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昨年8月以来、カナダのクシュタールによるセブン&アイHDへの買収提案に対して、日本政府は2閣僚が外資法の規定である社会インフラを理由に否定する姿勢をみせた。これで、日本人に身近はセブン&イレブンが外資の手に渡ることはなくなった。後は、創業家などが主導する経営陣が参加する買収(MBO)の成立を待つだけだ。

『ブルームバーグ』(2月4日付)は、「セブンへの買収提案、社会インフラ機能への影響を注視-武藤経産相」と題する記事を掲載した。

武藤容治経産相は4日の閣議後会見で、セブン&アイ・ホールディングスへの買収提案を巡り、「社会インフラ機能への影響という観点から注視をしている」と述べた。

(1)「武藤氏は、地域の流通や災害時の拠点、行政サービスの窓口など、コンビニエンスストアが「社会インフラとして重要な役割を担っている」と説明。また外国企業から対内直接投資に関する事前届け出があった場合には、外為法に基づき適切に対処していきたいとした。セブンを巡っては、カナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けているほか、創業家などが主導する経営陣が参加する買収(MBO)計画も浮上している」

クシュタールは、日本のコンビニが金融機能や役所への届け窓口という社会インフラになっており、これが外資による買収の障害であることを把握せずにいた。こういう事実を調査せずに、セブン&イレブンへ買収提案したのは、何ともお粗末な話である。


『読売新聞』(1月31日付け)は、「セブン&アイ買収提案で政府がリスクや対策を検討『コンビニは重要インフラ」…城内経済安保相』と題する記事を掲載した。

城内経済安全保障相は31日の衆院予算委員会で、セブン&アイ・ホールディングスに対するカナダのコンビニ大手の買収提案を巡り、関係省庁とリスクや対策を検討する考えを示した。

(2)「城内氏は、「コンビニエンスストアは国民の生活になくてはならない存在となっている。経済安全保障推進法の基幹インフラ役務には入っていないが、特に地方では欠かせない、広い意味での重要なインフラであることは間違いない」と語った。また、「コンビニ事業者が提供するサービスに含まれる個人情報や、流通・小売事業者が有する顧客情報等の流出は経済安全保障上のリスクとなりうると認識している」と指摘した」

コンビニが、個人情報や、流通・小売事業者が有する顧客情報等を扱っていることから、外資による合併は経済安全保障上のリスクになるとしている。こうして、クシュタールの合併案は不可能になった。一方、石破首相は予算委員会で「経済安全保障の確保の観点から、どのような形ができるかということを、海外の事例を参考にしながら万全を期していかねばならない。急を要する課題であることはよく認識している」と述べた。


『ブルームバーグ』(2月6日付)は、「セブンMBO案、シティグループやBofAらに投融資打診ー関係者」と題する記事を掲載した。

セブン&アイ・ホールディングスの買収を検討している同社創業家陣営が、米銀大手のシティグループとバンク・オブ・アメリカ(BofA)に融資を、タイの財閥グループに出資をそれぞれ打診していることが6日、分かった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

(3)「タイ財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループ傘下で同国などでセブン-イレブンを運営するCPオールにも約5000億円規模の出資を求めるが、出資総額は4兆円のままの見込みだ。銀行からの借り入れとして5兆円程度見込んでおり、邦銀に加えてシティとBofAに融資を打診。北米でコンビニエンスストア事業を手掛けるセブンーイレブン・インク(SEI)の既存の借入金の借り換えを両行が引き受ける方向で調整を進めているという。CPオールを呼び込み出資部分の厚みが増すと同時に、米銀の参加で邦銀一行当たり融資額を抑える狙いがある。

MBO案は、タイ財閥も出資する大掛かりなものになってきた。出資社を増やすことで1社当たりの出資金額を低めにする目的だ。総額9兆円の調達で、MBOを実現させる。


(4)「創業家は伊藤忠商事と連合を組んで買収主体となる特別目的子会社を設立。創業家が約5000億円、伊藤忠が1兆円超の普通株で出資し、米系投資会社のアポロ・グローバル・マネジメントやKKRなどが合わせて1兆5000億円相当の優先株を拠出する方向で調整してきた。三井住友銀行や三菱UFJ銀行、みずほ銀行など邦銀大手がそれぞれ1兆円規模の融資を検討中だ」

伊藤忠は、1兆円超の普通株で出資することで、総合商社として日本のコンビニを牛耳る戦略である。伊藤忠は、「利益が小売の末端にある」という信念で、流通業への進出を拡大させている。