あじさいのたまご
   

政府と日本銀行との間で4日、物価の現状認識を巡り、違いのあることが衆院予算委員会で浮き彫りになった。日銀植田総裁は、「インフレ」と発言した。石破首相は、「インフレとは言い切れない」と言葉を濁したもの。日銀は、実質賃金がマイナスである以上、インフレという判断にたっている。政府は、インフレと発言すれば25年ど予算編成に影響することを配慮したのであろう。

『ブルームバーグ』(2月4日付)は、「『デフレ』か『インフレ』か、石破首相と植田総裁の現状認識に齟齬」と題する記事を掲載した。

日本の物価の現状認識を巡り、政府と日本銀行との間に齟齬(そご)があることが4日の衆院予算委員会での答弁で浮き彫りになった。


(1)「立憲民主党の米山隆一氏から現在の日本経済がインフレかデフレかを問われ、植田和男日銀総裁は「現在はデフレでなくインフレの状態にあるという認識に変わりはない」と答弁。これに対し、石破茂首相は「日本経済はデフレの状況にはない。しかしながらデフレは脱却できていない。今をインフレと決めつけることはしない」と説明した」

日銀は、物価の番人である。この役割を放棄したら存在する価値がない。政府は、景気全体の責任を持っている。石破首相が「インフレでもなくデフルレでもない」と曖昧な発言をしているのは、政治のテクニックであろう。

(2)「消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は3年近くにわたり、日銀が目標とする2%以上の水準で推移している。一方、昨年10月に発足した石破政権は、最優先課題に掲げるデフレからの完全脱却に向けて3年間を集中的な取組期間とし、脱却宣言はしていない。日銀がインフレとの現状認識を明確に示している中で、政府の説明には分かりにくさが伴う。大和証券の末広徹チーフエコノミストは、「政府としてはデフレ脱却とここで言うと、ポジティブなことであっても人々がインフレで苦しんでいるところに反感を買いかねない」と指摘。これまで実施してきた財政拡張的な政策の根幹部分も変更せざるを得なくなるとし、「デフレ脱却のところは曖昧にして、あまり触れないでいたいというところだと思う」と語った」

日本経済は、長期的な視点で見れば回復軌道に復している。四半期レベルで判断すべきでない。


(3)「デフレ脱却は、消費者物価や国内総生産(GDP)デフレーターなどの経済指標を基に、物価が持続的に下落する状況に再び戻る見込みがないかを政府が判断して決める。日銀は昨年3月に17年ぶりの利上げなどで大規模緩和から脱却して以来、7月と今年1月にも追加利上げを行った。重視する基調的な物価上昇率は2026年度までの見通し期間後半には物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移するとの見通しを示しており、今後も正常化路線を継続する見通しだ」

日本銀行が追加利上げを決めた1月23、24日の金融政策決定会合では、先行きも経済・物価が日銀の見通しに沿って推移すれば、利上げを続けて大幅なマイナスである実質金利を縮小していく必要があるとの意見が出ている。ある委員は、利上げ後も実質金利は大幅なマイナスだとし、「経済・物価がオントラック(想定通り)であれば、それに応じて引き続き利上げをしていくことで、マイナス幅を縮小していく必要がある」と主張した。また、過度な緩和継続期待の醸成に伴う円安進行や金融の過熱を避ける観点から、金融緩和度合いの調整を行うことも必要だとする声もあった。


市場では、次の利上げのタイミングとペースに関心が集まっている。植田総裁は会見で、緩和的でも引き締め的でもない名目中立金利の水準について、日銀の分析では1~2.5%に分布していると言及した。これは、現在の政策金利0.5%がはるかに低いことを指摘している。つまり、今後の利上げ余地の大きいことを示唆している。

日銀は、1月の利上げ決定後の声明文で次のように指摘している。利上げ後も実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的環境は維持されると指摘。今後の政策運営は経済・物価・金融情勢次第としながらも、実質金利が極めて低水準にあることを踏まえ、新たに示した経済・物価見通しが実現すれば、利上げで緩和度合いを調整していく方針を維持した。

日本経済は、確実に新たなステージへ進んでいる。この現実を認識しておくべきで、相変わらずの「自虐的」日本経済論を振りかざしていると取残されるだろう。