トヨタ自動車は12日、欧州で2025年に電気自動車(EV)を新たに3車種発売すると発表した。品ぞろえを拡充し、先行する米テスラや中国勢に対抗する。26年までに15種のラインナップを揃える。トヨタは現在、新車に占めるEV比率が約5%である。これを26年には、20%へ引上げる見通しだ。状況次第では、27年にずれ込む可能性もあるという。トヨタの本格的なEV参戦である。
『日本経済新聞 電子版』(3月12日付)は、「トヨタ、26年までに欧州でEV15車種 低額車『含まず』」と題する記事を掲載した。
トヨタ自動車は、2026年までに欧州で新型の電気自動車(EV)15車種を投入する。新車に占めるEV比率は5%から20%に高まる見通しだ。同社は、いったん世界のEV販売計画を引き下げたが、欧州については堅持する。ライバルが、開発に力を入れる低価格EVは、「性急にやる必要はない」としてラインアップに含まない。
(1)「トヨタが2月上旬にブリュッセル市内で開いた欧州事業説明会で、欧州法人の中田佳宏社長は、「欧州でEVはますます生活の一部として受け入れられている。この3車種は脱炭素目標の強化と同時に、顧客のライフスタイルを強力に向上させる」と3車種の新型EVをアピールした。EV15車種のうちトヨタブランドの乗用車は6車種だ。このうち航続距離600キロメートルの小型多目的スポーツ車(SUV)「C-HR+(プラス)」、スズキからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける「アーバンクルーザー」、トヨタ初の量産EVの新型「bZ4X」の3車種を公開した。このほか高級車ブランドのレクサスはSUV「RZ」など新型EV3車種を発売する。RZにはステアリングシステムとタイヤを電気信号でつなぎ制御する技術を初めて搭載する」
トヨタが、既存EVメーカーと対抗するだけに航続距離や充電時間で競争力を高めている。
新型「C-HR+」 航続距離 約455km・約600km 急速充電40分~60分
新型「bZ4X」 航続距離 約445km・約573km 急速充電40分~60分
価格は、「bZ4X」が550万円~650万円
(2)「トヨタは、車種のラインアップが偏らないマルチパスウェイ(全方位戦略)を掲げる一方、24年のEV販売台数は約13万9000台で、新車販売におけるEV比率は1.3%にとどまっている。足元では欧州のEV需要は軟化している。日本経済新聞などの取材に応じた中田氏は「欧州他社のようにEVに全部(開発資源を)振ることをやってこなかったのでドタバタすることなく、着実に(EV販売戦略を)進められている」と話した」
ドイツのVW(フォルクスワーゲン)は、開発資源のすべてをEVへ賭けて失敗するという惨めな結果になった。トヨタは、悠々と技術を磨いた「自信作」で、挑戦を受けて立つ「横綱相撲」である。トヨタの金融的なゆとりが、販売戦略で無理を伴わない戦略展開が可能になる。
(3)「26年に欧州市場でのEV販売25万台という計画は変えない一方、「今の実需から厳しく見た方がいいかもしれない。後ろにずれる可能性はある」とした。欧州車大手や中国新興EVメーカーは欧州市場で低価格EVの投入を急ぐ。販売価格2万ユーロ(約320万円)以下が目安で、独フォルクスワーゲン(VW)や仏ルノーのほか中国・比亜迪(BYD)などが販売を予定している」
欧州市場でのEV販売は、26年に25万台目標である。欧州では、約320万円以下のEVが主流になっているが、トヨタはワンランク上のクラスで勝負する。トヨタブランドの高級イメージを守るためだ。
(4)「トヨタは6日、販売価格11万元(約224万円)からの低価格EV「bZ3X」を中国市場だけで発売した。中田氏は「欧州では戦略上、性急に低価格のEVを販売する必要はないと思う」と当面は検討しないことを明らかにした。今回、発表したトヨタブランドのEV3車種は日本とインドから欧州に輸出する。トヨタは、ハイブリッド車(HV)を中心に欧州で販売する新車の77%を域内で生産しているが、EVについては「一定の販売台数が見込めば地産地消を検討するが、今すぐではない」と否定的に語った」
トヨタは、中国で「販売台数」を稼ぐために、あえてEV低価格競争に合わせた低価格帯EVを発売した。EUで、このような低価格帯戦略を採用しないのは、ユーザーの高い購買力に合せたとみられる。「郷に入れば郷に従う」のだ。
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