韓国銀行(中央銀行)総裁は、折にふれ韓国経済にイノベーションの芽が消えたことを嘆いている。現在、繰り広げられている大統領選でも、これと言った経済政策はきかれないのだ。与野党両候補は、国債発行(野党)、減税(与党)と借金依存の政策を堂々と主張している。まさに、活力を失った韓国経済の実態浮き彫りにしている。「韓国はどこへ行くのか」という思いを深める。
『東亜日報』(5月22日付)は、「『借金して補正予算』『減税』、ため息の出る与野党候補の経済回復策」と題する記事を掲載した。
大統領選挙が目前に迫り、大統領候補たちの「経済再生」公約が続々と打ち出されている。最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補は、国債発行による追加補正予算編成を、与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補は、減税を主な解決策として掲げている。いずれも景気を一時的に刺激する効果はあるかもしれないが、落ち込む成長潜在力を引き上げる戦略としては不十分だという指摘が多い。
(1)「李氏は、「補正予算を通じて小規模事業者の負債を免除し、地域通貨を発行して景気浮揚に取り組まなければならない」と主張する。今月初めに通過した13兆8千億ウォン(約1兆3800億円)の1次補正予算に続き、2次補正予算を編成して、自営業者の借金をなくし、国民支援金を支給して消費回復を図るということだ。金氏は、「法人税の最高税率を24%から21%に引き下げ、規制を緩和して企業投資を活性化させる」と述べた。減税を通じて企業を支援することが核心だが、2次補正予算の可能性もあるという立場だ」
李氏は、地域通貨の発行で景気浮揚させられるとみている。これは、小規模な地域経済では当てはまるが、何とも「みみっちい」ことを言っている。法定通貨と異なり、預金はできず受け取ったらすぐに支払に使う「オモチャ通貨」だ。韓国経済を浮揚させられる力はない。有力大統領候補が、こんな類いの話を大真面目にしているところに、韓国経済危機の本質が宿っている感じだ。もはや、「構想力」が枯れ果てたのだろう。
(2)「両氏の共通点は、財政に莫大な負担をかけるということだ。2次補正予算を推進するにせよ、減税をするにせよ、結局、穴の開いた財政を国の借金で埋め合わせるしかない。上半期中に国家債務が1200兆ウォン(約120兆円)を超える見通しだが、国債発行まで増やせば、国債の価格が下落し市場金利が上昇するか、または金利の低下が遅れる可能性が高い。自営業者や企業を支援するという公約が、利子負担を増やし、投資を萎縮させ、成長率を引き下げる可能性がある」
与野党両候補は、財政依存の経済政策を主張している。IMFの最新予測では、公的債務残高の対GDP比は、2030年に59%としている。非SDR(特別引出権)通貨国の公的債務残高の対GDP比は、60%が限界とされている。韓国は、このレッドラインに向けて「一直線」である。両大統領候補の主張を聞いていると、「韓国衰亡」を実感させる状態だ。
(3)「両氏とも強調している「人工知能(AI)投資」公約は、投資規模や回収期間を考慮すると、民間が担うのは難しいという指摘が多い。にもかかわらず、李氏は「政府の財政ではなく、民間資本を誘致して順次投資金を確保する」とし、金氏は「AI官民ファンドを作る」と言う。票に直結する人気取り政策には借金をためらわず、未来への投資には企業の資金を使おうとしている。両氏の公約では、半導体・電気自動車・バッテリーなど決して放棄できない未来の先端産業に対する具体的な支援策は見当たらない」
AI開発は、政府資金を投入してリスクを引き受ける体制構築が必要である。韓国政府は、こういうことには消極的である。本音は、サムスンにでも引き受けさせたいのであろう。
(4)「(国債依存で)子どもや孫の世代が将来税金を支払って返済しなければならない財源を前倒しで使おうと主張するなら、その財源がどのような形で経済を成長させ、将来の世代に利益として還元されるのかを明確に説明できなければならない。財政出動や減税ばかりが目立つ両氏の公約には、この点が欠けている。これを見守る国民がため息をつく理由である」
国債発行は、現世代が将来世代の負担で、「楽をしたい」という設計である。これは、大不況に陥っている場合、不可避の政策になる。だが、通常期ではこういう甘えを避けねばならない。
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