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数ヶ月先に不安高まる

地に墜ちた三種の神器

不思議な国際調停院?

幻の社会主義経済終焉

 

中国経済は現在、トランプ関税によって確実に締め上げられている。米国発注者が、関税分の値下げを求めているからだ。中小企業・零細企業の労働集約型製品にそれが顕著である。これまで、米国への輸出専業で生きてきた業者は、他に転換する市場もなく悲劇的な事態に陥っている。

 

国内需要に振り向けたくても、対米輸出に比べて出荷単位が余りにも小さい上に、支払条件が守られないなど問題山積である。中国の労働集約型製品は、米国市場に特化しすぎ方向転換が不可能になっている。トランプ関税が、企業経営の屋台骨を揺るがせているのだ。

 

こうした中で、中国政府はレアアース(希土類)の輸出規制によって西側諸国をてんてこ舞いさせている。一見、中国の強みを発揮している印象だ。「中国強し」というイメージをつくっているが、これは「弱さ」の象徴でもある。これ以外に、米国をたじろがせる武器がないのだ。「中国特有」の技術がない結果である。急成長した中国経済の武器は、低賃金による労働集約型製品だけだ。自国開発による技術集約型製品を持たない弱点が今、100%中国を襲っている。これが、中国危機の本質である。

 

危機の具体的現象は、次のような形で現れている。失業による社会不安、過剰生産による国内デフレ、欧米や中南米諸国で反ダンピング(不当廉売)関税を引き起こしている非効率企業の未整理。こういう「多重債務」状況に陥っている。どこから手をつけるべきか、お手上げである。

 

これら難問は直接的に言えば、トランプ関税によって誘発されたものである。だが、これまで中国経済を苦しめてきた不動産バブル崩壊後遺症が「根雪」として横たわっている。この上に、トランプ関税が大きくのしかかった形だ。中国は、「ダブル・ショック」下にある。この重大危機を乗切る具体的手法がない。そこで、苦し紛れに「自国顕示欲」の振舞をみせ始め、国民を暗示にかけようという戦略に手をつけている。

 

習近平国家主席は、「中華民族再興」を持出して、国民に経済の傷を忘れさせなければならない局面へ落込んでいる。今の苦しみを耐えれば、中国が世界一になるという幻想を持たせることが必要になったのだ。

 

一つは、国際調停院という「国際司法機関」まがいのものをつくりだした。中国が、世界の司法秩序を塗り替えるという妄想をまきちらす目的だ。もう一つは、中国軍機が海上自衛隊機へ異常接近する違法行為をさせることで、「強い中国軍」というイメージづくりを始めている。中国軍は、日清戦争と日中戦争によって旧日本軍へトラウマを抱えている。これを払拭させるべく、危険行為である異常接近によって強さの演出を始めた。極めて危険な火遊び行為である。

 

数ヶ月先に不安高まる

米国は、世界中へ高い関税を課していることから消費者物価へ跳ね返るとみられてきた。だが、5月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.4%上昇し、4月の2.3%からやや加速した程度で落ち着いている。この背景は何か。輸出側が、輸出価格を引下げて米関税分を負担していることだ。日本の例でもそれが顕著である。

 

日本の自動車の輸出価格は、北米向けが4月から急落し、5月は3月に比べて17.%下落している。北米以外の下げ幅は、0.%にとどまる。これは、過去10年間では突出した動きで、米国関税への対応であることを示唆している。競争力の最も高いとされる日本製自動車でも、関税を負担させられている。この事例から言えば、中国製品の対米値引きが大幅であろうことを窺わせる。

 

中国製品の対米輸出では、中小企業・零細企業が軒並み苦境に立たされている。その実態をみておきたい。『ロイター』(6月13日付)が報じた。

 

米国の中国製品に対する関税率は、昨年に比べて30%ポイントも高い。関税が最高水準に達した4月、赤字の中国製造業企業数は、全体の32%を占めたことが公式統計で分かっている。赤字経営は、労働者の解雇を生むリスクを抱える。

 

米中が5月にジュネーブでの協議前、家具や玩具など労働集約型の企業が、破綻を回避すべく四苦八苦していた。その後の関税緩和により、大量解雇というリスクは減ったものの、なお数百万人の雇用が脅かされていると指摘されている。

 

英銀大手スタンダード・チャータードは、中国経済が先の金利引き下げで、表面的には持ちこたえられるとしても、数カ月先に中国政府は一段と不安を感じるようになると警告している。風前の灯火と指摘するのだ。香港大学のジウ・チェン教授は、「この状況が3、4カ月以上続くなら、不況下の中小企業の大半は持ちこたえられないだろう」と悲観的立場である。中国経済は、極めて厳しい局面にさしかかっている。

 

大企業でも難題が持ち上がっている。中国政府は、企業が買掛金や支払手形を駆使して、取引先への支払を意図的に遅らせている実態へメスを入れたのだ。EV(電気自動車)産業を手始めに、サプライヤーへの支払期間を60日以内にするよう指示した。大企業は、支払を遅らせて金利負担を軽減させ、資金繰り対策を楽にしてきたのだ。(つづく)

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