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中国は4月にベトナム、マレーシア、カンボジアの東南アジア3カ国を訪問した。米国の相互関税への「共闘」を持ちかけたが、ベトナム、マレーシアでは空振り終った。いずれも、米国大市場が魅力であるからだ。中国は、逆にダンピング輸出で各国を圧迫している。こうなると、米国との関税取引に応じた方がプラスという判断になったのであろう。

『朝鮮日報』(5月8日付)は、「習近平主席の反米連帯を無視したベトナム『我々と米国と独特なつながり』」と題する記事を掲載した。

習主席はベトナムのファム・ミン・チン首相と会談した席上、「共に覇権主義や一方主義、保護主義に反対しよう」と述べましたが、ベトナム国営メディアはこの発言を一切報じませんでした。ベトナム商工省は習主席が去るとすぐに中国製品の対米う回輸出を防ぐ方策を打ち出しました。中国が米国に対する報復として、塗装まで終えた状態でボーイング737MAX旅客機を送り返すと、マレーシアの航空会社はその期待の購入を表明しました。


(1)「ベトナムは、東南アジア諸国の中でも対米貿易規模が最も大きく、昨年の貿易規模は1500億ドルに達します。米国の関税爆弾を避け、中国企業が大挙して移転した先でもあります。習主席が最初の訪問国としてベトナムを選んだのにはそんな理由がありました。中国国営新華社は、習主席は4月14日にチン首相と行った首脳会談で「戦略的な意思疎通を強化し、ともに覇権主義、一方主義、保護主義に立ち向かおう」と述べたと報じました。しかし、ベトナム政府の公式発表でその発言を見当たりませんでした」

習氏は、「覇権主義、一方主義、保護主義に立ち向かおう」と発言したが、ベトナム政府の公式発表では抜け落ちている。同意しなかったという意味だ。

(2)「ベトナム共産党のトー・ラム総書記に会った際も「共に一方的な嫌がらせに反対し、世界の自由貿易体制と産業サプライチェーンの安定を維持していこう」と述べましたが、やはりベトナム側の発表文ではその発言が抜け落ちていました。4月15日に出された共同声明には「覇権主義、強権政治、あらゆる形の一方主義に反対する」という文言がありました。しかし、この表現はベトナムが南シナ海問題で中国を批判する際に使うものでもあります」

習氏は、ベトナム共産党のトー・ラム総書記とも会談したが、習氏の呼掛けた「共に一方的な嫌がらせに反対」などは、ベトナム共産党の公式は発表では抜けていた。


(3)「チン首相は4月18日にベトナムを訪問した米投資ファンド、ウォーバーグ・ピンカスのジェフリー・パールマン氏最高経営責任者(CEO)に会った席上、「米国とはベトナムが他国と結んだ関係とは異なる『独特のつながり』がある」とし、「関税引き下げと米国製品の輸入増を通じて持続可能でバランスの取れた貿易関係を形成する」と述べました。この会談には米国のマーク・ナッパー駐ベトナム大使も同席していたそうです。ベトナム商工省は4月15日、中国製品のベトナムへのう回輸出を取り締まるための指針を発表しました。米国がベトナムに要求してきた事項の一つです。中国商務省は4月21日、「中国の利益を犠牲にして(米国と)合意に達するようなことがあれば容認しない」として不快感を示した」

ベトナムのチン首相は、米投資ファンドのCEOと会談し、米国との独特の繋がりを強調している。ベトナムは、米国へ協力して中国の迂回輸出取締りに協力する姿勢をみせている。

(4)「米軍事専門誌『1945』は4月22日、アメリカの元官僚と防衛業界の関係者の話として、ベトナムが米国製のF–16戦闘機を購入することで米政府と合意したと報じました。ベトナム政府は最新機種のF–16Vの購入を希望していて、少なくとも24機以上を購入する見通しとされます。ベトナムは、伝統的にロシア製の武器を使用してきて、スホーイ35やスホーイ22などを保有しています。それをF-16Vと入れ替えようとする構想です。香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』(SCMP)は「70年続いたロシアとベトナムの防衛協力を事実上終わらせるものだ」とし、「今回の措置は中国の怒りを買う恐れがある」と指摘しました。ベトナムは、関税爆弾を回避するため、使えるカードを全て切ろうとしています」

ベトナムは、米国の最新戦闘機F–16V購入を希望している。ロシアのスホーイ35やスホーイ22などに代替させよういうものだ。武器購入は、40~50年の長期取引が前提だ。それだけに、米戦闘機購入は米国との深い繋がりを求めている証拠である。


(5)「2番目の訪問国であるマレーシアでは、中国が対米報復として、受領を拒否したボーイング737MAX旅客機を購入する用意があるとの報道がありました。マレーシア航空の親会社マレーシア・アビエーション・グループ(MAG)のイズハム・イスマイル最高経営者(CEO)は「我々がその機体を購入できるかボーイングと協議している」と語りました。マレーシア航空は最近、ボーイング737MAX60機を購入する計画を明らかにしています」

マレーシアは、中国が受領拒否したボーイング737MAX旅客機を、代って購入する用意があるとしている。これは、明らかに米国を選択しているという意味だ。

(6)「習主席は、東南アジアに駆けつけ反米共同戦線の構築を試みましたが、結果は失敗に終わりました。アジアソサエティー政策研究所のローリー・ダニエルズ理事は、ニューヨークタイムズに対し、「中国は米国が残した信頼の空白を埋めることができなかった」と述べました。中国は世界の貿易秩序の守護者を自称しましたが、それほどの信頼を得ることができなかったという意味です」

中国は、南シナ海を不法占拠している国だ。こういう「悪行」を棚上げして、反米共同戦線の構築を試みても成功するはずがない。