テイカカズラ
   

韓国は、未だに年功序列賃金と終身雇用制度を守っている。これが、企業の賃金総額を肥大化させるので、新規採用を止める企業が続出している。労働市場流動化をもたらす能率給制度への切り替えは、戦闘的な労組によって遮られているのだ。これを側面から支援する左派陣営によって、ますます年功序列賃金の泥沼に嵌まり込んでいる。欧米流の賃金体系によって、企業は必要とする労働力を随時、雇用できる柔軟性が不可欠である。これが結局、雇用増に結びつくが、労組や左派は頭から拒否している。

『ハンギョレ新聞』(5月14日付)は、「関税戦争、内需・雇用沈滞…新政権は最初から『道険し』」

今年、韓国経済が0.8%の成長に止まるだろうという韓国開発研究院(KDI)の予測は、来月初めに発足する新政府にとって険しい道が待っていることを意味する。大規模な国政課題の第一歩を踏み出すべき政権初期から、景気管理という厳しい課題を抱えることになったからだ。景気上昇局面で執権を始めた文在寅(ムン・ジェイン)や尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の時とは異なる様相だ。


(1)「韓国開発研究院が14日に発表した「修正経済展望」は、韓国経済が収縮局面に入っていることを如実に示している。今年の成長率(0.8%)が昨年(2.0%)の半分に及ばず、来年も1.6%にとどまると同研究院は見込んだ。韓国経済が1%を下回る成長に止まるのは、2000年以降グローバル金融危機(2009年は0.8%)とコロナ危機(2020年はマイナス0.7%)の2度だけだ。ドナルド・トランプ米政府の関税戦争が、輸出中心の韓国経済を強打した影響は大きいが、長期化する内需不振は異例水準の低成長の原因を外部に求めることを難しくする」

企業は、終身雇用制度と年功序列賃金によって年々、賃金総額が増え続ける構造になっている。これは、能力給の普及が進めば、労働市場の流動化と転職が拡大するので、大きく改善されるはず。それが、右派によって阻まれているのだ。


(2)「特に目を引く部分は働き口の展望だ。研究院は、今年の雇用は前年より9万件増に止まり、来年(7万件)には増加幅がさらに小さくなるだろうと見込んだ。2023年は33万件、昨年も16万件の働き口が増加した点を念頭に置けば、働き口成長の鈍化速度が非常に速い。働き口は家計の所得と消費に直接影響を及ぼし、急激な働き口鈍化は社会安全網に対する需要増大につながり政府財政に負担として作用する。今年(1.7%)はもちろん、来年(1.8%)にも消費者物価上昇率が適正水準の2.0%を下回るという見通しも、収縮中の韓国経済のもう一つの断面だ」

新規雇用件数増の推移は下記の通りだ。
2023年 33万件増
  24年 16万件増
  25年  9万件増
  26年  7万件増
出所:KDI

この新規雇用件数増の推移をみれば、韓国経済は明らかに行き詰まっている。この制度的原因がどこにあるかを解決しなければ、韓国経済は「自滅」するほかないという厳しさに直面している。


(3)「これは、過去に文在寅政府と尹錫悦政府が政権を始めた時とは違う景気の流れだ。文在寅政府は、グローバル金融危機やその後の欧州債務危機などの影響で、長期低成長に陥っていた韓国経済が伸び始めた2017年に発足した。尹錫悦政府もまた、新型コロナウイルス感染症の大流行が終わりかけていた2022年に執権を始めた。景気が底を通過した時期にスタートしたため、「所得主導成長」(文在寅政府)と「健全財政」(尹錫悦政府)というそれなりの国政課題を推進できた」

この記事も事態の本質が,どこにあるかが分っていないようだ。

(4)「景気が低迷しているが、政権獲得を夢見る主要政党の大統領候補側は、これといった公約や政策案を出していない。最近公開した10大公約にも景気振興に役立つほどの「財政戦略」や「働き口公約」は含まれなかった。新政権発足後、少なくとも1ヶ月余りかかる内閣人選などを念頭に置けば、「景気対策の空白期」が長くなる恐れもある」

韓国はユン政権以来、最大野党「共に民主党」によって政策は空白を余儀なくされている。それほど、与野党の対立が激しい國である。今後も,対立が続くであろう。


(5)「このような理由から、来週に予定されている韓国銀行金融通貨委員会の会議に対する注目度が高まっている。政界と政府が「大統領選挙」と「大統領罷免」で足止めされている状況で、韓銀の通貨政策だけに頼るほかはないためだ。市場では基準金利引き下げの可能性が高いと見ている。家計負債の増加傾向が異常な流れを見せていないうえ、ウォン-ドル為替レートも昨年末と年明けに比べて安定傾向を見せているためだ」

市場では,利下げ要請が強くなっている。韓銀は、現状をどのように判断するか、だ。

(6)「韓国銀行のイ・チャンヨン総裁も最近、「金利を十分に引き下げることもできる」と述べた。野村證券のパク・ジョンウ エコノミストも「関税不安の他にも韓国経済の大きな問題は内需があまりにも不振だという点」とし、「新政府が追加補正予算を編成し、韓銀の基準金利引き下げ効果が現れれば下半期には景気が多少改善されることもありうる」と話した」

金利を下げても、財政支出を増やしても、韓国経済は制度的に行き詰まり状態に陥っている。この改革の方がはるかに重要だが、その気配はない。

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2025-05-12メルマガ668号 世界の囁き「韓国終末論」、進歩派が司法権まで蹂躙「間近にきたゼロ成