中国の不動産バブルの発生は、不動産開発企業が「青田売り」を始めたことも大きな要因だ。住宅購入者が、販売契約を結ぶことにより住宅ローンが組まれるので、業者はそのローン資金によって住宅建設するという安易さが、業者の乱立を許す結果になった。
地方政府が、これを規制しなかったのは、業者が競って国有地を購入することで,土地売却益が大きな歳入源になったからだ。この「思惑の連鎖」が、あの膨大な中国不動産バブルを生み出すテコになった。規制すべき当局が、バブルの片棒を担ぐというあり得ない光景を生み出したのだ。今になってようやく、「青田売り」禁止ということになりそうだという。余りにも「遅すぎる」のだ。
『ブルームバーグ』(5月8日付)は、「中国が住宅販売方式の見直し検討、危機招いた事前発売を抑制-関係者」と題する記事を掲載した。
中国当局が住宅販売方式の抜本的な見直しを検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。不動産危機の深刻化を招いた従来の事前販売モデルではなく、完成後の住宅のみを売ることを不動産開発業者に義務付けるという。
(1)「非公開情報だとして、匿名を条件に話した関係者によると、今回の取り組みは中国政府が策定中の不動産開発に関する「新たなモデル」の一環。最終決定には至っていないという。関係者によれば、検討されている案は導入後に販売される土地にのみ適用され、公営住宅事業は対象外となる見込みだ。地方政府には事情に応じて一定の裁量も認められる見通し」
竣工住宅だけを販売させる案は、2年ほど前にも出たが立ち消えになった。どこが、反対したのか不明だが多分、地方政府であろう。国有地が売れないことで歳入不足が激化するという理由づけされたに違いない。弱小業者
が、当局を動かす力はないからだ。
日本でも、高度経済成長期(1980年代)に青田売りが問題になり、すぐに禁止された。以後、日本では「青田売り」による問題は発生していない。中国は、長くこの問題が尾を引きながら禁止できずに見送られてきた。これがどれだけ、被害者を出したか分らないのだ。
(2)「長引く不動産不況で個人消費や雇用が圧迫されており、中国当局はこれに歯止めをかけようとしてきた。政府の支援策を背景に住宅セクターは緩やかに持ち直しているが、回復は中古住宅が中心となっている。開発業者が工事を予定通りに完了できるのか、買い手側の懸念は根強い」
国有不動産会社であれば、国有銀行が資金援助をするので、工事途中で放棄する事態は起こらない。問題を起こしているには、民営不動産開発企業である。
(3)「開発業者が、住宅を完成前に販売できる仕組みとなっている現在の制度は、過剰供給を招き、開発企業の債務問題の一因になったと指摘されている。数年前には、建設途中で放棄された住宅プロジェクトを巡り、ローン支払いのボイコットが全国的に広がり、大きな社会問題となった。不動産情報を提供する克而瑞がまとめたデータによると、住宅市場が落ち込み始めた2021年当時、新築住宅の約90%が完成前に販売されていた。昨年にはその割合が約74%に低下した」
「青田売り住宅」は、24年でも74%もある。この住宅は、竣工するか100%保証はないのだ。こんなリスクの高い住宅を購入する消費者がいるだろうか。「利に賢い」市民が、青田売り住宅に引っかかるケースは減っているであろう。問題は、こういう「青田売り」住宅の存在が、不動産不況を長引かせているのだ。
(4)「事前販売からの脱却を全国規模で進めた場合、すでに資金繰りが厳しく、販売低迷に見舞われている不動産開発業者の多くにとっては、資金難に拍車が掛かる恐れがある。一方、資金に余裕のある開発企業は新たな制度下で有利な立場を築き、土地取得や住宅建設を進めやすくなる見通しだ」
弱小な不動産開発企業が整理されるのは,致し方ない面がある。消費者が,安心して住宅を購入できる条件を整える方がはるかに重要であるからだ。
コメント
コメントする