テスラのイーロン・マスク氏は、一時的な気迷いからトランプ米大統領と「舌戦」を繰り広げ、株価が急落する打撃を被った。マスク氏はその後、話題のSNSを削除して、トランプ氏との和解を試みているとみられる。マスク氏の実父は、「息子の負け」とみるなど形勢は不利である。
マスク氏は、新たに足下からテスラの将来性を覆すような「離脱」が起った。テスラが、EV(電気自動車)よりも期待をつないでいる「人型ロボット」(オプティマス)プログラムの責任者が退社するとの、衝撃情報が明らかになった。マスク氏が、株主への説明でもEVよりも人型ロボットの将来性を滔々と語ってきた「期待の星」である。そのプログラム責任者が退社とは、衝撃的だ。
『ブルームバーグ』(6月9日付)は、「テスラ、人型ロボット『オプティマス』プログラム責任者が退社」と題する記事を掲載した。
米電気自動車(EV)メーカー、テスラの人型ロボット「オプティマス」プログラムの責任者が退社すると、事情に詳しい関係者1人が明らかにした。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が将来の事業の重要部分と位置付けるオプティマス事業に不透明感が増している。
(1)「非公開情報だとして関係者が匿名で語ったところでは、オプティマスのエンジニア責任者ミラン・コバック氏は6日、直ちに退社すると同僚に伝えた。後任は、テスラの運転支援機能「オートパイロット」チームを率いるアショク・エルスワミ氏が務めるという。コバック氏はその後、X(旧ツイッター)への投稿で退社を認め、人生で「最も難しい決断だった」と指摘。家族と共に過ごす時間を増やしたいためだと説明した。同氏は、「マスク氏とチームに対する私の支持は揺るぎないものだ」としている」
オプティマスのエンジニア責任者ミラン・コバック氏が、テスラを退社した。これは、これから量産体制に入ろうという矢先だけに、大きな痛手となろう。
(2)「マスク氏は、2日のソーシャルメディアへの投稿でコバック、エルスワミ両氏について、テスラの人工知能(AI)事業における「2人のキーパーソン」であり、創業当初からこの分野に携わってきたと評していた。従来のEV事業が困難に直面する中、マスク氏はAIや自動運転車と並び、ロボティクス事業にテスラの未来を託している。需要低迷に加え、マスク氏の政治活動に対する消費者の反発で、主要市場におけるテスラ車の販売は急減。マスク氏とトランプ米大統領の関係悪化で、規制面を含む同社のリスクはさらに高まっている」
EVでは、マスク氏のトランプ支援で環境派が離脱してしまった。また、マスク氏の過激な発言でトランプ支持者も怒らせるという「ダブル・ミス」を冒している。それだけに、政治的に無色の「人型ロボット」への期待がかかっていた。
(3)「テスラの最新の決算発表で、マスク氏は年末までに自社施設でオプティマスのロボット数千台が稼働するようになると予測。また、2030年までに年間数百万台の生産が可能になるとの見通しを示していた」
テスラは9日、アナリスト2人から投資判断を引き下げられた。先週のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)とトランプ大統領の衝突を受け、ウォール街では同社の先行きに対する懸念が強まっている。
ア-ガス・リサーチとベアードはテスラの投資判断を「ホールド」(中立)相当に引き下げた。これにより、テスラがアナリストの間で「屈指の不人気な大型株」であることが改めて浮き彫りとなった。テスラ株は一時、4.5%下落した。こうしてテスラ株は、年初来では約27%下落した。いわゆる、「マグニフィセント・セブン」(IT7社)のうち、パフォーマンスが最も悪い部類へ転落した。マスク氏が、積極的に支援したトランプ氏の大統領選勝利を受け株価は上昇したが、昨年12月のピークからは40%近く下げている。
今回の2社による投資判断引き下げは、テスラがウォール街で最も懐疑的に見られている大型企業であることを浮き彫りにしている。ブルームバーグが追跡するアナリストのうち、「買い」を推奨しているのは半数未満にとどまっており、大型株の中でも最も低い比率となっている。現在の投資判断はテスラ「買い」が30社、「ホールド」(中立)が18社、「売り」が13社となった。テスラ株は、目標価格の平均に近い水準で推移しており、アナリストが株価回復を見込んでいないことを示している。以上、『ブルームバーグ』(6月9日付)が報じた。
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