ドイツ・フォルクスワーゲン(VW)は11日、2024年12月期の純利益が前の期比33%減の107億2100万ユーロ(約1兆7000億円)と発表した。
主要市場の中国で販売が減ったほか、ドイツ国内で生産コスト高が解消できなかった。営業利益率は前の期の7%から5.9%に下がった。5%割れは、自動車メーカーとして危険ラインとされる。フォルクスワーゲンは、危うくこのラインを回避できた。トヨタ自動車の24年3月期の営業利益率は11.9%であり、VWと大差である。
『時事通信』(3月11日付)は、「独VW、純利益3割減 中国不振で苦境浮き彫りー24年」と題する記事を掲載した。
(1)「ドイツ自動車最大手フォルクスワーゲン(VW)グループが11日発表した2024年通期決算は、売上高は0.7%増の3246億ユーロ(約52兆2600億円)だったものの、営業利益は15.4%減の190億6000万ユーロ(約3兆690億円)と落ち込んだ。純利益が前年比32.8%減の107億2100万ユーロ(約1兆7200億円)だった。営業利益率は、5.9%だ」
営業利益率がギリギリで5%台を維持した。5%割れは、新車開発余力がなくなるとして、自動車業界は「5%」に拘っている。
(2)「主力の中国市場で販売が低迷。コスト削減のため欧州で大規模リストラや生産縮小を迫られるなど、独自動産産業の苦境ぶりを示した。傘下の高級車アウディのブリュッセル工場閉鎖に伴うリストラ費用もかさんだ。世界販売台数は2.3%減の902万7424台。中国市場では現地の電気自動車(EV)メーカーにシェアを奪われ、9.5%減と振るわなかった」
VWの業績不振は、EV不振の一語につきる。経営戦略の間違いでEVへ特化したことの反動に見舞われた形だ。トヨタのように、HV(ハイブリッド車)を持たないことが、業績不振に拍車をかけた。
『時事通信』(1月6日付)は、「ドイツ自動車産業に冬の時代 米中に憂いの種、相次ぐ事業再編」と題する記事を掲載した。
ドイツ自動車産業に冬の時代が訪れている。中国勢の台頭や電気自動車(EV)の普及の遅れに加え、トランプ次期米大統領が掲げる高関税政策が追い打ちとなりそうだ。業界全体に事業再編の波が押し寄せている。
(3)「最大手フォルクスワーゲン(VW)の労使は12月20日、年間73万4000台分の生産縮小と3万5000人の人員削減を含むリストラを2030年までに独国内で実施することで合意した。VWグループは世界販売の3分の1を占める中国市場で、EV大手比亜迪(BYD)をはじめとする地元勢にシェアを奪われた。この結果、割高な人件費やエネルギーコストのために利益率が低い独工場にメスを入れざるを得なくなった。世界的なハイブリッド車(HV)回帰の流れにも乗り遅れた」
2030年まで続けるリストラ計画を発表している。この間は、業績低迷が続く。EVで中国自動車に劣っており、具体的な挽回策もない。
(4)「IFO経済研究所のフュースト所長は、「VWは氷山の一角にすぎない」と指摘する。高級車大手メルセデス・ベンツとBMWも業績が振るわず、サプライチェーン(部品供給網)全体の地盤沈下につながっている。24年に入り、部品大手のZFやボッシュ、重工大手ティッセンクルップが大規模な人員削減を明らかにした」
ドイツ自動車業界は、EVに社運を賭けたことが失敗の原因である。トヨタのように、全方位指向という経営のゆとりがなかったのだ。
(5)「ドイツは、主要国の中でも輸出依存度が高く、とりわけ自動車や関連部品は輸出の柱として独経済をけん引してきた。しかし、最大の輸出相手国である米国のトランプ次期政権が保護主義的な貿易政策を打ち出しており、「輸出企業に大打撃になる」(ケルンのドイツ経済研究所)と警戒の声が上がる。高い電気代や難解な役所手続きがドイツの産業立地としての競争力を低下させているとの指摘も絶えない。ただ、安定した新政権が発足するまで、政府による打開策は望めない。EVで先行する米テスラやBYDは欧州市場にも浸透し始めており、独企業は地力を試される厳しい局面を迎えている」
春先には新政権が誕生する。基本法(憲法)の規定している財政赤字比率は、国防費に限定して規定外にする交渉が行われている。これが実現すれば、財政面でゆとりが増そう。
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