トランプ支持派は熱狂的で、米国は対中国政策で強硬対応すべきという点で結束している。それだけに、米国が対中関税を30%以下に下げることに大きな不満をみせるだろうと予測されている。この30%関税が続けば、中国の打撃は大きい。ブルームバーグが、エコノミスト調査をした結果、以上のような内容が浮かび上がった。
『ブルームバーグ』(5月16日付)は、「トランプ政権、対中関税率30%に据え置きへ-アナリストら半年先予想」と題する記事を掲載した。
米国と中国は、90日間の関税率相互引き下げで先に合意した。ブルームバーグが実施した最新調査では、米関税率はこの期間が終了後も、中国の対米輸出を大幅に抑制すると見込まれる水準にとどまる公算が大きいとの見通しが示された。
(1)「アジアや欧州、米国の資産運用会社や銀行、調査会社のアナリストや投資家ら計22人を対象とした14、15両日の調査によれば、中国産品に対する米関税率は2025年終盤まで現行の30%に据え置かれると予想(中央値)されている。12日の合意発表前の145%を大幅に下回るものの、中国の中期的な対米輸出を優に70%減らす高水準だとブルームバーグ・エコノミクス(BE)は推計。米中貿易交渉が早期の米関税政策見直しにつながる期待は低く、中国の経済的痛手が続く可能性を示唆するものだ」
関税引下げは、米中貿易問題解決の入り口にすぎない。米国は、中国の対米黒字削減の具体的な輸入計画の提示と、その実現性の検証が控えている。さらに、米国は中国の過剰輸出を食止める内需充実策を要求している。こういう一連の問題を抱えているだけに今後、半年以内に問題がすべて解決するとは思えない。となると、現状の対中30%関税は維持されるどころか、引上げられる可能性まである。
(2)「DNBバンクのエコノミスト、ケリー・チェン氏は来年11月の米中間選挙が合意期限となる可能性を指摘した上で、「米中の相対的な立場が本質的に変化するには、十分な時間が残されていない」との見方を示した。半年後には関税率が30%を下回ると予想する回答者が7人いた一方で、一段と高い関税率を見込む回答者も6人いるなど、将来に向けた見通しは一層分かれており、両国が対立を解消できるかどうかに対する不確実性が浮き彫りとなった。なお、米中が最終的な貿易合意に達した場合、関税率は20%まで引き下げられる可能性があるとの予想が中央値で示された」
来年11月の米国中間選挙まで、米中合意が引き延ばされるという見方もある。これは、米国が中国へ強気姿勢を取る結果だ。
(3)「幾人かの回答者は、トランプ大統領の関税政策の予測不可能性を理由に、予想すること自体に慎重な姿勢を示した。EFGアセット・マネジメントのエコノミスト、サム・ヨキム氏は「トランプ政権1期目を教訓とすれば、状況はまだ完全に好転したわけではなく、合意が必ずしも維持されるとは限らない」とし、「米通商政策の高度の不確実性に伴うリスクは引き続き高い」と指摘した」
トランプ氏の「不確実性」によって、見通しは付けがたいとする意見も出されている。
(4)「トランプ氏の対中関税政策は、今年の世界経済と市場に影響を与える最大級の変数の一つだ。関税や景気刺激策を巡る不確実性が影を落とし、中国資産は年末まで現在の水準付近で狭いレンジ内の取引が続く公算が大きいと回答者はコメントした。調査結果によれば、人民元は25年末までに1ドル=7.2元前後で推移するとの予測が回答者17人の中央値で示された。中国当局主導の元安誘導に関する臆測が和らぐ状況にあって、当局は急激な資本流出や過度な流入を防ぐとみられており、人民元は安定した水準で推移する可能性がある」
人民元は、25年末までに1ドル=7.2元前後で推移するとの予測が多かった。中国当局主導の元安誘導は困難としている。資本流出が起こるからだ。中国が、もっとも神経を使っている問題だ。
(5)「回答者の大多数は、トランプ政権1期目に導入された関税が維持されると予測している。これを引き下げることは大きな譲歩と受け取られ、政権支持層の怒りを招く可能性があるためだ。BEの推計によれば、これらの関税率は平均約12%となっている。アバディーン・インベストメンツの新興市場担当シニアエコノミスト、ロバート・ギルフーリー氏は対中関税率が50%前後で落ち着くと予想する。「関税に関する好材料があれば、中国の政策緩和の動きは抑制される可能性が高く、それは市場の上昇余地を限定的なものにすることを示唆している」とギルフーリー氏は分析。「ダメージの実態が明らかになり経済が減速する中で、最終的には当局が為替の下落を容認すると予想している」と論じた」
対中関税率が引下げられたとしても、トランプ政権1期の平均約12%を下回らないとみている。関税率の極端な引下げによって、中国の内需充実策が中途半端になるというリスクが生じる。となると、高めの関税設定となる。
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