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トランプ関税を巡る日米交渉は、4月17日(現地時間)から始まる。日本が、対米交渉希望75ヶ国とされる中で先頭を切る。交渉に臨む赤沢再生相は15日、「これまで自民党が日米貿易協議に取り組み、乗り切ってきた過去がある」と言及。「だからこそ、米国にも日本はしたたかだ、なかなか侮れない相手だと思われ、ある種の信頼関係もできている」と述べた。日米双方が、相手の手の内を知り尽くした交渉になる。

『ブルームバーグ』(4月15日付)は、「日米貿易交渉、同盟国との協定締結へトランプ氏の本気度測る試金石に」と題する記事を掲載した。

正式な交渉に入る先頭集団にいる日本は、米国が他国に対しどの程度強硬に譲歩を迫るのかを見極めたり、同盟諸国の交渉戦略を研究したりするといった恩恵は得られない。だが、早期に動いたことで、ある程度の影響力はまだ保持している。


(1)「ベッセント米財務長官は、日本のような同盟国と協力して、中国に経済的圧力をかけるための集団的な取り組みを模索する意向を示している。石破茂首相が「国難とも称すべき事態」と表現する米関税措置の緩和について、まず日本と合意することが必要になるだろう。ベッセント長官は先週、最終的には「恐らく同盟国と合意に達することができるだろう」と指摘。「彼らは軍事面では良き同盟国だが、経済面では完璧な同盟国ではない。その後、集団として中国に対応することが可能だ」と語った」

米国は、「軍事面の同盟国」と同時に、「経済面の同盟国」の確立を求めている。日本が、交渉のトップバッターとして、米国の狙い通りの成果を上げられるように協力できるか、だ。それには、米国も譲歩すべきである。

(2)「日本は、中国と緊密な貿易関係にあるため、米国の対中経済圧力にどこまで足並みをそろえるかは不透明だ。ただ、安全保障面での中国の脅威に立ち向かう上で、米国にとって日本ははるかに協力的な同盟国であり、今も中国と激しく対立する米国が、日本と貿易協定を結ぶもう一つの動機付けとなっている。在日米軍基地には兵士約5万3000人が駐留している。これは米国本土以外では最大の米軍常駐部隊だ。トランプ氏は、日米安全保障条約が日本に有利過ぎると批判しているが、米国家安全保障当局者らは日本との関係深化を望んでいる。これは、信頼のおける安保上の同盟国である日本を失うリスクを米国が懸念していることを示唆している」

米国にとっての日本は、サプライチェーンの有力な一環である。また、安全保障上でも欠かせない相手国が日本である。その意味では、「双子関係」になっている。米国は、日本を「怒らせる」振舞はできぬはず。米国も交渉に当っては、慎重な姿勢で臨むに違いない。


(3)「日本の当局者は、今後の協議で米国が具体的にどのような要求をしてくるのかいまだ不透明としながらも、米国の対日貿易赤字の削減方針が合意につながることを期待しているという。日本は、対米投資を増やし、米国産の液化天然ガス(LNG)の購入拡大に前向きな姿勢を示している。米側は日本に対し、米国産農産物の市場アクセス拡大や規制など非関税障壁の引き下げを求めている。グリア通商代表部(USTR)代表は、日本との協議では輸出管理など経済安全保障分野についても協議する見込みだと指摘した。一方、日本側の交渉責任者である赤沢亮正経済再生担当相は、ベッセント氏側から為替に関する議論が提起された場合には、これに応じる考えを示した」

米国は、為替問題を提示するであろう。もともと、トランプ氏は「関税と為替」がセットになっている。円高ドル安への本格調整を迫るに違いない。


(4)「日本は自動車輸入に関税を課していないが、日本国内の米国車が極めて少ないことにトランプ大統領はたびたび不満を示しており、これが交渉の障害となる可能性がある。日本の政府当局者は、今回の協議で米側の交渉担当であるベッセント氏が、新たな貿易合意案をトランプ氏に納得させる役割を果たしてくれることを期待しているという。トランプ氏が、迅速な合意で世界的な関税戦略の成果をある程度早期に得たいと考えているならば、先陣を切る日本は利益を得ることができる可能性がある。ただ、日本に対する関税を見直す見返りとしてトランプ氏が何を受け入れるかは不透明だ」

ベッセント氏は、日本通である。日本経済の構造的理解は十分あるはずだ。ヘッジファンドによって、長期の「円売り投機」で莫大な利益を上げたからだ。

(5)「日本と合意が成立すれば、市場に一定の安心感を与え、トランプ氏の政策の成功事例として強調される可能性もある。一方、交渉が決裂すれば、市場の不透明感はさらに高まる恐れがある。SMBC日興証券の太田千尋投資情報部部長は、赤沢再生相の交渉がうまくいけば、他の国のガイドラインになる可能性があると指摘。「日本株にとってポジティブで、万人にプラスだろう」と述べた」

日米双方が、妥結を望んでいる。米国は、「相互関税」交渉の初成果にしたいからだ。日本は、不安定な株式市場へのテコ入れになるからだ。