米国トランプ政策によって現在、世界中が関税戦争へ巻き込まれる騒ぎだ。トランプ大統領は、最終的に何を求めて、このような事態を引き起しているのか。高関税の次は、通貨調整と安全保障を組み合わせた「米国経済圏」の確立にあるとみられる。その中でも、アジア地域を重視しているが、中国封じ込めが大前提になっている。台湾防衛問題は、対中安保政策の要である。それは、2月に米国務省が発表した「ファクトシート(公式声明)」の中で明らかにされている。
『WEDGE ONLINE』(3月13日付)は、「トランプ2.0の『ファクトシート』に公開されたアメリカの対中認識とは?」と題する記事を掲載した。これは、岡崎研究所記事の転載である。
(1)「米国務省の2月の米台関係ファクトシートは、「中台間の相違が強制ではなく、平和的手段により両岸の人々に受け入れられる形で解消されることを期待する」と繰り返す一方、「我々は台湾の独立を支持しない」という文言が削除された。これは、台湾の主権は中国にあるとする中国の誤った主張を否定するもので、より厳しい対中姿勢を示している。国務省はファクトシートで、「中国は中国共産党の目的を世界的に達成し、米国およびその同盟国やパートナー国を犠牲にして中国の利益を推進する手段として、国連や種々の地域フォーラム等の国際機関を操り、内部から崩壊させようとしている」という文言を付け加えた」
ファクトシートは、米外交政策の一環として、他国との関係や国際問題に対する米国の立場を示している。これにより、米国の政策が一貫していることを示し、国際社会に対して信頼性を高める役割を果たしている。こういう重い役割を担うファクトシートで、台湾問題に言及した。これまでの「我々は台湾の独立を支持しない」との文言を削除したことは、台湾独立問題を曖昧にしたことだ。米国は、支持も反対もしないという態度である。中国への抑制度を引上げたとみられる。
(2)「ファクトシートはまた、米国は「中国の侵害を阻止し、中国の不公正な貿易政策と闘い、中国の悪意あるサイバー活動に対抗し、中国によるフェンタニル前駆体の世界的な不法取引を終わらせ、中国による国際機関の操作を減らし、中国内外における中国の人権侵害について中国の説明責任を促進すること」に努めるとしている。つまり、改訂されたファクトシートは、トランプ政権が中国を米国のグローバルな利益に対する最大の脅威と見ていることを示している」
米国が、中国に対する「疑惑」の数々を提起している。これまでにないことで、米国は中国に対して一歩も引かない姿勢を強調した。
(3)「ヘグセス国防長官は、ウクライナ戦争終結のための北大西洋条約機構(NATO)の会合で、「中国を阻止するには、米国は太平洋の同盟国とその能力に投資するのが地理的に合理的だ。米政府はもはや欧州の安全保障に主たる力点は置いていない」などと述べた。トランプが新たな関税――台湾の半導体にも課すと脅している――によって世界中で懸念と外交的緊張を引き起こす一方、米国務省は新たなファクトシートの中で台湾を「高度に進んだ経済、グローバルな製造サプライチェーンの重要部分」と位置づけ、テクノロジー・プロジェクトにおける米台協力を強調する文言も付け加えている。ここからは、米台パートナーシップを容認・支持する姿勢が窺える」
ヘグセス米国防長官は、「米国は中国を阻止するために、太平洋の同盟国とその能力に投資するのが地理的に合理的」とし、アジア防衛に全力を挙げると明確にした。
(4)「台湾では米国が中国との対立のために、台湾を「駒」として利用するだけで、そのうち台湾を見捨てるのではないか、との「疑米論」が根強く存在する。これには、就任前のトランプ大統領の発言が強く影響しているようだ。同人は「台湾は我々の半導体ビジネスを奪った」、「台湾はアメリカに防衛費を支払うべきだ」と台湾について消極的発言を行った」
トランプ氏による台湾への不用意な発言が、「台湾防衛」問題に疑問を投げかけている。これが、中国と取引して台湾を放棄するとの憶説を生んできた理由だ。米国務省のファクトシートは、これを明確に否定している。トランプ氏が、仮に中国と裏取引すれば「トランプ売国奴」という非難を浴びかねない事態になっている。米国にとって、国防政策の前提が総崩れとなるからだ。
(5)「(ファクトシートで)興味深いことには、米国としては、中国の威圧・攻勢、サイバー攻撃、違法な貿易政策などを阻止するために尽力する、と書き込んだことだ。トランプ政権になってから、「中国は米国の利益にとって、最大の脅威」というのが、「ファクトシート」の表現であり、これらの変更には驚かされる。前述のように、トランプの台湾への批判的発言はあったが、台湾との断交(1979年)以来、事実上、台湾を中国の圧力・攻撃から防衛してきたのは、米国の国内法である「台湾関係法」である。その基本的構図はこれからも容易に変わりえないであろう。
中国の圧力・攻撃から台湾を防衛してきたのは、米国の国内法である「台湾関係法」である。トランプ氏の「裏取引説」は、米国内法である台湾関係法に違反する行為である。
(6)「今後とも基本的には米国から高度の武器を購入し、台湾自身が防衛予算を増強し、自らを敵の攻撃から守る形をとる必要がある。なお最近、頼清徳政権はGDPの3%にまで台湾の防衛費を増強することを発表した」
台湾は、トランプ氏の「裏取引説」を一掃するためにも防衛費を増強が不可欠である。
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