米国防総省の情報当局者らは、イランの核施設に対する米軍の攻撃で核プログラムを最長2年遅らせることができたとみている。同省が7月2日、明らかにした。トランプ大統領は、攻撃でイランの核開発が「壊滅した」と主張していたが、より控えめな評価が示された格好となる。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月3日付)は、「イラン核開発、米攻撃で最長2年遅れ=米国防総省」と題する記事を掲載した。
国防総省のショーン・パーネル報道官は、報道陣向けのブリーフィングで当局者らによる評価を公表し、攻撃で「核開発計画を2年遅らせた」ことが示されたと述べた。
(1)「イランの核能力が、攻撃でどの程度の被害を受けたのかは、重要な問題として浮上している。また、イラン政府が破壊された施設を再建し、核兵器製造に必要な濃縮ウランなどの生産を再開するまでにどれだけの時間がかかるかという疑問も生じている。米軍のB2ステルス爆撃機は、山中深くにあるフォルドゥのウラン濃縮施設や、ナタンズにあるイラン最大の濃縮ウラン生産施設に対し、地下貫通型爆弾「バンカーバスター」を14発投下。またイスファハンにある第3の施設は、米潜水艦から発射された巡航ミサイルで攻撃した。米軍の攻撃は、イランの核施設や核科学者、さらに軍事指導者を標的としたイスラエルの攻撃に続くものだった」
今回の紛争以前には、広島に投下された爆弾と同程度の威力を持ち、トラックや船舶で運搬可能な粗末な核兵器をイランが製造するのに数カ月かかるとみられていた。また、ミサイルに搭載可能な弾頭を製造するのには1~3年かかると一般的には考えられていた。その中で一部のアナリストは、イスラエルと米国の攻撃を受け、体制維持には核兵器開発しかないとイランの強硬派が確信することを懸念している。イスラエルは、政治の意思さえ決まれば、核開発可能というところまできている。製造設備は破壊されても、製造知識は残っていると指摘されている。
(2)「ピート・ヘグセス国防長官は先週記者団に対し、米軍の攻撃がイランの「核開発の野心を破壊した」と述べ、トランプ氏の主張と同様の見解を示していた。一方で政府内外の専門家らは、被害の程度やイランが再建までに必要な時間について、より慎重な見方を明らかにしていた。国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、イランの核開発計画には「非常に深刻な被害」が及んでいるものの、一部の能力は無傷のままである可能性が高いと説明。CBSの「フェイス・ザ・ネーション」に出演した同氏は、「彼らに能力は残っている」とし、「数カ月以内に遠心分離機が稼働し、濃縮ウランを生産できる可能性があるし、それ以下の期間かもしれない」と述べていた」
IAEAグロッシ事務局長は、6月29日のCBSの「フェイス・ザ・ネーション」とのインタビューで、イランは数カ月でウラン濃縮を再開できる産業的・技術的能力を持っていると述べた。グロッシ氏は、「彼らは能力を持っている」とし、「数カ月以内に、あるいはそれより短い期間で、遠心分離機のカスケードを複数稼働させ、濃縮ウランを生産できる。率直に言って、全てが消え去り、何も残っていないとは主張できない」と述べたのだ。これは、イランが物理的には核を製造できる能力を身につけたことを意味している。
(3)「グロッシ氏はまた、米国とイスラエルの空爆にもかかわらず、イランの濃縮ウラン貯蔵の一部が移動された可能性があり、国際査察官がイランの核開発計画の残存状況を確認することが重要だと述べた。IAEA査察官が、イラン国内で活動を再開することへの期待は、イランが同機関との協力を停止すると2日に発表したことで打ち砕かれている」
イランは、IAEAへの協力拒否を決めている。IAEAは、イランで調査できる機会を失ったのだ。
(4)「米軍による攻撃の数日後に行われた国防情報局(DIA)の評価では、イランの核開発計画には数カ月の遅れしか生じていないとの見解が示されていた。だがトランプ政権の当局者らは、不完全な情報に基づく暫定的な結論だとして、この評価を一蹴していた。国防総省のパーネル氏は、イランの核インフラに深刻な打撃を与えたと同省が考えていることを強調。米軍の攻撃は三カ所の標的を「壊滅させた」とし、この中には遠心分離機や高濃縮ウランの貯蔵など、「核爆弾製造に必要な部品」も含まれると記者団に述べた」
イラン政府には今後、二つの選択肢に残されている。一つは、秘密裏の核開発計画を再構築し、可能な限り早く核兵器を製造する。もう一つは、ウラン濃縮を終了することで核兵器製造能力を制限し、トランプ政権が推進してきた外交的な道筋に同意することである。トランプ氏は、未だ「ディール」の道があると指摘されている。
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