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トランプ米大統領は4日夜(日本時間5日午前)、上下両院合同会議で施政方針の演説を行った。トランプ氏は、「関税は米国を再び豊かにし、再び偉大にするためのものだ。そして、それは実現しつつあり、すぐに実現するだろう」と発言した。一方では、「多少の混乱はあるだろうが、われわれはそれでOKだ。大したことではない」と語った。「何兆ドル」もの歳入をもたらし、自身が不公平と見なす貿易関係の是正につながるとしたのだ。

トランプ氏は、施政方針で演説「大見得」を切ったが、現実の米国経済は逆方向へ動き始めている。トランプ関税が、「何兆ドルもの歳入」どころか、トランプ支持者である労働者や農民の頭上へ負担増になって襲いかかるのだ。近隣国カナダとメキシコへの関税25%が、米国民のエネルギー値上がりに跳ね返る。農民も肥料高と中国の農産物15%関税に悩まされる。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月5日付)は、「トランプ関税 支持者を直撃」と題する社説を掲載した。

ドナルド・トランプ氏は労働者階級の有権者に実質所得の引き上げを約束し、大統領に返り咲いた。それを踏まえると、同じ有権者層に打撃となる関税の導入にトランプ氏が熱心であることは一層不可解だ。


(1)「関税は税金であり、トランプ氏の最新の関税は年約1500億ドル(約22兆5000億円)規模の増税に相当すると推定される。税金は成長を害する。これは、トランプ氏がカナダとメキシコからの輸入品に対する25%の追加関税を発動させたのを受けて、投資家が今週発しているメッセージだ。トランプ氏はまた、中国に対する追加関税率を10%上乗せし20%とした。カナダと中国は報復措置を打ち出し、メキシコは対抗措置を9日に公表する予定だ」

トランプ氏は、関税を税収と間違えている。関税は、輸入価格が関税分高くなるので税金になる。この辺りを誤解しているのだ。シカゴやメキシコへの25%関税は、米国市民の生活必需品を直撃する。

(2)「米小売り大手ターゲットのブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は4日、CNBCの取材に対し、メキシコ産品に関税が課されることで、同社の果物や野菜の価格を上げざるを得なくなる可能性があると語った。米国で販売されている野菜および生鮮果物の約30%はメキシコから輸入されている。メキシコ産の「モデロ・エスペシアル」は米国で最も売れているビールだ」

米国で販売されている野菜や生鮮果物の約30%は、メキシコ産である。これに、25%関税だ。即、値上がりになる。

(3)「米家電量販店大手ベストバイのコリー・バリーCEOは4日、トランプ氏の関税によって「米国の消費者向け価格が上がる可能性が高い」と述べた。電子機器メーカーは北米自由貿易協定(NAFTA)と、それに取って代わった米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を活用するため、中国ではなくメキシコに工場を開設してきた。スマートテレビを買う予定がある人は要注意だ。価格が25%上昇する可能性がある」

家電製品もメキシコ産に依存している。25%の値上がりになる。


(4)「エネルギー価格も上昇するだろう。トランプ氏は暗にこのことを認めており、カナダから輸入するエネルギーについては関税を10%に下げた。米国ではシェールガス生産が盛んだが、パイプラインの輸送能力には限界があるため、中西部と北東部で使われる天然ガスはカナダに大きく依存している。つまり、トランプ氏の支持基盤の地で暖房費が上昇するということだ。電気料金も上がるだろう」

エネルギーは、カナダからの輸入に依存している。これも、25%の値上がりになる。

(5)「米国は毎月、カナダから平均で約3315ギガワット時の電力を輸入している。これは約370万世帯の電気を賄える量であり、北東部と中西部で電力網を安定させ、電力価格を下げるのに役立っている。エネルギーは、一次アルミニウム生産会社の費用の40%を占める。中西部では近年、エネルギー価格が上昇する中で、幾つかの鋳造所が閉鎖した。トランプ氏の関税はほかでもなく、彼が助けようとしていると主張する労働者たちを苦しめるだろう」

カナダからの電気が25%値上がりすれば、一次アルミニウム生産会社はコスト高で倒産必至である。トランプ支持者の労働者が、不運にも解雇される運命だ。


(6)「ガソリンスタンドでも痛みを感じることになる。米国は石油の純輸出国だが、依然として日量約650万バレルの原油を主にカナダとメキシコから輸入している。メキシコ湾岸と中西部の製油所では重質油を処理しているからだ。製油所を改良して米国のシェール層から採掘される軽質油を処理できるようにするためには、何十億ドルもの費用がかかる。(製油所がカナダ産原油に依存している)中西部のピックアップトラックの運転者が、最も大きな痛みを感じることになりそうだ」

米国は、カナダとメキシコから日量約650万バレルの原油を輸入している。これも25%も値上がりになる。中西部のピックアップトラック運転者が、最も大きな痛みを感じるという。こうなると、トランプを支持して「大損」になる。

(7)「米国の農家は既に、農作物価格の低迷とインフレに苦しめられている。米農業連合会(AFBF)によれば、農家は3年連続で赤字を強いられている。関税は農家の痛みを増幅させる。米国で肥料に使われるカリウムの85%はカナダから輸入されている。中国は米国から輸入する農産物に15%の関税を課すとしており、それによってブラジルとオーストラリアの農家がシェアを拡大することになる。AFBFのジッピー・デュバル会長は4日、「さらなるコスト増と米国産農産物のシェア縮小は、一部の農家に耐えられないほどの経済的負担を強いる恐れがある」と語った。トランプ氏の関税乱発は常識よりイデオロギーに基づいている。大統領が早く正気に戻ることを期待しよう」

米国の農家は、肥料の原料カリウムの85%がカナダ依存である。中国は、米国産農産物へ15%関税を課す。米国の農家は、「最悪」事態へ陥る。トランプ支持で大損だ。