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世間は、「進次郎流」として政府備蓄米放出を絶賛している。ともかく一週間で「5キロ2000円」の備蓄米が台所へ届いたのだから賞賛の嵐だ。野党党首が批判的コメントを付けると、逆風が吹くという流れになった。農家もコストが回収でき、消費者も満足する米価を実現するにはどうするか。結論は、事実上の「減反政策」を止めて、コメを輸出する体制づくりが求められている。自民党は、この流れに乗って「5年間で2.5兆円」の構造改革計画を石破政権へ提出した。減反政策廃止によって輸出が前提という。変われば変わるものだ。

 

石破茂首相は6月2日の参院予算委員会で、コメの安定供給に関する閣僚会議を立ち上げると表明した。首相をトップとし5日にも初会合を開く方向だ。農業政策に関し食料安全保障の観点から検証を進めていく考えを表明した。林芳正官房長官は2日の記者会見で関係閣僚会議について「まずは米価高騰の要因と今般の対応の検証を行う必要がある」と述べた。「生産性向上を通じた持続的な農業生産によりコメの安定的な供給を実現する」と語った。自民党の提案と呼応した農政改革への狼煙であろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(6月2日付)は、「自民党・森山裕氏『食料安保へ5年で2.5兆円確保を』 石破首相に提言」と題する記事を掲載した。

 

自民党の食料安全保障強化本部は2日、食料の安定的な確保に向け5年で2.5兆円規模の予算を求める決議書を政府に提出した。通常の農林水産予算とは別枠と位置づける。本部長の森山裕幹事長が石破茂首相と小泉進次郎農相にそれぞれ渡した。

 

(1)「農地の大区画化やロボットを活用したスマート農業の導入などを支援する。1.3兆円ほどの国費負担を見込む。森山氏は、「コメを広い農地で耕作できるようにしスマート農業を進めれば、輸出が可能になる」と語った。農林水産省内で記者団の質問に答えた」

 

農水省は、1971年から2017年までの46年、実に半世紀もの間にわたる減反政策によって、生産過剰状態のコメを消費量に合わせて減らし米価を維持してきた。国内の主食用のコメ需要は、人口減を背景に年10万トンペースで減ってきたからだ。農水官僚にとって、減反政策が米価維持の唯一の政策となっていた。自民党は、こういう現在の農政の大転換を決めたのだ。

 

農業を主な職業とする基幹的農業従事者(概数値)は、24年に前年比4%減の111万人で、05年の半数ほどに減っている。このうち、65歳以上の担い手が7割を占めている。今後、後継者不在を理由とした耕作放棄が一気に進む危険性が高まってきた。こういう状況下で、農水省の取っている政策は、ただ「米価を下げたくない」という消極的なもので、これで今後の危機を乗りきれるはずがない。自民党はこの現実をふまえ、農地の大区画化やロボットを活用したスマート農業の導入などを支援するとしている。当然、輸出が可能になる。

 

自民党が、ここまで踏み込めば日本に「農業革命」が起るだろう。総事業費2.5兆円のうち、1.3兆円が国費負担にするという。残り1.2兆円は多分、米価引上げによる消費者負担になるであろう。これは、5キロ玄米でどの程度の値上がりか。いずれ計算される。ただ、消費負担はやむを得ないとしても、現在の5次問屋まである複雑な流通機構を廃止して風通しをよくすることが前提だ。中間マージンで食われている経費(25%)を排除して、生産者と消費者が分け合えば、それほどの負担にはなるまい。

 

自民党の提案は、これまでの「保守頑迷」の農政が、ここまで一挙に変われるのだろうか。7月の参院選を前に「起死回生」という狙いもあろう。理由は何であれ、変革することは歓迎である。

 

今回の米価急騰は、日本農政がこのまま続けば破綻するという悲痛な「シグナル」なのだ。全農が、これに敏感に反応しないで「旧套墨守」では、余りにも能がなさすぎる振舞である。前述の通り、24年の基幹的農業従事者(兼業を除く)111万人のうち、65歳以上の担い手が7割を占めている。農業は「力仕事」だ。70歳を過ぎたら第一線で働くことは不可能にある。こうみると、日本農業はあと5年で「終焉」を迎える。全農には、この面の配慮が全くなかった。会員が減ることは、組織衰退につながるのだ。

 

(2)「森山氏は、野村哲郎元農相が小泉氏について党への根回しがないと苦言を呈したことに言及した。小泉氏の対応について「当然のことをしっかりやっていただいた。本人が農林部会長をしていたので連携は何ら心配していない」と述べた」

 

「令和のコメ騒動」は、自民党政権を吹飛ばすほどの威力を持っている。農水族が、従来感覚でコメ流通を眺めていると、国民の「怨念」で吹飛ばされるほどのマグマになっているのだ。仲間内での縄張り争いをしている状況にない。

 

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2025-05-29メルマガ673号 日本、米不足解消は「簡単!」 生産制限止めて増産へ 輸出視野に「