韓国経済は、昨年12月3日のユン大統領による戒厳令発動から大きな混乱状態へ落込んでいる。この結果、海外から見る韓国の今年の経済見通しは、ますます暗くなっている。米トランプ政権の関税引き上げ政策も、韓国の経済成長率をさらに引き下げる要因となっている。こうして、25年の経済成長率は、最新予測のたびに下方修正される悲観的な状況に陥っている。
東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(韓中日)のマクロ経済調査機関であるAMROは3月21日、韓国成長率が今年1.6%と予想した。昨年12月は、1.9%で、一挙に0.3ポイントも引き下げられた。3月19日には、国際格付け会社フィッチ・レーティングスが今年の韓国GDP見通しを1.3%に下げた。昨年12月に2.0%と提示したほど。韓国経済の下方修正ラッシュによって、韓国国内では「韓国製造業の実存的危機」(自己全否定)という超悲観的な見通しまで出てきた。
『中央日報』(3月23日付)は、「韓国製造業の実存的危機」と題する記事を掲載した。
これまで韓国は、米国中心の世界秩序で経済発展してきた。しかし、ドナルド・トランプ大統領の登場後、このような環境がもう持続できないということを目撃している。中国の浮上はさらに脅威的だ。ドイツ1位の自動車メーカー・フォルクスワーゲンも、中国の電気自動車攻勢に揺れるほどだ。電気自動車への転換が遅すぎたし、BYDのような中国の電気自動車メーカーが成長し続け、中国市場でのシェアが落ちたために生じたことだ。昨年3月、ドイツのシュピーゲルが記事を出したが、見出しが「ドイツ自動車産業の実存的危機」だ。
(1)「韓国は、主力産業の相当数が中国と競争関係にある。ドイツより深刻だ。製造業全体が実存的危機を迎えたと見ることができる。BYDは5分の充電で400キロメートル走ることができる技術を披露した。半導体などを除けば、中国市場で売られている韓国製品は、いまや指折り数えることができるほどだ。米国の牽制の中でも、ディープシークという人工知能(AI)まで開発した中国との競争は、本当に容易ではないだろう。核心製造業は良い働き口とも直結する。韓国は一体どんな戦略で今の製造業基盤を守るのか」
中国は、EV(電気自動車)で疾走している。韓国は、サムスンの半導体技術停滞で、非メモリー半導体への進出で大きな問題を抱えるにいたった。このまま、メモリー半導体だけの生産国に止まる悲観的な状態に陥る懸念が出てきた。日本は、ラピダスによって非メモリー半導体生産国として発展できる可能性が大きくなっている。これと対照的に、韓国半導体の停滞化が現実化している。
(2)「サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は最近、役員セミナーで「サムスンは生き残るかどうかという生存の問題に直面した。経営陣から徹底的に反省し、「死即生(死ぬ気になって生き残る)」の覚悟で果敢に行動する時」というメッセージを伝えた。韓国1位の企業がこのような状況なら、他の企業も例外ではない」
韓国トップ企業のサムスンは、「死即生」の覚悟で経営に臨むとして、覚悟を新たにする事態となっている。
(3)「一部労組の現実認識は大きく異なるようだ。現代(ヒョンデ)製鉄は営業利益が急減したが、労組が現代自動車水準の成果給を要求し、労使の摩擦が続いている。35万台の生産まで物価上昇率水準の賃金引き上げだけに合意して始めた光州(クァンジュ)型雇用事業もストライキが始まり、存廃の岐路に立たされた。労組の無理な要求は共倒れを招きかねない」
労組は、相変わらず夢うつつの状態にある。現代製鉄は、同じ企業グループの現代自動車が高収益で高い成果給を得ているので、これと同じ成果給を要求するという「トンチンカン」ぶりをみせて失笑を買っている。業種が違えば、給与も異なることに気付かない「嘘のような本当の話」が聞かれるのだ。
(4)「政府と政界はどうか。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代は無謀な脱原発を敢行し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は研究・開発(R&D)予算をむやみに削減して大きな混乱を与えた。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は20日に李在鎔会長に会い、「企業がうまくいってこそ国がうまくいき、サムスンがうまくいってこそ投資家も豊かになる」と述べた。しかし、半導体分野の週52時間例外問題は議論されなかったという。激励の言葉だけでは問題は解決しない」
韓国政界は、労組と同じように現実認識力に欠けている。理念先行で現実を無視している。とくに左派政党は、現実に対して「色眼鏡」(思想先行)で接しる時代錯誤が著しいのだ。韓国経済は、政界の混迷のままに救われないのだ。
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