韓国は、3年ぶりに新政権を迎える。経済政策への期待感があってもいいものの、サッパリ盛り上がりをみせないのはなぜか。地域通貨とか国民への現金配りなど「陳腐なこと」を並び立てているからだ。李大統領は、権力を握ることが目的であり、政策立案まで行う余裕もなかったのであろう。これから、ぶっつけ本番で「怪しい」政策が出てくるであろう。韓国経済は、救われないであろう。
『中央日報』(6月4日付)は、「韓国新政府に望む経済政策方向」と題するコラムを掲載した。筆者は、パク・ソンヨン/東国(トングク)大学経済学科教授である。
韓国経済は現在、景気鈍化と構造的低成長の二重局面に進もうとしている。教科書的に見るなら、短期的には総需要管理政策を通じて沈滞を緩和し、長期的には構造改革を通じて成長潜在力と資源配分の効率性を高めなければならない。
(1)「『IMF通貨危機』以後約20年間、韓国経済は定石的アプローチというよりは主に短期的景気浮揚に頼って危機を克服してきた。正しい体質改善をせずとも経済が一定水準を維持できた背景には外生的好運があった。特に2001年中国の世界貿易機関(WTO)加入以降、対中国輸出が総需要を強く牽引(けんいん)して構造改革の必要性が一時的に遮られた」
韓国は、目先の成長率引上げだけを目指した財政支出拡大策に溺れると、財政赤字を拡大するだけで効果は少ない結果に陥る。それよりも、技術開発や構造改革に結びつく制度改革が必要である。だが、既得権益へしがみつく欲求が極めて強く、抜本改革を阻止されるであろう。
(2)「もうその幸運も有効期間がほぼ尽きようとしている。国内外の主要機関が今年経済成長見通しを0.8%前後と見積もっているのは、一時的な衝撃の結果と見るよりは外生的な助けがない今、韓国経済の実際の体力を示す信号だと受け止めなくてはならない。実際の体力が急激に落ちた理由は、これまで短期浮揚策によって建設投資と信用拡大を鎮痛剤を打つように使い続けてきたためだ。その結果、我々が向き合った現実は家計負債の累増、消費余力の減少、首都圏の不動産価格の暴騰、住居費の負担増大と結婚・出産忌避、深刻化する両極化だ」
韓国はこれまで、短期浮揚策によってインフラ投資と金融緩和政策に頼ってきた。それが、慢性的な不動産値上がりを招いてきた。これが、国民に投機期待心理を植え付けた。
(3)「近視眼的な短期浮揚が、かえって成長潜在力をむしばむ結果につながった。韓国銀行によると、不動産貸付残高は約1933兆ウォン(約203兆円)で民間信用全体の半分に相当する。2014年以降、毎年100兆ウォン以上増加し、2013年末に比べて2.3倍に増えた。10年間、毎年100兆ウォンずつ制限された市場にお金を注ぎ込んでいる。不動産価格が暴騰するのは当然だ」
不動産貸付残高は、民間信用全体の半分にも達している。国民は、借金して不動産投機してきたのが真相だ。ここまで、住宅取得にのめり込んだ理由は何か。結果的に、不動産取得が利益を上げてきたからだ。住宅取得が、税制的にメリットになる仕組みを残しているに違いない。文政権時に、不動産バブルを促進させた余韻が続いているのだ。文政権は、政府統計すら改ざんして不動産投機を隠蔽してきたほどである。
(4)「不動産価格が落ちる時が来たという専門家の予測が出るたびに繰り返して登場する不動産浮揚政策、金融規制緩和、政策金融と保証供給のおかげで我々は不動産が最も良い投資という経験的信念を持つようになった。すでに市場では、追加的な利下げと補正予算に対する期待感、過去の進歩政権で経験した不動産急騰に対する学習効果、借入最終列車心理まで加わり、不動産価格が不安に揺らいでいるという事実だ。
ユン政権も、結果的に不動産浮揚政策に手を貸してきた。中途半端な形の金融緩和が、不動産投機の「火種」を残すと指摘されたが、金融緩和要求の強い声に押されてしまった。バブルの芽を残したのだ。
(5)「新政府が選ぶべき経済政策方向は教科書的に明らかだ。第一に、過去の失敗を繰り返さない。すなわち、信用拡大と建設景気浮揚を通した鎮痛剤式総需要管理政策を止める。地方だからといって住宅担保ローンの規制を緩和してはいけない。第二に、補正予算は脆弱階層と自営業者支援と共に、生産性向上と構造転換のための戦略的投資につながらなければならない。支出の量ではなく質が成長を決定する。第三に、企業家精神を盛り立てるために規制環境を革新しなければならない。金融を緩めるのではなく、規制を解くことが今最も急がれる」
このパラグラフは、極めて重要な点を指摘している。李政権が、過去と同じ過ちに陥りやすいからだ。李大統領はすでに、国民へのバラマキを示唆している。国民へ直接、現金を支給するようなアドバルーン挙げてきたからだ。やるべきことは、労組の抵抗を排除してでも、年功序列賃金と終身雇用制を廃棄する決意を示すことだ。多分、労組へ迎合姿勢をみせるだろう。労組の協力支援によって大統領へ就任できたしがらみが、改革を阻止させるはずだ。
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