企業家のイーロン・マスク氏が、米大統領執務室で盛大な送別を受けてからわずか5日後、米予算案を痛烈に非難した。トランプ政権が、1兆ドルを削減しようとする自身の取り組みが法案に反映されかったことも批判しているもの。
マスク氏は、「MAGA(米国を再び偉大に)」運動に加わる候補者への支援を停止する考えを示した。6月3日には、来年の中間選挙で現職共和党議員の落選を促すような発言をしている。こうして、米予算案の成立阻止へ向けて、大きな揺さぶりをかけている。これまで、トランプ氏の片腕になってきたマスク氏が、手のひらを返す姿勢に転じた。
『フィナンシャル・タイムズ』(6月4日付)は、「マスク氏、トランプ大統領の税制法案を痛烈批判」と題する記事を掲載した。
イーロン・マスク氏が、トランプ米大統領が推進する税制法案を「おぞましく、忌まわしいもの」と痛烈に批判した。この発言は、大統領と支援者である億万長者との関係を決定的に損なうおそれがある。
(1)「5月末に唐突にトランプ政権を離れたマスク氏は4日、X(旧ツイッター)への投稿で、この法案を「巨大で、理不尽で、利権まみれの議会歳出法案」とこき下ろした。同氏はさらにこう続けた。「この法案に賛成票を投じた者たちは恥を知れ。自分たちが間違ったことをしたのは分かっているはずだ。分かっているだろう」。マスク氏による強硬な介入は、トランプ氏の「一つの大きく美しい法案(BBB)」が山場を迎える中でのことだった。法案は5月に僅差で米下院を通過したが、成立には上院での承認が必要だ」
米予算案は、米下院で成立しており、上院の審議に委ねられている。マスク氏は、共和党議員へ揺さぶりをかけている。
(2)「トランプ氏は、7月4日を法案可決の期限に定めている。法案は大幅な減税や社会支出の削減、連邦債務の増加を含み、第2次政権の実績を左右し、米経済の行方に重大な影響を及ぼすものだ。この法案に懸念を示す共和党上院議員に対し、トランプ氏は強い圧力をかけている。マスク氏がXに投稿する数時間前、トランプ氏は共和党のランド・ポール上院議員に矛先を向けた。同議員は財政保守派の代表格で、連邦政府の債務上限を5兆ドル(約720兆円)引き上げるという法案の条項に異議を唱えている。「ランド・ポールはBBBをほとんど理解していない。特に、これから起こる素晴らしい成長について」とトランプ氏は4日朝、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿した。「BBBは大きな勝利なのだ!!!」と自画自賛」
トランプ氏は、7月4日を法案可決期限としている。何としても可決させなければならない立場だ。
(3)「上院では、ウィスコンシン州のロン・ジョンソン氏、ユタ州のマイク・リー氏、フロリダ州のリック・スコット氏ら、他の財政保守派の議員も、法案には一層の歳出削減が必要だと主張している。さらに、メーン州のスーザン・コリンズ氏、アラスカ州のリサ・マーカウスキー氏、ミズーリ州のジョシュ・ホーリー氏ら別の共和党上院議員グループは、法案に盛り込まれたメディケイド(低所得者や障害者向けの公的医療保険)の削減案を批判している。上院(定数100)では共和党が53議席を占めており、法案を通すには造反を3人以下に抑える必要がある」
上院共和党から3人の造反者が出れば、否決される。すでに6人の共和党議員が法案へ疑念を出している。きわどいところだ。
(4)「ホワイトハウスのレビット報道官は、マスク氏の発言に関する質問に対し、「大統領はすでに、イーロン・マスク氏がこの法案についてどう考えているかを把握している。それによって大統領の意見が変わることはない」と答えた。「これは『一つの大きく美しい法案』であり、大統領は今の立場を変えるつもりはない」と述べた。だが、今回のマスク氏の介入で、大統領に批判的な共和党議員らが勢いづく可能性がある。ポール氏はXで「我々はもっと良くすることができるし、そうしなければならない」と述べ、マスク氏に同調した。リー氏も「上院はこの法案をより良いものにしなければならない」と応じた」
共和党議員には、マスク氏の意見に賛同する者も出ている。予断を許さない状況だ。
(5)「トランプ政権は3日、マスク氏が率いた歳出削減タスクフォース「政府効率化省(DOGE)」の支持者らの不満を和らげようと、同タスクフォースが特定した一部の削減項目を法制化する案を議会に提示した。対象には、多様性プログラムに関連する契約や、公共ラジオNPRおよび公共放送PBSへの10億ドル超の支出が含まれている。世界一の富豪であるマスク氏は、昨年の大統領選で2億5000万ドル超を献金してトランプ氏を支援した。トランプ大統領本人への批判は控えているが、同氏の政策課題の一部とは距離を置くようになっている」
マスク氏は、昨年の大統領選で2億5000万ドル超を献金した。マスク氏は、トランプ氏へ距離を置くようになっている。
(6)「マスク氏は、「MAGA(米国を再び偉大に)」運動に加わる候補者への支援を停止する考えも示しており、3日には来年の中間選挙で現職共和党議員の落選を促すような発言をした。マスク氏は、ホワイトハウスへの関与が自身の事業に「反発」を招いたと述べている。特にテスラでは欧州での販売が落ち込んでいる。マスク氏は、1日に放送された米CBSニュースのインタビューで、トランプ氏を公然と批判したくはない一方で、「この政権がやっていることすべてに責任を負いたくもない」と語り、「板挟みの状況にある」と明かした。3日のXへの投稿で、マスク氏はトランプ氏の法案についてこう書いた。「申し訳ないが、もう我慢できない」と強調」
マスク氏は、予算案阻止へ向けて行動を始めている。献金停止や落選運動を行うという過激ぶりだ。


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