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バブルから復活遂げる奇蹟へ

科学の国・ドイツも日本詣で

量子コンピュータ実用化段階

日本は成長力取戻し再離陸へ

 

2025年は、量子力学が発見されて100年になる。我々にとって、馴染みの深いニュートン力学に代る位置づけだ。その量子技術が、これから現実世界で応用される時代を迎える。これだけでも今後の「技術世界」は、大変革時代を迎えることが理解できるであろう。日本が、ここで躓いたら永久に落伍する。負けられない大技術競争時代へ突入した。政府が、2025年を「量子元年」として実用化の先鞭を切ると宣言した理由である。

 

量子技術は、量子コンピュータによって実用化される。量子力学の原理を用いた新世代のコンピュータであり、「量子ビット」と呼ばれる情報の最小単位を使用する。これまでのニュートン力学の情報単位は、「ビット」(0か1)と呼ばれている。一方の「量子ビット」では、「0と1の両方を兼ねる」という複雑な構造になる。それだけ、計算速度が速くなるので、現在のスパンコン(スーパーコンピュータ)を何百倍も上回る速度で計算できる「怪物」である。

 

この怪物を早く飼い慣らした国と企業が、世界競争で勝利を収められるので今後、熾烈な「戦い」が演じられる。日本は、理研(理化学研究所)が2023年に試作機を発表している。現在は、理研と富士通が共同で、超伝導量子コンピュータの本体製造に着手した。日立製作所は、単独でシリコン量子コンピュータ開発に取組んでいる。

 

こうして日本では、理研・富士通と日立製作所の2グループが量子コンピュータ本体の製作に取組んでおり、かつての高度経済成長時代のメインフレーム(大型コンピュータ)競争を彷彿とさせる熱気を孕んだ状況だ。日本企業が、30年の雌伏期を経て世界と真っ正面から競争するまでになったのだ。将来への自信を示す象徴的な動きであろう。

 

バブルから復活遂げる奇蹟

世界のバブル経済史において、バブルを破綻させた国の経済が再び復活したのは、1929年の世界恐慌を引き起した米国のみである。オランダや英国は、ついに復活することはなかった。この伝で言えば、平成バブル(1990年)で崩壊した日本経済の復活の可能性も低かったはずである。だが、こういう杞憂を吹飛ばし始めたのは「日本技術の黎明」である。それは、量子技術だけではない。次のように、多くの企業が申し合わせたように新技術開発に成功したのだ。

 

1)トヨタ自動車の全固体電池

2)国策半導体ラピダスの「2ナノ」(試作中)

3)NTTの次世代通信網「IOWN」(アイオン)

4)曲がる電池「ペロブスカイト」

5)南鳥島深海(6000メートル)のレアアース(希土類)採掘技術

 

きら星のごとき世界をリードする技術が今、一斉に登場している。これらは、決して偶然の結果ではなく、その基盤になった日本の社会的土壌の存在に気づかねばならない。この基盤が失われない限り、日本に世界をリードする技術が生まれ続けることを期待させる。

 

日本が、新技術を生み出す社会基盤を有することは、何を持って証拠づけるのか。それは、日本社会が「中庸」を保っていることに表れている。中庸とは文字通り、思考において極端な右にも左にも偏らないという意味である。この冷静さによって、日本社会が「失われた30年」と揶揄されながらも、内に秘めた「中庸」によって前述のような技術開発を成し遂げた、その背景であろう。決して既得権益にしがみ付かず、新規分野の技術開発を怠らなかったのだ。

 

中庸とは、「節制」や「慎み」の精神であろう。これが、右へ左へと極端に走らせる行動の抑制に繋がっている。実は、この節制や慎みこそが、日本の「武士道精神」と深くかかわっている。困難の中で耐え忍びながら、信頼を守り未来を切り開く姿勢を表しているのだ。日本企業は、この歴史的な文化遺産を受け継いでいる。

 

明治維新で、武士は特権階級としての地位を失い、教師や巡査となって庶民とともに生活して、新しい時代を切り開いた。明治の庶民の知的水準を押上げる役割を担ったのである。これは、「失われた30年」において、日本企業が取ったビヘイビアと極めてよく似ていると言えよう。

 

企業は、低成長下で経営リスクの最小化を優先させた。結果として、それが内部留保の増加をもたらし、賃金引上げや設備投資増加に結びつかなかったというマイナス面は隠せない。ただこの裏には、日本経済の期待成長率が低かったという動かしがたい事実もある。ともかく、企業はこういう最悪な環境下で何をしていたか。惰眠を貪ることなくひたする、新技術の開発に努めていた。それが今、一斉に花開き始めている。

 

武士道精神は、12世紀末からの鎌倉時代に始まる。これが、社会のみえざる規範になっていたことは否定し難い事実だ。武士道精神とは、新渡戸稲造によれば「義」や「誠実」といった価値観を重視する。これは技術開発に通じるもので、技術者や研究者が社会に信頼を築く上で重要な倫理的基盤となっている。大袈裟な表現でなく、技術者や研究者は現代の「侍」とも言える矜持を身につけている。この精神性が、世界を動かす新技術開発で実を結んだと言えるだろう。将来も、こうした文化遺産は保持され続けられるに違いない。(つづく)

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