習近平中国国家主席の早期退陣説が、インターネット上などで囁かれている。習主席の威信が低下し、人民解放軍の習派が劣勢であることも、これまでの噂より真実味のある観測として広がっている。
習氏は、26年から始まる15次「5カ年計画」策定で悩んでいる様子もみえる。製造業重視路線を強調する一方で、次のような重要指示を与えた。前国家主席・胡錦濤氏が、共産党トップとして最後の2012年11に行った活動報告演説と瓜二つであった点だ。習氏は、「科学的な政策決定、民主的な政策決定、法律にのっとった政策決定を堅持せよ」を踏襲した。これは、「反習近平派」への妥協とも読めるのである。
『時事通信』(5月29日付)は、「『習主席早期退陣』で情報錯綜◇実際の焦点は4選可否か」と題する記事を掲載した。
(1)共産党政権に批判的な在米中国人のウォッチャーらがこのところ、以下のような習主席退陣説を拡散している。
1)習氏は改革・開放に事実上反対し、経済の極端な落ち込みなど重大な失政が続いたため、年内に開かれる見通しの次の党中央委員会総会(第20期4中総会)などで党総書記、中央軍事委主席、国家主席のすべて、もしくは一部を退任する。
2)習氏が総書記を辞めた場合、後任の候補は丁薛祥筆頭副首相か、上海市党委の陳吉寧書記、胡春華前副首相。
3)政局は既に有力長老たちが主導している。中国共産党政権で党のトップが失脚したケースはある。華国鋒主席、胡耀邦総書記、趙紫陽総書記の3人だ。ただ、この3人はいずれも、党内序列筆頭の地位にあったものの、最高権力者ではなかった。政治の実権を握っていたのは、鄧小平氏をはじめとする革命世代の有力長老グループだった。したがって、党主席でも総書記でも、長老たちの意に沿わなければ、引きずり降ろされた」
中国ウォッチャーは、前記のような習近平氏の失脚説を流している。いずれも、真実味が薄い内容だ。
(2)これに対し、習主席は落ち目だとはいえ、名実ともに政権の最高指導者であることに変わりはない。習氏を総書記に推したといわれる江沢民元国家主席は既に死去。胡錦濤前国家主席は存命ながら、健康状態が悪く、政治活動ができる状態ではないとみられる。習政権OBで最も影響力があった李克強前首相も病気で他界している。新たなスーパー長老の代表格として、温家宝元首相の名前が挙がっている。現役時代から改革派として知られ、胡錦濤前主席の盟友だったからだろう。しかし、中国共産党政権の首相が派閥をつくり、引退後も大きな政治力を発揮した例はない。共産党を中心とする社会主義体制では、政府を率いる首相の政治的実権はあまり大きくないからだ」
現役時代から改革派として知られる温家宝元首相の名前が挙がっている。ただ、副首相が引退後も大きな政治力を発揮した例はない。
(3)「総書記候補の名前は過去のこの種のうわさと変わっていない。習主席失脚が前提であれば、習主席が重用してきた丁副首相や陳書記を後任にするのは、やはり無理だろう。李強首相ら他の習派有力者も同様だ。胡春華前副首相は共産主義青年団(共青団)の先輩である胡錦濤前主席の直系で、かつて共青団派(団派)のエースだったが、2022年の第20回党大会で党指導部の政治局から外されているので、候補にはならない」
胡春華前副首相は、2022年の第20回党大会で党指導部の政治局から外されている。国家主席候補にはならない。
(4)「総書記は通常、党最高幹部の政治局常務委員(現在7人)から選ばれる。1989年の天安門事件で解任された趙紫陽総書記の後任は、長老グループの思惑から常務委員ではなかったが、政治局員(上海市党委書記)だった江沢民氏が抜てきされた。同事件直後の非常事態ですら政治局内で総書記を選んだのに、現状で24人もいる政治局の外で総書記候補を探す理由はないだろう」
現在、24人もいる政治局員以外から国家主席が選ばれる可能性は小さい。
(5)「その後、胡錦濤前主席の復活説まで出てきた。5月14日に政治局拡大会議が習主席の進退について議論し、胡前主席が改革・開放推進を訴える大演説をしたというのだ。政権トップ経験者を引っ張り出して、反習近平勢力に箔(はく)を付けようというわけだが、現実には、胡前主席が健康を回復したことを示す証拠は今のところ全くない」
胡錦濤前主席は、健康上の理由で復帰は困難である。
(6)「ネット上では、党中枢の事務を取り仕切る中央弁公庁による極左批判の通知とされる文書も出回っている。しかし、江沢民時代以降、イデオロギー上の左右を公式に論じることはなく、「極左」という言葉は重要文書で使われていない。また、習主席の側近中の側近である党中央書記局の蔡奇筆頭書記(幹事長に相当)が主任を兼ねる中央弁公庁が、事実上の習主席批判を意味する文書を出すとは思えない」
ネット上では、中央弁公庁が習主席批判を意味する文書を出している形だが、あり得ないことだ。
(7)「以上のように、これまでで最も盛り上がった習主席早期退陣説も、反共もしくは反習の人たちの希望的観測にすぎないようだ。ただ、軍などで習派要人が次々と失脚したり左遷されたりしており、習主席の権力基盤が盤石でなくなっているのは事実。特に中国政局で大きな影響力を持つ軍の政治的大混乱を招いたのは、江・胡時代にはなかった失態である。第21回党大会が慣例通り開かれるとすれば、あと2年半。同大会に向け、習主席4選の可否がこれから本格的に話し合われることになる。習主席が党内政局で早く反転攻勢に出なければ、続投はだんだん難しくなっていくだろう」
習主席の権力基盤が揺れているのは事実である。特に、人民解放軍が政治的大混乱になっている点は、過去になかった失態である。こういうことから、習氏の国家主席4期目が焦点になっている感じだ。


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