トランプ米大統領は21日、イランの核施設3カ所に空爆を行い、イスラエルによるイランへの攻撃に直接参加する前代未聞の決断を下した。アナリストらは、米国の攻撃参加を受けてイランが取り得る報復措置として、世界で最も重要な原油の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖、中東地域の米国や同盟国の軍事基地攻撃、イスラエルへのミサイル攻撃強化、世界各地の米国やイスラエルの関連機関に対する親イラン組織の攻撃などを挙げる。
一方、国内では2022年に起った民衆デモ蜂起による政権打倒への「残り火」が再び、燃えさかるリスクが残っている。政権のアキレス腱は、民衆の不信感の盛り上がりだ。イラン国民の長年の鬱積した不満も無視できないであろう。
『ロイター』(6月22日付)は、「トランプ氏のイラン攻撃は『最大の賭け』、リスクも未知数」と題する記事を掲載した。
民主党政権と共和党政権で中東交渉を担当したアーロン・デービッド・ミラー氏は、イランの軍事力はかなり弱体化したが、「彼らにはあらゆる非対称的な手段で対抗できる。これはすぐには終わらないだろう」と懸念する。
(1)「ホワイトハウス高官によると、トランプ氏はイランが核合意をまとめる気がないと確信し、核施設への攻撃が「正しいこと」だと判断し、「成功の可能性が高い」と確信した上でゴーサインを出したという。今回の攻撃ではナタンズ、イスファハン、フォルドゥの3施設に地中貫通弾(バンカーバスター)を投下。トランプ氏は「大成功」を収めたと表明した。それでも一部の専門家は、イランの核開発計画が何年も後退した可能性はあるが、脅威は依然として解消されていない可能性があると指摘する」
イランは、神政国家である。信仰が支配する國だ。およそ信仰の自由とはかけ離れている。このことに不満を持つ国民もいる。2022年の長期デモがそれを表している。国民を忘れて、イラン政権側の論理だけで今後の推移を読み解くことは危険だろう。
(2)「超党派団体、米軍備管理協会は今回の軍事行動を受け、イランが核兵器は抑止力として必要で、米国は外交に関心がないと判断する可能性が高いと指摘。「軍事攻撃だけでは、イランの幅広い核に関する知見を破壊できない。攻撃はイランの核開発計画を後退させるだろうが、その代償として核活動を再開するというイランの決意を強めることになる」と述べた。フロリダ国際大学のエリック・ロブ助教は、イランの次の動きはなお未知数だと述べ、報復措置の一つとして、地域内外における米国とイスラエルの「ソフトターゲット」への攻撃も考えられると予想。一方で、弱い立場に追い込まれるが、イランが交渉のテーブルに復帰する可能性もあると述べた」
イラン国内で政権への不満が昂じて、反政府運動に火がつけば、イランは交渉のテーブルに着くだろう。ポイントは、民衆の動きだ。
(3)「イラン外務省は22日未明に声明を発表し、「米国の軍事的侵略に全力で抵抗することは権利であると考える」と警告した。カーネギー国際平和財団のアナリスト、カリム・サジャドプール氏は、「トランプ氏は今こそ平和の時だと述べた。イランが同じように見るかどうかは不明で、可能性も低い。これは(過去)46年にわたる米国とイランの戦争を終わらせるというより、新たな章を開く可能性が高い」とXに投稿した」
イラン政府が、ロシアや中国の支援を受けて米国と長期対決に踏み切るか。これは、今後の動きを占う意味で重要なポイントになる。
(4)「一部のアナリストによると、これまでイラン指導部を排除するという狙いを否定してきたトランプ政権だが、イランが大規模な報復攻撃を行ったり、核兵器製造の動きを見せれば、「レジーム・チェンジ(体制転換)」を求めざるを得なくなる可能性もある。ただ、さらなるリスクをもたらす恐れがある。ワシントンのジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院の中東アナリスト、ローラ・ブルーメンフェルド氏は、「体制転換や民主化運動を狙ったミッションの拡大には注意する必要がある」とし、米国はこれまで中東でそうした取り組みに失敗を重ねてきたと指摘する」
イラン問題は、最終的に「レジーム・チェンジ」に行き着かない限り、解決策はないであろう。その場合、イラン国民がどう動くかだ。
(5)「米国家情報会議の中東担当副国家情報官を務めたジョナサン・パニコフ氏は、イラン指導部は体制存続が危うくなれば、直ちに「不均衡な攻撃」に出るだろうと予想するが、その結果も留意する必要があると述べた。ホルムズ海峡の封鎖は、結果として生じる原油価格上昇や米国のインフレ高進によってトランプ氏に問題をもたらすが、イランの数少ない同盟国の中国にも打撃を与える。また、トランプ氏はすでに議会民主党からイラン攻撃を巡り強い反発に直面しているほか、他国への介入を好まない岩盤支持層の米国第一主義運動「MAGA」派からの反発にも対処する必要がある」
イランが、世界中でゲリラ活動に手を染めれば、その時点でイラン政府の正統性が失われる。国連から追放されるであろう。イラン政府は、感情にまかせた動きをすれば、自分の立場を弱めるだけというリスクを抱える。
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