世界的コンサルタント企業のマッキンゼーは、これまで中国とのつながりが深く、ビジネスで実績を上げてきた。それが今、米中対立によって逆風になっている。米政界は、マッキンゼーが中国の産業面での野望を支援しているとまで指摘するほどエスカレートしている。こうした事態を受けて、マッキンゼー社内では、中国事業の将来性に疑問を持つ幹部が増えている。
マッキンゼーは、中国のビジネスが年間約4億8000万ドル(約730億円)である。収益全体では約10%にあたる。このようにウエイトは低いが、米政界から批判されている。理由は、マッキンゼーが中国政府関連の顧客と取引している点にある。
『ブルームバーグ』(2月6日付)は、「マッキンゼー、中国事業の意義を疑問視する幹部相次ぐ-リスクを考慮」と題する記事を掲載した。
米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの社内で、中国で事業を展開する意義を疑問視する声がパートナーから出ている。ますます不安定な米中関係を踏まえ、中国でのビジネスがリスクに見合わないのではないかと懸念されている。
(1)「事情に詳しい複数の関係者によると、一部のシニアパートナーは昨年終盤、中国に対する圧力強化を掲げるトランプ大統領が選挙戦を制する前からこうした不安を口にしていた。関係者の一部によれば、収益性の高い北米事業は中国事業縮小の影響を補うことが可能とパートナーらはみている。一方、不採算の中国事業縮小を求める動きは、グローバル・マネジング・パートナーのボブ・スターンフェルズ氏の立場と異なる。同氏は、65カ国の約130都市にオフィスを構える国際的な事業基盤を維持する必要性を主張する」
マッキンゼー社内では、中国ビジネス縮小を主張する幹部の一方で、継続を主張する幹部もいる。中国が、世界主要都市の一角であるという理由だ。
(2)「スターンフェルズ氏は、昨年終盤の社員宛て文書で「グローバルであることは一つの選択だ」とした上で、「それはますます難しい選択になっている。これが難しいことと、今後ますます難しくなる可能性は承知している」と指摘した。この文書はブルームバーグ・ニュースが確認した。この文書は、中国を巡る社内の懸念に対応したものでないが、こうした議論は、米中両国の政治的対立に巻き込まれた多くの有名多国籍企業が直面するジレンマを浮き彫りにしている」
マッキンゼーの直面する悩みは、他の米国有力企業にも共通した悩みである。中国ビジネスを縮小すべきかどうか、である。
(3)「コンピューター用半導体から自動車まで、あらゆる分野における覇権争いと新たな関税で、中国で事業を展開する米国企業への逆風は強まっている。トランプ大統領は1期目に中国を積極的に標的にした。今週には10%の追加関税を発動し、中国は対抗措置を表明した。ルビオ国務長官は、中国政府に対する嫌悪感をあらわにしており、経済および軍事面で一段の対中強硬措置を求めている」
コンピューター用半導体から自動車まで、中国で事業を展開する米国企業への逆風が強まっている。日本では、全く起こっていない現象だが、米国は中国を「不倶戴天の敵」として扱い始めている結果だ。
(4)「マッキンゼーは、中国とのつながりに関し、政界から批判を浴びてきた。中でもホーリー上院議員(共和)は、中国の産業面の野望を同社が支援していると指摘。マッキンゼーのような企業が、米中両国政府に同時に助言しているのではと懸念を示す米議員もこれまでいた。スターンフェルズ氏は、昨年2月の米議会委員会で、マッキンゼーは幾つかの中国国有企業と仕事に取り組んだことがあるが、自身が知る限り中国共産党や中央政府との間ではそれはないと証言している」
マッキンゼーが、中国国内で政府系顧客をもっていることが、疑いの目で見られる理由である。中国が、マッキンゼーから米国の機密情報を得ているのでないかという「疑惑」二結びついている。マッキンゼーは、これを否定している。
(5)「関係者によると、社内では、中国事業が地政学的なリスクに値するか、まして米事業を危うくする場合はどうなのかと疑問視するパートナーがいる。同社は、売上高の約半分を北米事業が占め、政府や大手企業と緊密に連携。米軍に関連するコンサルティング業務では2008年以降、少なくとも4億8千万ドル(約730億円)を確保している」
マッキンゼーは、2008年以降に米軍と関連するコンサルティング業務で、少なくとも4億8千万ドルを受注している。こういう現実をみれば、中国政府がマッキンゼーを接待する理由があきらかだ。『ニューヨーク・タイムズ』によると、マッキンゼーのコンサルタントたちが中国政府から接待を受けていたことが明らかになっている。米国議会が神経を尖らせるのも当然であろう。
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