術を確立していることを認識している。これは、重要な点だ。世間のラピダス否定派は、これすら認めようとしていない。

(5)「フーケ氏は、ラピダスが量産を目指す最先端のロジック半導体は、「先行企業に追いつくための困難が非常に大きい」と現時点での見方を語った。ラピダスが成功する上では厳しい競争の中でも他社に打ち勝ち、早期に顧客を確保することが必要になるとの認識を示した。実際に、「今の段階では日本に研究開発(R&D)拠点などを設ける計画はない」とも明かすなど、日本での一層の体制強化はラピダスが率いる復活の行方次第だという」

ラピダスは、すでにTSMCより進んだ技術体系を確立している。ラピダス半導体は、TSMCと分野の異なるAI半導体(CPUとアクセラレータを結合)製品分野を追求している。ラピダスは、TSMCと製造技術も需要先も異なる。ラピダスは、TSMCを上回る技術体系を確立したのだ。5月には、ラピダスの製品納入先が明らかになる。大泉一貫宮城大学名誉教授は、「ラピダスのTSMC売却もあり得る」と悲観論を言い立てている。専門分野の異なる農業専門家・大泉氏の見立ては、外れるであろう。