中国の不動産バブル崩壊の中で、しぶとく生残り販売シェアを高めているのが国有不動企業である。国有銀行が、優先的に融資するので倒産するはずがないのだ、習近平氏が、不動産業界の整理に動かない理由は、国有不動産企業が生き残れば、問題解決と踏んでいるからだろう。その意味では、習氏の思惑通りに進んでいる。
『ウォールストリートジャーナル』(2月3日付)は、「中国不動産セクター、政府系に回帰」と題する記事を掲載した。
中国の住宅危機は、始まってから3年余りたった今も終息の兆しが見えない。不動産セクターでは国内民間資本の開発業者の苦戦が続く中、政府の存在感が増している。中国の経済発展の象徴だった業界にとって、この逆行は驚くべきものだ。
(1)「直近では、民間開発大手の万科企業も流動性危機に見舞われた。政府の介入でひとまずデフォルト(債務不履行)の危機を免れた。同社は先週、2024年の損益が450億人民元(約9690億円)の赤字になるとの見通しを明らかにした。会長が辞任し、筆頭株主である深圳市地鉄集団の会長が引き継いだ。深圳市地鉄は経済規模が大きい同市の地下鉄を運営する政府系企業で、同社が送り込んだ役員は万科の経営幹部の半数近くを占める。万科のプロジェクト数件を買い取る意向も示している。万科の社債がここ数週間で大幅に下落したことで、深圳市政府が介入に乗り出した。JPモルガンによると、万科は年内に満期を迎える社債を330億元相当抱えている」
民間開発大手の万科企業は、大株主に深圳市が名を連ねているので、「半官半民」形式になっている。これが、万科の倒産を防ぐことになった。
(2)「中国では、好況期に民間の不動産開発業者が都市の景観を一変させ、創業者に巨額の富をもたらした。だが、近年は業者の破綻が日常茶飯事となっている。中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)、融創中国控股(サナック・チャイナ・ホールディングス)などの大手も例外ではない。3社の販売契約額は、最も高水準だった時期にそれぞれ年間5000億元を超えていた」
かつて、民間不動産開発企業で売上高の首位を競った企業は、ことごとく倒産の憂き目にあっている。過大な投資によって、資金繰りがつかないことになった結果だ。国有企業であれば、国有銀行が優先的に支援してくれるので生き延びられた。
(3)「ただ、万科のケースは特殊だ。正式には政府系企業ではないものの、政府と複雑なつながりがある。母体は1984年に設立された政府系の事務機器輸入販売会社だ。後に市場改革の波に乗って国内株式会社の先駆けとなり、1990年代には深圳証券取引所の数少ない上場企業の一つとなった。深圳市地鉄は2017年の入札合戦をへて万科の筆頭株主となった。万科の社債は最近付けた安値から持ち直したものの、完全に政府傘下となるかどうかは依然不透明だ。地方政府は通常、経営難に陥った開発業者の負債を引き受けたがらない。中央政府が気にしているのは、成約前の住宅が完成して引き渡しにこぎつけるかどうかであり、開発業者の全面的な救済ではないようだ」
政府系企業になれば、倒産を免れるというのも不思議なことだ。国有企業は、民営企業を圧迫している。これによって、シェアを高める戦略としている。
(4)「慎重な住宅購入者は、引き渡しを保証してくれる開発業者を選ぶため、安心して契約できるのは政府系企業のみになりつつある。国有開発業者の中国海外発展(チャイナ・オーバーシーズ・ランド・アンド・インベストメント)は、2019年以降の販売減が10%にとどまった。シティによると、開発業者上位100社のうち、政府系企業が占める市場シェアは24年に70%と、19年の32%から拡大。土地購入に占める政府系企業(地方政府の投資会社「融資平台」を含む)の割合は24年に85%と、21年の61%から上昇した」
開発業者上位100社のうち、政府系企業が占める市場シェアは24年に70%。19年の32%から拡大している。土地購入に占める政府系企業の割合は、24年に85%となり、21年の61%から上昇している。中国は、政府系企業が土地関連ビジネスの主役になった。民営企業が、ことごとく後退している。地方政府と国有企業との間で土地売買を行い、「架空の利益」を地方政府の財源にする「粉飾」まがいのケースが増えよう。
(5)「市場のファンダメンタルズ(基礎的条件)は、依然として厳しい。モルガン・スタンレーの試算によると、中国の各都市の住宅在庫を解消するには2年かかる。小規模の都市はより深刻で、売れ残ったマンションを売却するのに2年4カ月かかる見通しだ。中央政府は追加支援を約束しているものの、無責任に債務を過剰に膨らませたとされる開発業者を救済するつもりはなく、支援は小出しにとどまっている。万科の苦境が示すように、どんな大手でもつまずく可能性はある。2025年の中国経済では、政府の後ろ盾が生き残りのカギとなる」
中央政府は、不動産開発企業への追加支援を約束しているものの、支援は小出しにとどまっている。民営不動産開発企業の自然淘汰を待っている形だ。ただ、不良債権は市場に残ったままである。これが、金融正常化のガンになる。
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