AI(人工知能)は目下、大人気である。ホワイトカラーが、雑務から開放される「玉手箱」というほどの期待がかかっている。だが、米国ビジネス界では、こういうバラ色の夢を語る経営者が次第に減ってきたという。それどころか、AIが人間の職を奪う危険性が指摘され始めた。AIが、プログラマー、デザイナー、プロダクトマネジャー、データサイエンティスト、弁護士、それにカスタマーサポートや営業、財務のプロであっても関係ないと言う厳しさだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月4日付)は、「『AIで雇用は消える』米企業トップが語り始めた本音」と題する記事を掲載した。
企業の最高経営責任者(CEO)はもはやAI(人工知能)が雇用を奪うのかという問いを避けようとしない。むしろ人員削減がどのくらいの規模に及ぶかを予測し始めている。
(1)「米自動車大手フォード・モーターのジム・ファーリーCEOは先週、アスペン・アイデアズ・フェスティバルで行われた作家ウォルター・アイザックソン氏との対談で「AIは米国のホワイトカラー労働者のまさに半分を置き換えることになる」と、こう語った。「AIは、多くのホワイトカラーを置き去りにするだろう」と」米金融大手JPモルガン・チェースでは、消費者・コミュニティーバンキング部門CEOのマリアン・レーク氏が5月、投資家に対し、新たなAIツールの活用により今後数年で人員が10%減るかもしれないと述べた」
AIが、多くのホワイトカラーの仕事を奪うという警告が出始めた。聞き捨てにできない事態だ。
(2)「こうした発言は、米アマゾン・ドット・コムやAI新興企業の米アンソロピックなど他社の経営者が最近発した雇用を巡る警告とも一致する考え方だ。アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは6月、従業員宛てメモで「またとない」AI技術により、従業員数はこの先縮小する見通しだと述べた。「いま行われている仕事の一部は必要な人員が減るだろうし、他の仕事を行う人が増えるだろう」とジャシー氏は述べた。アンソロピックのダリオ・アモデイCEOは5月、米ニュースサイトのアクシオスとのインタビューで、1~5年後にはエントリーレベルの職の半分が消える可能性があり、米国の失業率は10~20%に達するかもしれないと述べた。同氏は企業幹部や政府当局者がこうした状況を「取り繕う」のをやめるように求めた」
1~5年後に、誰にも可能なエントリーレベルの職の半分は消える可能性がある。米国の失業率は、10~20%に達するかもと恐ろしい警告である。
(3)「フォードCEOのコメントは、シリコンバレー以外の米大手企業トップがこれまで語ったものの中では率直さが際立っている。同氏の発言は、AI技術によって生じうる人への悪影響を説明する経営者が現れ始めた、最近の変化を反映している。最近までホワイトカラー職がどれほどの規模で消滅しうるのかについて公然と認めようとする企業リーダーはほとんどいなかった。インタビューで雇用喪失のことを尋ねられると、CEOは慎重な物言いに徹し、歴史的にイノベーションは幅広い新たな役割を生んできたと指摘することが多かった。だが水面下ではここ数カ月、現スタッフを大幅に縮小しても事業を運営できるかもしれないと語り始めている。自動化ソフトウエアやAI、ロボットなどの技術が実用化され、なるべく無駄のない効率的な業務運営が可能になっている」
ここ数カ月、現スタッフを大幅に縮小しても事業を運営できるかもしれないと語り始めているCEOが増えてきた。自動化ソフトウエアやAI、ロボットなどの技術が実用化され、無駄のない効率的な業務運営が可能になっているのだ。
(4)「専門職人材は、AIの登場で全く変化しない職種はほとんどないという現実を受け入れるべきだろう。フリーランスのマーケットプレースを運営するファイバーのミハ・カウフマンCEOは今春、従業員向けメモでこう指摘した。「これは警鐘だ」と同氏は述べた。「プログラマー、デザイナー、プロダクトマネジャー、データサイエンティスト、弁護士、それにカスタマーサポートや営業、財務のプロであっても関係ない。AIが仕事を奪いにやって来る」と指摘する」
専門職人材は、AIの登場で大きな影響を受けることは確実だ。プログラマー、デザイナー、プロダクトマネジャー、データサイエンティスト、弁護士、それにカスタマーサポートや営業、財務のプロは、自らの出番をAIに奪われそうだ。
(5)「電子商取引サイトの構築を支援するカナダ企業ショッピファイのトビ・リュトケCEOは最近、従業員に対し、管理職がその仕事はAIにできないと証明しない限り、会社は新規採用を行わないと述べた。一部の企業リーダーはさらなる役割の統合を計画している。例えば、IT企業でプロダクトマネジャーとソフトウエアエンジニアの境界をなくし、一つの職種にするといったことだ。他にも、新型コロナウイルスのワクチン開発で知られるモデルナのように人員を増やさず、現従業員に新製品や新プロジェクトの立ち上げを求める企業がある」
管理職が、その仕事はAIにできないと証明しない限り、会社は新規採用を行わないと述べたという、ショッキングな話が出始めた。
(6)「オンライン再販サイトを運営するスレッドアップのジェームズ・ラインハートCEOは、「普通の人が考えるよりもはるかに多くの雇用が失われるだろうと思う」と6月の投資家向け会議でこう述べた。企業アドバイザーらによると、AIに対する経営者の見方はほぼ週ごとに変化している。この技術に何ができるかというリーダーの理解が深まりつつあり、また同業者が採用計画の大胆な変更や組織構造のフラット化を進めるのを注視しているからだ」
AIが、多くの人が考えるよりも人間の仕事を奪う可能性が出てきたという。これには、どう対応すべきか。深刻な問題に発展してきた。
コメント
人類の幸福のためにAIの活用はどうあるべきか、このことについての本格的な論議が影をひそめています。
人文学者は、今こそ活躍しなければならないのに、多くは意味もない過去の話にとらわれて、未来志向が有りません。情けない!情けない!
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