中国の自動車輸出は、安値輸出で破竹の勢いで伸びてきたが、ついにその勢いも止まった。3月の自動車輸出は、前年比でたったの1%増にとどまった。もはや、中国製自動車をこれ以上、受入れる余地がなくなったのだ。
内需も不振である。自動車ディーラーが「大量淘汰」の苦難に直面している。業界団体の中国汽車流通協会が4月に発表した最新レポートによれば、業界内で「4S店」と呼ばれるフルサービスのディーラーは、2024年の1年間の閉店数が実に4419店にも上った。輸出も内需も限界点に達した。
『日本経済新聞 電子版』(5月7日付)は、「中国の車輸出が急減速、3月伸び1% BYDはEV偏重戦略を見直し」と題する記事を掲載した。
中国自動車大手の輸出の伸びが鈍ってきた。2021〜24年に年20〜100%に達した伸び率は、25年3月に1%に落ち込んだ。欧州や東南アジアで中国勢が強みとする電気自動車(EV)の需要がふるわないためだ。比亜迪(BYD)がEVからプラグインハイブリッド車(PHV)を重視する方針に変えるなど、各社は輸出戦略の見直しを迫られている
(1)「5月2日まで開かれた世界最大級の自動車展示会「上海国際自動車ショー」。海外展開を狙う戦略車の華やかな発表が相次ぎ、表向きは輸出の逆風を感じさせなかった。新興EVメーカーの上海蔚来汽車(NIO)は25年内に、プレミアムコンパクトブランド「ファイアフライ(蛍火虫)」のEVを16カ国で発売すると発表した。初の右ハンドル車も用意し、中国から東南アジアや欧州へ輸出する。中国での価格は11万9800元(約230万円)から。海外事業を担う秦力洪総裁は、「今後数四半期以内に、世界の主要な右ハンドル市場に展開する」と話す」
過剰設備を抱える中国自動車産業にとって、これから生残りをかけた最後の競争が始まる。補助金狙いで、大量の企業が自動車産業へ進出した結果だ。
(2)「中国の車大手は、国内の競争が激しさを増すなか輸出に活路を求めてきた。21〜24年の輸出は毎年100万台規模のペースで増え、伸び率は年20〜100%に達した。23、24年の輸出台数は国別で世界最大となった。スマートフォン大手の小米(シャオミ)も、24年春に発売したEVを披露した。27年から海外展開を予定し、ドイツにEVの研究開発拠点を設ける計画を明らかにした。国有自動車大手の広州汽車集団は、海外向けに設計したピックアップトラックのコンセプトカーを紹介。27年ごろから量産を始めるという」
スマホ・メーカーまで,EVへ進出する「気軽さ」が、中国の企業熱のすさまじさを示している。すべて補助金が,進出のバネになっているのだ。この補助金が、民生へ回されたならばどれだけ国民は助かるか。政府には、そういう総合的な視野がない。
(3)「中国汽車工業協会によると、24年のエンジン車の輸出が23.5%増えたのに対し、新エネ車は6.7%増にとどまった。EVに限ると10.4%減だった。25年に入ると減速は鮮明になってきた。25年3月の輸出台数の伸びはわずか1%。同協会は25年通年では620万台と前年比6%増を見込んでいる。24年までの伸び率を大きく下回ることになる。
24年のEV輸出は、10.4%減だった。EV熱は、もう峠を越えている。25年3月の全体の自動車輸出はわずか1%増にとどまった。これからは、月を追うごとにマイナス幅が広がっていく。EV輸出時代は完全に終ったのだ。
(4)「背景には、25年1〜3月に142万台だった輸出台数の2割を占めるEVの失速がある。東南アジアでは、最大市場のタイで家計債務の増加への警戒から金融機関を中心に自動車ローンの審査を厳格化し、消費がふるわない。EVの普及に欠かせない充電インフラの整備も途上だ。BYDはタイで24年に現地生産に乗り出したが、同年の現地での販売は23年比1割減だった」
東南アジア最大市場のタイでは、家計債務の増加への警戒から金融機関が自動車ローンの審査を厳格化している。EVが、物珍しかった段階は過ぎたのだ。
(5)「欧州でも欧州連合(EU)が24年10月、中国製EVへの追加関税を導入した。EUは関税の代わりに最低価格を導入する方向で中国と協議を始めることで合意したと発表し、歩み寄る可能性もあるが状況は厳しい。上海モーターショーでは、「中国車はテクノロジーで優れているものの、欧州車の方がブランド力は高い」(独フォルクスワーゲンのデザイナー)といった声もあった」
新興ブランドの中国が、伝統的にブランドを重んじる欧州で苦戦するのは当然である。欧州市場で受け入れられるには、相当の時間がかかるであろう。
(6)「米ゴールドマン・サックスの分析によると、中国のEV生産能力は23年時点で世界需要の1.2倍ある。景気減速で消費が低迷している国内だけでは、つくった車をさばききれない。中国勢は引き続き輸出に力を入れるとみられ、欧州や東南アジアで中国製EVに対する警戒感が一段と高まる恐れもある」
政府の補助金が、EVの過剰設備をつくりだした。世界需要の1.2倍もあるというから卒倒するような話だ。世界は、市場原則に基づかない「暴走経済」に付き合わされている。いずれ「自滅」の時期がくるにちがいない。
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