トランプ米大統領は7日、5月8日を第2次世界大戦の「戦勝記念日」に制定する布告に署名した。ナチス・ドイツが連合国に無条件降伏した日を記念する。ホワイトハウスで記者団に「米国がいなければ勝利できなかった。米国以外の皆が祝っている。米国も勝利を祝い始める時だ」と語った。米国は、ロシアが5月8日を対ドイツ戦勝80周年記念式典として大々的に開催していることに「腹を立てた」形だ。
これには理由がある。ロシアがウクライナ侵略戦争を中止しないことへの苛立ちである。トランプ氏は、すでにロシア産原油を購入し国家や企業に「二次制裁」を課すと発言しているほど。こうした、米国の怒りがベッセント財務長官の「プーチン氏は戦争犯罪人」という発言になって飛び出したのだろう。当初、トランプ政権がみせた「ロシア寄り姿勢」は、今は「ウクライナ寄り姿勢」へ変わってきた。
『日本経済新聞 電子版』(5月8日付)は、「ベッセント財務長官、プーチン氏は『戦争犯罪人』 対ロ強硬へ踏み込む」と題する記事を掲載した。
ベッセント米財務長官は7日、ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領について戦争犯罪人だとの認識を示した。連邦議会下院の公聴会で戦争犯罪人と停戦交渉するのかと問われ「それが外交の本質であり、双方と交渉しなければならない」と述べた。公聴会で「プーチンを戦争犯罪人だと考えているか」と質問され、ベッセント氏は「はい(Yes)」と答えた。
(1)「バイデン前米大統領は、プーチン氏を戦争犯罪人と呼んだものの、ロシアに融和姿勢をとるトランプ米大統領は断定を避けてきた。同氏は、停戦交渉での譲歩に後ろ向きなロシアにいら立ちを募らせており、ベッセント氏の踏み込んだ発言は、対ロ強硬に傾く政権の姿勢を映す。国際刑事裁判所(ICC)は2023年3月、プーチン氏の逮捕状を出した。ロシアの支配地域でウクライナの子どもを連れ去ったことなどの戦争犯罪について、プーチン氏が「刑事責任を負っていると信じる合理的な根拠がある」と声明で記した」
中国の習近平国家主席は8日、訪問先のモスクワでロシアのプーチン大統領と会談した。西側諸国との対立が高まる中、両首脳は協力関係を新たな段階に引き上げ、米国の影響力に「断固として」対抗していくと表明。新たな世界秩序の擁護者としての立場を鮮明にした。中国とロシアは、「百の試練を経た、鋼鉄のような真の友人だ」とし、共に国際的な公平性と正義を守ると表明。両国は協力関係の基盤を強固にし、「外部からの干渉を排除する」と述べた。この発言は、米国を相当に刺戟している。米国は、戦争を止めないロシアへの制裁を強める姿勢だ。
(2)「トランプ氏はロシアが停戦に合意しなければ制裁を科すとかねて警告してきた。7日、ホワイトハウスで記者団にロシアが停戦協議で過剰な要求をしているかと聞かれ「あり得る。我々は何らかの決断をしなければならないところにきている」と表明した。4月下旬にはロシアと取引する第三国を制裁対象にする「2次制裁」に踏み切る可能性に言及していた。米連邦議会の超党派議員はロシア産の石油やガス、ウランなどを購入する国に関税をかける法案の準備に入った」
米連邦議会の超党派議員は、すでにロシア産の石油やガス、ウランなどを購入する国に関税をかける法案の準備に入っている。超党派議員による法案作成だけに、議会での成立は確実である。さしずめ、中国が「二次制裁」の対象国になりかねないのだ。
(3)「バンス米副大統領は7日、ワシントンで会合に出席し「両陣営が紛争を終結させるために必要な措置を建設的に話し合っていないのはバカげている」と両国を批判した。「ロシアによる戦争の正当化に同意する必要はない。トランプ氏も私も全面侵略を批判してきた」と話した。停戦交渉を念頭に「ロシアが問題を解決する意思がないと思わない」と指摘。一方、協議でのロシアの態度を「要求が過大だ。紛争を終わらせるための特定の要求と譲歩を求めている」と主張した」
米国は、しだいに和平交渉の軸足をウクライナ側へ移している。ウクライナとの間では、地下資源開発で協定が成立している。米国にとっては念願の「レアアース」獲得の道が開けた以上、ウクライナ側へ立って解決するほかない。
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