ロシアとの交渉急ぐ米国
膨大ウクライナ鉱物資源
強かなトランプ戦略構想
中国は本音を見破られた
今年2月で、ウクライナ戦争は満3年を迎えた。岸田前首相は、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と内外で機会のあるたびに発言してきた。この岸田氏によって繰り返される「警告フレーズ」が、ウクライナ戦争後は中国の台湾侵攻というイメージを定着させた。この西側諸国における共通認識が、米国トランプ大統領の世界戦略へ大きな影響を与えたとみられる。
ウクライナ戦争は、米国が欧州防衛から手を引いて、アジア防衛に立ち向かわなければならないという、切羽詰まった認識を強化させたとみられる。米政権が、判で押したように欧州批判を繰返している背景には、安全保障での「欧州一人立ち」を狙っているとみられる。米国は、欧州防衛から少しづつ手を引き、対中国戦略へ没頭したいという願望が滲み出ている。
EU(欧州連合)は、こうした米国の意図を感じ取っている。欧州委員会(行政執行機関)は3月4日、欧州の防衛力強化に向けた総額8000億ユーロ(約1264兆円)規模の防衛計画を提案した。1500億ユーロを共同で借り入れ、EU各国政府に防衛資金として貸し付けることなどを盛り込んだ。EUが、かつてない「独立防衛」への姿勢を強めている。
ロシアとの交渉急ぐ米国
米国トランプ大統領は2期目が始まって早速、ロシアのプーチン大統領とウクライナ戦争停戦に向けて、米ロで和平交渉を始めた。問題は、侵略されたウクライナがこの和平交渉に出席していないことだ。被害国を除外して、仲介国と加害国が和平交渉するとは、世にも不思議な事態である。米国の言い分は、米国がウクライナ軍へ主要武器弾薬を供給して継戦状態が続いている以上、米国こそが当事国という認識であろう。しかし、前線で戦って血を流しているのはウクライナ軍である。米国主導の和平交渉には疑問付がつく。
こうした米国の「当事者意識」が、先の米国・ウクライナ首脳会談を「口論」で打ち切る前代未聞の事態を招いた。米国は今、ウクライナへの武器弾薬提供を一時的に凍結する騒ぎにまで発展している。これこそ、米国が一刻も早くウクライナ戦争を終結させたいという希望の裏返しである。米国は、焦っているのだ。トランプ氏は3月4日の施政方針演説で、ウクライナのゼレンスキー氏から米国との鉱物資源協定締結とロシアとの停戦交渉に応じる意欲を示す書簡を受け取ったと明らかにした。これで一件落着、問題は氷解して前進する。
トランプ氏が、「米国暴走」という批判を承知の上で、ロシアと和平交渉しようとしているのはなぜか。ここに、米国の深い世界戦略を感じ取る必要があろう。感情論から言えば、「米国は横暴」とか「ロシアを利するだけ」、あるいは、「ウクライナの安全保障はどうなるのか」、「ヨーロッパの不安にどう応えるのか」などの疑問が噴出して当然である。トランプ政権は現在、これら諸々の疑問に一切答えずに、ロシアと和平交渉する狙いはなにか。ここを深掘りすることで、今後の世界情勢を読み取るヒントが得られるであろう。
トランプ大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領との間で軋轢を起こしている。ゼレンスキー氏自らが、提案したウクライナの鉱物資源の開発利権50%を米国へ譲渡する案を巡る齟齬である。この譲渡案は、その後に撤回された。ゼレンスキー氏が期待したのは、米国による安全保障の具体策が必要であった。米国の提案には、この肝心の条項が抜けていたほか、米国が港湾利用権も要求したのだ。
米国はなぜ、ウクライナが最も切実な願いであるロシアからの「再侵略防止」保障に言及しないのか。米国が、ウクライナの本音を100%知りながら、あえて無言を通しているのは、ロシアとの交渉をまとめる上で必要という判断であろう。米国は、ロシアに対して「第三者」を装いながら、裏ではウクライナの利益を守るという高等戦術に出ている。その一例は、ウクライナの黒海に面する港湾の権利を要求していることだ。ここに、米国の「深慮遠謀」が隠されている。
クリミア半島のセヴァストポリ海軍基地は、ロシア黒海艦隊の主要拠点である。現在は、ウクライナ軍の攻撃を回避すべく、主要艦隊がセヴァストポリ海軍基地から移動させているほど。ウクライナの黒海に面するオデーサ港へ、米海軍が寄港できる権利を得ればどうなるか。ロシア海軍の首に鈴を付けるようなものだ。それだけに、米国は、和平交渉がまとまるまでは伏せておきたいのであろう。
膨大ウクライナ鉱物資源
ウクライナの鉱物資源は、莫大な価値があるみられている。『フィナンシャル・タイムズ』(2月18日付)は、次のように報じている。
ウクライナには最大で11兆5000億ドル(約1750兆円)相当の重要鉱物が眠る大きな地下鉱床があると推測されている。リチウムや黒鉛、コバルト、チタン、そしてスカンジウムといったレアアース(希土類)など、防衛から電気自動車(EV)まで様々な産業にとって不可欠な資源を持つ。
欧州では珍しいこうした鉱床の確認は、旧ソ連時代の研究に基づくものだ。それだけに、現代の探査技術によれば、どれだけ多くの鉱床が賦存しているかという夢が膨らむ。プーチン氏が、ウクライナ侵略を決断した理由の一つに、この豊富な鉱床獲得意欲が指摘されているほどだ。(つづく)
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