テイカカズラ
   

トランプ米大統領は、B2爆撃機によるイランの核施設への攻撃を命じたことで、軍事力行使に消極的な従来の姿勢を転換したのか。直接攻撃は、トランプ氏がこれまで避けてきただけに、「実力行使」によって外交成果をあげられるか、議論されているのだ。つまり、「トランプ・ドクトリン」による力による紛争解決策か、または「直感外交」か、という視点での議論である。

 

『ロイター』(6月26日付)は、「イラン攻撃、決断の背後に『トランプ・ドクトリン』」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領はB2爆撃機によるイランの核施設への攻撃を命じたことで、軍事力行使に消極的な従来の姿勢を転換し、米を直接的に外国の戦争に巻き込み、「米国第一主義」の支持者の多くを憂慮させた。

 

(1)「バンス副大統領によれば、トランプ氏の決断の背景にある考え方には名前がある。それは「トランプ・ドクトリン」だ。バンス氏による24日の説明では、まずは米国の明確な利益を明示して外交で問題を解決しようとし、失敗した場合には「圧倒的な軍事力で解決し、紛争が長期化する前にそこから抜け出す」というものだ」

 

バンス米副大統領によれば、「トランプ・ドクトリン」の発動としている。米国の国益を守るためには、外交で成果が上がらなければ、圧倒的な軍事力で解決し、紛争が長期化する前にそこから抜け出す、というもの。しかし、最後まで当事者としてかかわらず、中途で「抜け出す」としている。こんなに都合良く、逃げられるだろうか。

 

(2)「一部の専門家らはこの方針について、しばしば予測不可能で一貫性のない外交政策を説明する手段ではないかとみている。カーネギー国際平和財団の上級研究員で、中東アナリストのアーロン・デビッド・ミラー氏は「『トランプ・ドクトリン』と呼ばれるものに真剣に関わるのは難しい」とし、「トランプ氏にドクトリンがあるとは思えない。トランプ氏が持っているのは直感だけだと思う」と述べた」

 

トランプ氏は、外交ドクトリンと無縁であり、「直感外交」という辛辣な評価だ。

 

(3)「トランプ氏が、イスラエルとイランの対立に関与する決断を下したのは、イランの最高指導者ハメネイ師がウラン濃縮能力を放棄しないと発言した後だった。米によるイラン攻撃を経て、トランプ氏はイスラエルとイランの停戦を発表、それはおおむね維持されている。トランプ氏は25日、イランに核兵器を持たせないと改めて宣言した上で、来週にもイランとの協議を再開すると表明した。ホワイトハウスのケリー報道官はコメント要請に、「トランプ大統領とバンス副大統領は、米の外交政策について『力による平和』というビジョンを共有しており、完璧なチームと言える」とした」

 

「力による平和」維持は、抑止力から一歩出た実力行使である。それが、相手国を牽制し続けられることで平和を維持するものだ。この前提には、圧倒的な軍事力保持が必要になる。イランは、米国の軍事力によって動きが取れないという結論になろう。

 

(4)「トランプ氏は、イスラエルとイランの紛争に介入するという決断を説明する圧力に直面している。トランプ氏は、米主導のイラクとアフガニスタンでの「愚かな」戦争が米を泥沼に陥れたと主張、外国の問題との関わりを避けるよう努力すると訴えることで、有権者を取り込んだ。ところが、イランとの長期紛争に巻き込まれる見込みとなったことで、戦略家スティーブ・バノン氏や保守系司会者タッカー・カールソン氏ら著名なトランプ支持者を含む共和党の孤立主義派を怒らせている」

 

MAGA(米国をもう一度偉大な国にする)運動では、他国のことに軍事的干渉をしないとしている。「内向き政策」である。これは、覇権国家米国としては許されない政策である。ドルを基軸通貨として使いながら、孤立主義をとることは大いなる矛盾である。ならば、基軸通貨の便益も返上すべきである。良いところ取りは認められないのだ。

 

(5)「世論調査もまた、次に何が起こるか分からないという国民の深い懸念を反映している。23日に締め切られたロイター/イプソスの世論調査によると、約79%が「空爆に対抗してイランが米国の民間人を標的にするかもしれない」と心配していると答えた。ブルッキングス研究所の上級外交政策研究員であるメラニー・シソン氏は、バンス氏がどのようにして政権が戦争の引き金を引くことなく軍事行動を行うことができるのかを説明することでトランプ氏の右派を納得させようとしているように見えると指摘する」

 

トランプ氏は、「戦争にならず火消しする」という極めて難しい役割を課されている。

 

(6)「一方で、バンス氏の「トランプ・ドクトリン」に真実味を感じる人もいる。ワシントンのシンクタンク、民主主義防衛財団の創設者兼会長であるクリフォード・メイ氏は「バンス氏は、ここ数日間の中東紛争に対するトランプ氏のアプローチを正確に要約している」と述べ、「ほとんどの歴史家は『ドクトリン』という言葉は時期尚早だと考えるかもしれない。しかし、トランプ氏がこの成功した米軍の武力行使を土台にすれば、誇るべきとてつもないドクトリンになるだろう」などと語った」

 

トランプ氏が、武力行使を土台にイスラエル・イラン紛争を解決できれば、それこそ「とてつもない」外交成果を上げられることになるとしている。

 

(7)「それでも、ドクトリンが定着するかどうかは、現在の紛争がどのように終結するかにかかっているだろう。外交問題評議会の専門家であるレベッカ・リスナー氏は「これが見事な成功であったとも、戦略的に大失敗であったとも、判断するのはまだ尚早だ」とした上で「外交が今後どのように展開し、イランの核開発計画の制約、可視化、存続という点で、実際にどこに着地するのかを見極める必要がある」と述べた」

 

トランプ外交の成否は、今後のイスラエル・イランの動きしだいである。イランが、神政体制維持を目的に当面、イスラエルへ攻撃しなければは紛争が収まるだろう。ただ、それが未来永劫に続く保証はない。イラン体制が変わらない限り、永続的な平和は来ないという厳しい現実を認識するほかない。

 

ただ、イラン財政の基盤が原油にあることから、エネルギー転換によって、いずれイラン経済は没落する。イラン神政の維持は、困難になろう。その時期がいつかだ。それまでは、軍事紛争が続く危険地帯である。早期のエネルギー転換を待つほかない。