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米中首脳の電話会談で、暗礁に乗りかけていた両国関係に明るい灯が灯った。中国が、米国の要求したレアアース輸出を認めたからだ。あれだけ強硬姿勢の中国が、なぜ折れたのか。二つの要因がある。一つは、4~6月期GDPが、対米輸出の落込みで急速な悪化に見舞われる。もう一つは、米国のロシア制裁として原油と天然ガス購入国へ「二次制裁」を課すとの法案が審議中である。中国は、二次制裁の対象になり500%関税と金融制裁が待っている。こういう事態になれば、中国経済は完全に干し上がる。習近平氏が、とりあえず矛を収めた理由であろう。米国は、「中国を刺戟することを控える」としている。

 

『ブルームバーグ』(6月7日付)は、「トランプ氏との電話に応じた習氏、半導体や関税巡る攻防に勝算見込む」と題する記事を掲載した。

 

中国の習近平国家主席は、5日にトランプ米大統領との電話会談を受け入れた。今回の関係リセットにより、関税引き下げや輸出規制の緩和など、今後数週間から数カ月で具体的な成果につながると踏んでいるようだ。だが、習氏がその成果を得られるかどうかは、米国で対中姿勢を巡って内部に温度差が存在し、予測不可能なトランプ政権次第だ。

 

(1)「トランプ氏は電話会談で、レアアース(希土類)磁石の輸出再開の約束を取り付け、自分が望んでいた成果を得たと述べた。習氏がその見返りに何を得たかは、米国のさらなる制裁措置の凍結以外、あまり明らかになっていない。中国にとって重要な、中国人留学生の受け入れについて米国の保証は得たが、習氏がトランプ氏を数カ月も待たせた理由の説明になるほどの成果ではない」

 

中国が唯一の対米対抗手段は、レアアース輸出禁止である。だが、米国がそれを上回る対抗手段を振りかざせば、今回のように腰砕けになる。これは、中国の将来にとって深刻な事態を予告した。米国が、レアアース問題を解決すれば「無敵」状態になるのだ。中国は、そういう根本的弱点をさらけ出した。

 

(2)「米国にとっての最大の緊急課題は、電気自動車(EV)や防衛システムに不可欠なレアアース磁石の不足だ。ジュネーブ会談後、米国側はこうした資源の供給を確保したと信じていた。だが、中国は輸出ライセンス制度を維持し、米国への輸出業者も他の国と同様に申請が必要だと表明して、米側を失望させた。一方の中国も、華為技術(ファーウェイ)の人工知能(AI)半導体使用に対する制裁措置や、半導体設計用ソフトウエアや航空機エンジンの対中輸出規制、さらに28万人を超える中国人留学生へのビザ制限に対し、裏切られたと感じていた」

 

米国は、中国へAI半導体・半導体設計用ソフトウエア・航空機エンジン・留学生受入れなどの点で扉を閉じれば、中国が干し上がることを知った。先端分野で、中国が米国に逆立ちしても敵わない現実を露見したのだ。

 

(3)「習氏はレアアースの輸出規制によって力を誇示したものの、交渉の席に着く理由もある。モルガン・スタンレーのロビン・シン氏率いるエコノミストによれば、中国経済は4~6月期(第2四半期)に急減速し、年後半にかけて圧力が強まると予想されている。アジア・グループの中国担当ディレクター、ハン・リン氏は「現在、中国は『米国に対して強硬姿勢を貫くという政治的原則』から『引き続きぜい弱な経済を支える現実主義』に傾いている」と指摘し、中国側も緊張を緩和したがっているとの見方を示した」

 

中国にとって、対米輸出の扉が閉まることは一大事である。それにもかかわらず、大言壮語して憚らないのだ。今少し、円滑に運べる外交手段を学ぶべきだろう。

 

(4)習氏の前には、今後さらなる進展が起こることを示す要素が複数ある。ラトニック商務長官がジュネーブでの次回貿易協議に加わることは、トランプ氏が対中技術規制の一部を撤回する可能性を検討していることを示唆している。両首脳はまた、相互に訪問を招請した。実現すれば、貿易、輸出管理、人的交流など、複雑な問題に関する合意を通じて、関係安定化に向けた勢いを加速させる機会となる。トランプ氏はメラニア夫人も同行すると述べ、訪問に前向きな態度を示した」

 

米中両首脳の相手国訪問は、単なる「外交ショー」である。基本的に、相手国の立場を認め合わないポリシーを持っている以上、成果は上がらないはずだ。

 

(5)「一部のアナリストは、主題である貿易問題に関する詳細が不明確な点を指摘し、過度に楽観的になるべきではないと警鐘を鳴らしている。元香港米国総領事で、アジア・グループパートナーのカート・トン氏は「交渉が進む中でも、双方が追加の否定的な措置の実施を防ぐような、より深い合意はないようだ」と述べた。スタンフォード大学の中国研究プロジェクト「デジチャイナ」を率いるグラハム・ウェブスター氏は、「トランプ氏が、今後のさらなる交渉に関する展望を持ち、また、それを突然放棄しないと見込むのは賢明ではない」と述べた」

 

トランプ政権は、中国を「共産中国」と呼んでいる。共産主義に支配された中国という意味である。「軽蔑」と「警戒」の念を込めている。この状態で、外交成果を期待するのが無理というものだ。