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ドイツは、規則を好む社会である。財政赤字にブレーキをかけるべく、憲法(基本法)で財政赤字をGDP比0.35%に制約(「債務ブレーキ」)する項目を設けている。だが、これがガンになって不景気でも財政赤字を増やせないという「財政の弾力性」が失われている。これも、ドイツの「官僚主義」の現れとみられる。やたらと規制を作って手続きを煩雑にしているのだ。

『ロイター』(3月14日付)は、「『官僚主義』が阻む景気回復、ドイツ企業が改善訴え」と題する記事を掲載した。

ドイツが国内工業の回復を急ぐのであれば、新政権は思い切った公共投資拡大策だけでなく、官僚主義的な手続きを劇的に減らす必要がある、と企業関係者は主張している。


(1)「ロイターが自動車、エネルギー、物流といった産業を代表する業界団体のトップ幹部らにインタビューを行ったところ、ドイツの官僚主義的な手続きのコストや手間のせいで、本来であれば事業の現代化に投資すべきリソースが食い潰されている、という声が上がった。自動車メーカーなど産業界のクライアント向けにボルト・リベット類を製造する従業員450人のメーカー、メカニンドゥス・フォーゲルサングを率いるウルリッヒ・フラトケン氏もその1人だ」

ドイツは、官庁への手続きが煩雑であると指摘されている。これは、AI(人工知能)でカバーできる問題だ。ドイツは、デジタル化が遅れている。

(2)「ここ数カ月、欧州連合に対して規制枠組みの緩和・簡素化を求める企業幹部からの声が高まっている。米国市場の閉鎖性が強まり中国企業が海外事業を拡大する中で、どのように競争していくべきか企業が模索しているからだ。ドイツでは先週、銀行業界のトップが、インフラや国防の分野で予定されている大規模な歳出計画が十分に効果を発揮するには、並行して官僚主義的な煩雑さを解消する必要がある、と釘をさした。ドイツ企業5000社が加盟する鉄鋼産業の業界団体WSMのクリスチャン・ビートマイヤー代表は、欧州最大の経済大国ドイツでは、規制面での負担によりイノベーションが阻害されていると指摘する」

インフラや国防の分野で、大規模な歳出計画が十分に効果を発揮するには、並行して官僚主義的な煩雑さを解消する必要と指摘されている。手続きが煩雑であるのは、規制が強すぎる結果である。


(3)「欧州委員会は2月、サステナビリティー報告基準の一部を緩和し、2029年までに報告義務を25%、中小企業に関しては35%縮小すると宣言した。管理コストに換算して375億ユーロ(400億ドル)の削減に相当する。先日のドイツ総選挙で最多得票を得た保守派のキリスト教民主同盟(CDU)は連立政権の発足に向けて協議を進めているが、優先すべき政策課題15項目のうち、2番目に官僚主義の解消を挙げている。だが現実には、企業幹部らはこうした公約に対して半信半疑で、政府が単に新たな要件を課すことになるのではないかと危ぶんでいる」

EU(欧州連合)の欧州委員会(内閣に相当)は、2029年までに政府への報告義務を25%、中小企業に関しては35%縮小すると宣言した。これによって、管理コストが375億ユーロ(400億ドル)も削減可能という。ドイツの次期首相を出すCDUは、重要政策の2番目に官僚主義の解消を挙げているほどだ。


(4)「実際、世界経済フォーラムが2023年に行った調査によれば、EU諸国のうち、政府規制の遵守がそれ以前の4年間に比べてより複雑になったのは3カ国だけで、その1つがドイツだった。ドイツのIFO経済研究所は許認可の取得や納税申告の提出、商品の取引といった業務に要するコストを測定する指数をまとめているが、2024年のデータによれば、他の欧州諸国、OECD加盟国ではここ数年負担が軽減されている一方で、ドイツでは2006年以来、官僚主義スコアが横ばい状態であることが分かった。アディダスのビヨルン・グルデン最高経営責任者(CEO)は、規制要件が過剰になってしまったと話す」

ドイツの規制要件は、過剰になっている。これは、市場経済のスムースな流れを阻害することでもある。米国のトランプ政権は、規制を外しすぎて問題になっているが、ドイツもこの流れの万分の一でも取り入れる必要がある。

(5)「ドイツはこれまで官僚主義の解消に向けて多くの法律を制定してきた。その1つが今年施行されるもので、納税通知書のデジタル化や、企業の領収証保管年数を10年から8年に短縮することなどにより、9億4400万ユーロの節約を謳っている。CDUのマニフェストでは、報告義務を縮小し、中小企業については検査担当者の任命義務を免除する旨の単年度法案を提案している」

業務のデジタル化は、日本も学ばなければならない。


(6)「CDUは、「サプライチェーン法」の廃止を望んでいる。これは従業員数1000人以上の企業に対し、サプライチェーン内での人権・環境関連のリスク低減への取り組みを報告するよう義務付けるものだが、結局はより小規模なサプライヤーに説明義務を転嫁することになり、またEU全体を対象とした類似の法律と重複している。ドイツ緑の党や社会民主党、さらには複数の非政府組織(NGO)は、こうした報告義務を緩和すれば企業の説明責任が軽減され、サステナビリティー面で苦労の末に獲得した成果が帳消しにされてしまうのではないかという懸念を表明している。

ドイツでは、緑の党や社会民主党などが規制撤廃にブレーキをかけている。すべてを民間に任せることが不安なのだ。ドイツのような「規制大国」には、こういう一面がある。