テイカカズラ
   

韓国検察は、19の罪名でサムスン電子会長李在鎔(イ・ジェヨン)氏を起訴していたが、一・二審で無罪判決が出た。この間、10年にわたる司法リスクによって、本人はもちろんサムスン自体も大きな損害を被った。韓国検察による「思い込み」捜査の欠陥が、100%露呈された形だ。

『朝鮮日報』(2月4日付)は、「控訴審でも19の容疑全て無罪 サムスン会長を10年苦しめて国は何を得たのか」と題する社説を掲載した。

会計不正などの容疑で起訴されたサムスングループの李在鎔会長が一審に続き二審の控訴審でも無罪が宣告された。李在鎔会長は「経営権承継目的の株価操作(2015年)」や「不正会計への関与」など19の容疑で20年に起訴された。昨年2月の一審では19の容疑全てで無罪が宣告されたため、検察は控訴審で新たな証拠を提出するなど訴状を修正した。しかし二審でも一審と同じく無罪が宣告された。


(1)「この事案は、参与連帯などが最初に問題とし、検察はその主張に基づいて起訴したが、これは最初から無理な事案だった。当時の検事総長が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領で、捜査と起訴で中心的な役割を果たしたソウル中央地検経済犯罪刑事部の部長検事は李卜鉉(イ・ボクヒョン)現金融監督院長だった。二人は、罪状でなく特定の人物を標的とするいわゆる「韓国式特殊捜査」の手口で李在鎔会長の捜査を進めた」

韓国検察制度は、日本の検察制度を導入した。日本と同じで、捜査権と起訴権の両方を持つ。だが、韓国検察の未熟さが目立つのだ。権力を振りかざして、事件性のないものまで起訴して、自己満足する有様である。まさに、権力の濫用である。

(2)「2020年6月に外部の専門家で構成された検察捜査審議会は、「犯罪容疑は成立しない」として李在鎔会長の不起訴と捜査の中止を勧告したが、検察は起訴に踏み切った。一人の人物が一度に19の罪を犯したという主張も常識外れだ。最終的にこの無理な起訴は強行されたが、その結果は19の容疑全てが無罪だった。しかし検察から謝罪の言葉は一切発表されていない」

検察捜査審議会は2020年6月、李在鎔会長の不起訴と捜査の中止を勧告した。だが、検察はこれを受入れず暴走した。その責任者が、当時の検事総長の尹錫悦(現大統領)だ。


(3)「第4次産業革命やAI(人工知能)革命が現実となり、世界の超一流企業による激しい競争が続く世界的にも非常に重要な今の激変の時代に、韓国を代表するサムスングループとその総帥の李在鎔会長は10年近くにわたり司法リスクに苦しんだ。2017年の崔順実(チェ・スンシル)国政壟断(ろうだん、利益を独占すること)事件に関与したとして起訴された李在鎔会長は、懲役2年6カ月の実刑が宣告され、21年8月に赦免で仮釈放されるまで合計560日にわたり刑務所に服役した。国政壟断についても「大統領に『黙視的請託』を行った」という理解し難い理由だった。この抽象的な容疑で、大韓民国国民を刑務所に収監したのだ。この捜査もやはり当時の尹錫悦特別検事捜査チーム長と韓東勲(ハン・ドンフン)検事が行っていた」

李在鎔氏は、国政壟断事件でも「大統領に『黙視的請託』を行った」という理由付で起訴された。請託事件は、証拠が揃わない限り起訴できないという範疇の事件だ。李氏の場合は、証拠がないにもかかわらず推測で、「請託したのであろう」ということで有罪判決が出た。検察も裁判所も、証拠なしで「請託」罪を成立させたのだ。世論の風向きに従った悪例である。韓国司法の「世論支配」が、ここにもみられた。正義を踏みにじった例だ。

(4)「この捜査は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権による積弊清算の一環として強行されたが、文在寅前政権は李在鎔会長を2018年の訪朝に同行させるなど、自らのショーにも利用した。赦免後も李在鎔会長はサムスンバイオロジクス事件の被告として100回以上も裁判に出頭した。海外の事業現場を視察した時間よりも法定に立った時間の方が長かったという」

文在寅前大統領は、反日・反企業のチャンピオンであった。李在鎔氏は、このやり玉に挙げられた犠牲者である。


(5)「この10年で、「サムスン危機説」も現実となった。司法リスクに苦しむ間に、将来に向けた果敢な投資や成長エンジン確保に向けた買収・合併で実現したものはない。台湾のTSMCなどライバル企業は飛躍を続けているが、サムスンはSKハイニックスにも追い越されてしまった。2021年前半に500兆ウォン(現在のレートで約53兆円)だった時価総額は現在、300兆ウォン(約32兆円)へ落ち込んだ。ここ10年で、サムスンと李在鎔会長を苦しめて国は何を得たのか」

時の政権と検察は、示し合わせてサムスン虐めに狂奔した。その結果が、サムスンの業績不振に跳ね返っている。政治・司法が、経済へ介入した事例である。韓国は、自業自得になった。