中国商務省は2日、米国の追加関税に世界貿易機関(WTO)を通じて異議を申し立てると発表した。商務省は声明で、米国の関税措置は「WTOのルールに著しく違反している」と非難。同時に、率直な対話と理解を呼びかけ、協議の余地を残した。中国政府は「対抗措置」を取るとも述べたが、詳細には踏み込まなかった。中国側の今回の反応は、第1次トランプ政権時の米中貿易紛争で見られたような即時の緊張激化には至らず、中国がここ数週間に用いてきた比較的慎重な表現を繰り返すにとどまった。
『毎日新聞 電子版』(2月2日付)は、「トランプ氏『威圧外交』対応、中国は首脳対話と『多国間協力』模索か」と題する記事を掲載した。
トランプ米大統領が1日、中国、カナダ、メキシコに対する制裁関税発動を決めた。2期目の就任早々、経済力を武器にした「威圧外交」に乗り出した形で、国際情勢のさらなる混乱は避けられない。中国は2日、米国の関税引き上げに猛反発し、世界貿易機関(WTO)への提訴を表明した。ただ自国経済の失速が続く中、報復関税を掛け合う「貿易戦争」の泥沼化は避けたいのが本音でもある。
(1)「米国は、中国にとって最大の輸出相手国だ。対米依存度の高い機械部品やプラスチック、玩具、家具などを中心に関税引き上げの影響を受けるとみられる。中国は2024年の国内総生産(GDP)成長率は5.0%増と政府目標を達成したが、これはトランプ米大統領による関税引き上げを見越して、昨年末に「駆け込み」で米国向けの輸出が増えたことが大きく寄与している」
中国にとって米国は、最大の輸出先である。その大事な「得意先」と、すぐに喧嘩はできないという弱みを抱えている。米国をさらに怒らせたら手がつけられなくなる。こういうリスクを計算に入れるほど、自国経済が弱っているのだ。
(2)「習近平指導部は、25年も「5%前後」の高い成長率目標を掲げるとみられるが、輸出が落ち込めば達成は「極めて難しい状況」(エコノミスト)になり、危機感は強い。中国は「相応の報復措置を取る」(商務省)とアピールするが、貿易戦争は「互いがどこまで損失に耐えられるかという『マイナスの競争』に陥りかねない」(政府系シンクタンク)として避けたい狙いがある」
中国は、「相応の報復措置を取る」と威嚇してみせたが、ポーズに止まっている。喧嘩をすれば損することが分っているからだ。そこで、大人の対応になっている。
(3)「一方で、24年12月に決定した経済運営方針では「より積極的な財政運営」を掲げた。トランプ政権発足により外需が落ち込むことを念頭に、大規模な財政出動で国内経済を支える準備を進めてきた。中国は多国間協力を訴えて各国と接近する動きも見せている。昨年11月の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、積極的な首脳外交を展開して自由貿易の重要性をアピール。日本とも短期ビザの免除再開など関係安定化への動きが加速している。大和総研の斎藤尚登経済調査部長は「米国が中国だけをターゲットに関税をかけてきた場合には中国側も報復せざるを得ない。ただ、トランプ政権が他の国も含めて全方位で関税を引き上げれば、他国と協力する形で米国に対抗していくのではないか」と指摘する」
保護主義の中国が、自由貿易を唱えるというハプニングである。中国は、2月中旬のEUへの関税引き上げ結果をみているのであろう。2月7日の日米首脳会談にも目配りしているはずだ。
(4)「トランプ氏は、中国に強硬姿勢を見せる一方で、「就任後100日以内の訪中」に意欲を示しているとも報じられている。習氏との首脳の対話も通じ、国益を追求していく構えだ。特にロシアのウクライナ侵攻では、停戦協議に向けて中国の協力が欠かせない。バイデン前政権は、中国がロシアの防衛産業を支援していると繰り返し批判し、中国企業などに制裁も課してきた。トランプ氏は中国がロシアに対して、停戦に向けた圧力をかけることに期待している」
中国は、トランプ氏の腹の内を読もうとしている。ウクライナ問題では、米国が中国へ協力を求めると読んでいる。米国は、中国との「取引」で成果が出れば、関税引き上げを考慮する素振りを見せるであろう。
(5)「トランプ氏は、バイデン前政権とは異なり、民主主義や友好国・地域であるかどうかは問わず、露骨に短期的な実利を優先する姿勢がにじむ。トランプ政権の外交・安保の要職には、中国から制裁対象に指定されているルビオ国務長官ら対中強硬派が並ぶ。一方でトランプ氏は「台湾は米国から半導体ビジネスを奪った」などと主張し、台湾は防衛費を支払うべきだと言及したこともある。トランプ氏の「取引重視」の姿勢により、今後の米中関係は見通しづらくなっている」
トランプ氏は、口の赴くままに発言している。相手国を幻惑させる狙いでもあろう。的を絞らせないで、外交成果を上げたいのだ。
コメント
コメントする