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人民元は「未熟通貨」

中国に二次制裁の恐れ

習近平が国を滅ぼすか

米国に「債券自警団」

 

世界の二大経済大国が、そろって財政赤字に苦しんでいる。公的債務残高の対GDP比は、米国がすでに100%を超えている。中国も、26年には100%超えへ陥る。米中が、財政苦境へ落込んでいる理由は、歳入を上回る歳出を行う「放漫財政」の結果だ。問題は、雪だるまのように増える債務残高による金利負担増である。米国は、2024年に国債費が国防費を上回る事態になった。中国も、いずれそのような事態へ突入する。米中は、財政面で「同病相憐れむ」仲間だ。

 

米国トランプ政権は、財政赤字の原因が貿易赤字にあると判断している。そこで、相互関税という悪名高き手法で荒療治を始めた。だが、米国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領の世界的な関税措置を巡り、その多くの部分について違法との判断を下した。トランプ氏にとり大きな打撃である。すぐに控訴した。

 

米国の財政赤字は、過剰な財政支出の「尻」が、貿易赤字を招いている原因である。財政赤字を減らすことが、米国の公的債務残高を減らす道である。こういう「内省的」方法をとらずに、関税を引上げるという安易な方法を選んだ。それが今、米国際貿易裁判所から「ノー」を突きつけられた。

 

中国は、習近平氏が国家主席に就任(2012年)した翌年から、公的債務残高比率がウナギ登りになっている。不動産バブルという一時的好景気でも、賄いきれない財政支出を行っていたのだ。多分、公表しない形での国防費増額を行ったのであろう。中国は現在、不動産バブル崩壊という後遺症に直面している。経済活動は、間違いなく縮小過程へ突入した。デフレ経済下にあるので、名目成長率を押下げるのだ。IMFの最新予測(25年4月)によれば、中国の公的債務残高比率は2030年に116%へ達する。

 

人民元は「未熟通貨」

米中両国は、財政面から大きな制約条件を課されている。ただ、米国は基軸通貨国である。単純に言えば、ドル紙幣を発行すれば膨大な輸入決済も可能な國である。中国は、米国と同じことができないのだ。中国人民元は、未だに資本自由化も行わない「片肺通貨」である。先進国がすべて自由変動相場制へ移行しているなかで、中国だけは管理変動相場制である。国家が為替市場を管理しなければ、資金流出危機を招くという中途半端な通貨なのだ。胸を張って、米国ドルへ対抗できる実力がない通貨である。

 

このように、米ドルと人民元の位置づけは、「太陽と惑星」の関係にある。惑星は、太陽の周りを動く存在である。中国財政は、公的債務比率が増える結果、大きな負担になる。ここで、中国政府は批判の矛先を変えさせる戦略に出てきた。中国の国有企業保有財産を計算すれば、中国は「健全財政」と言い出したのだ。先ず、その言い分を聞いてみよう。

 

中国国務院(内閣)は24年12月、全人代に提出した報告書で、23年末までに公的部門の正味資産は184兆元(約25兆ドル)であり、GDPの136%に達したと明らかにした。中国人民銀(中央銀行)もまた、22年末時点で中国の総額公的資産が、GDPの166%になったと「相槌」を打っている。中国政府と中国人民銀行は、それぞれ保有資産の評価について、GDPの119~136%に達するとしている。

 

中国は、ここで大きな判断ミスを犯している。国有資産を売却すれば、社会主義国家の基盤を失うことだ。国有企業は、中国社会主義国家を支える柱である。資本主義経済国家では、原則として国有企業が存在しない。中国が、資本主義経済と異なるシステムにも関わらず、それと混同する議論を展開した「強弁」は、自己矛盾そのものだ。中国は、ここまで追い込まれているという窮状をさらけ出した。

 

中国には、公的債務残高比率を引下げる具体的な手段があるのか。最大のテコは、名目経済成長率を押上げることだ。だが、現実の経済は不動産バブル後遺症に直面している。大手不動産開発企業の過剰債務は、全く整理縮小できない状況にある。これによって、不動産相場に底入れ感が出ず「軟弱地合」が続く。肝心の住宅購入層である20代後半~30代前半は、就職難で結婚どころでない。さらに悪いことに、非婚化ムードが高まっている。新規住宅在庫はすでに5年分を抱えている。このように、デフレ打開策は皆無なのだ。

 

中国経済が、長期停滞局面入りしていることは議論するまでもない。名目経済成長率は、実質経済成長率を下回る「名実逆転状態」が続くに違いない。不動産バブル崩壊後遺症に加えて、米中冷戦の経済的影響も長く続く情勢になった。

 

中国に二次制裁の恐れ

中国は、ロシアのウクライナ侵攻を支援している。これがどれだけ、西側諸国との関係を悪化させたか。西側諸国は、中ロに対する経済安全保障意識を高めている。中国は、自ら好んでこの危機を招いたのだ。米中関係は、すでに「冷戦状態」である。事実上の「デカップリン」(分断)が始まっている。習近平氏は、プーチン・ロシア大統領との関係強化で、自身の立場強化をねらう「目先の利益」を追求し、習・プーチン「枢軸」を形成した。これが、さらに中国経済を危機に追い込んでいる。(つづく)


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