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米価を下げるには、増産が最大の条件になる。年々10万トンも需要が減少する中で、政策としては増産どころか「減産」が優先されてきた。これが、日本農政の現状だ。こうした減反政策のもたらした今回のコメ不足の発生で、コメ輸出を前提にする「増産」が、コメ不足の解消になるという結論になった。今後は、攻めの農政へ転換する。

 

コメの増産=輸出には、大企業で組織する経団連が窓口にならなければ効果があがらない。農相は、経団連へ協力を求めて「コメ輸出」へ向けた基盤作りに取組む。

 

『日本経済新聞 電子版』(6月9日付)は、「小泉農相、コメ輸出促進で経団連と協力 海外需要開拓で増産地ならし」と題する記事を掲載した。

 

小泉進次郎農相は、コメの輸出促進に向けて経団連に協力を要請する。官民一体で海外の需要を開拓することで、コメを増産しやすい環境を整える。不測のコメ不足や米価の高騰を招いた内向きの農政からの脱却を急ぐ。

 

(1)「すでに経団連の十倉雅和名誉会長らに協力を打診し、内諾を得た。近く都内で経団連の農業活性化委員会との会合を開く。小泉氏はこのほど日本経済新聞のインタビューで「日本は需要が間違いなく減るので世界のマーケットをとっていく」と述べ、輸出体制の強化を掲げた。JAグループの取り組みは不十分だと唱え「金融機関や商社などの経済界の協力をいただきたい」とも話していた」

 

コメ輸出は、「オール日本」で取組まなければ効果が上がらない。日本企業の海外進出ルートを辿るなど、開拓方法はいくらでもあるはずだ。これまで、「コメ輸出」で大きな成果が出なかったのは、努力不足が理由であろう。

 

(2)「足元の米価の高騰は、従来の農政のひずみをあらわにした。価格の下落を防ぐために生産調整を続けてきた結果として供給力が衰え、コメ不足に対応できなくなっている懸念がある。経団連の農業活性化委はコマツの小川啓之会長、みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長、キリンホールディングスの磯崎功典会長の3人が委員長を務める。小川氏と木原氏は5月から経団連の副会長も担っている」

  

経団連には、農業活性化委員会が存在する。こういう組織がありながら、JAとの協議が軌道に乗らなかったのは、コメ問題が今回のような「国民的課題」にならなかった結果であろう。コメ不足が、社会的騒ぎになることにより、国民の意識が一つにまとまりつつある。「雨降って地固まる」という方向へ進むことを願いたい。

 

(3)「経団連は、2024年12月にまとめた提言で「農業の成長産業化を進める上で輸出の強化は必須だ」と記し、官民連携の必要性を説いた。コメ価格高騰の原因を究明し「コメ政策のあり方を従前以上に多面的に検討する」よう促してもいた」

 

経団連は2012年以降、農業の成長産業化を掲げてきた。農水省が、コメ輸出で経団連と組むのは当然と指摘されている。経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」は、早くからこの「コメ輸出路線」を提唱してきた。すでに、政府も積極的な「コメ輸出」計画を立てている。

 

『日本経済新聞 電子版』(4月11日付)は、「コメ輸出の目標、30年に8倍 農業基本計画を改定」と題する記事を掲載した。

 

政府は11日、中長期の農政指針となる「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。

 

(4)「コメの輸出目標について2030年までに35万トンとする目標を掲げた。24年実績(4.6万トン)の8倍近くに引き上げる。輸出拡大を通じて国内のコメの生産量を増やし、農家の生産基盤の強化や生産性の向上につなげる。農産品全体の30年までの輸出額目標は5兆円を据え置いた。コメやパックご飯などの輸出額は、24年の136億円から30年に922億円に引き上げることを目指す。輸入に依存する小麦と大豆の生産量は、それぞれ109万トンから137万トン、26万トンから39万トンに増やす。食料自給率は現状の38%から45%を目指す」

 

コメの輸出目標が、2030年までに30万トンと24年比で8倍近い大幅な増加目標を立てた。これは、日本農政がコメ増産へ転換する象徴である。歓迎すべきことだ。こうして、食料自給率が現状の38%から45%を目指すとしている。攻めの農政である。

 

(5)「江藤拓農相は11日の閣議後記者会見で「食料システムの関係者や団体間の相互理解と連携が重要だ。15ヘクタール以上の生産基盤がないと、コメ価格も一定以上には下がらない。目標の達成へ責任感をもって農政を展開しなければいけない」と述べた。全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長は、10日の定例記者会見で基本計画について「目標達成に向けて着実に自給率を向上することが何より重要だ。前向きに取り組んでいきたい」と述べた」

 

コメの輸出には、生産コストの引下げが前提になる。それには、圃場面積が、一カ所15ヘクタール以上を必要とする。当然、農地の集約化が前提だ。農家の跡継ぎ問題が厳しくなっている現在、単一経営へとまとめることで労働力不足を解消できるメリットがある。JAも、こうした政府の方針に協力する姿勢である。