トランプ米大統領は6日、インドからの輸入品に合計で50%の高関税を課すと発表した。米印関係が広く改善してきた時期に急ブレーキがかかった形で、モディ氏は難しい立場に立たされている。米印は、「クアッド」(日・米・豪・印)4ヶ国の同士国である。インド太平洋戦略において、対中戦略で共同歩調を取る間柄にも関わらず、インドがロシアの原油を輸入していることから、米国が既存関税と合せて50%関税を課すことになった。この問題は、どのように解決するのか。中国は、これをみてほくそ笑んでいるであろう。
『フィナンシャル・タイムズ』(8月8日付)は、「『絶対妥協しない』か『降伏』か モディ・インド首相の対米貿易戦略」」と題する記事を掲載した。
米調査会社ユーラシア・グループのインドアナリスト、ラフル・バティア氏は「モディ氏は米印関係に多くを投じており、貿易協定が早期に締結されることを望んでいるが、特に国内では米国の圧力に屈したと見られるわけにはいかない」と解説した。
(1)「インド野党は、すでにトランプ氏に立ち向かっていないとして首相を批判しており、モディ氏自身の支持基盤も「もはや米大統領に好意的な意見を持たなくなった」と言う。トランプ政権は、インドによるロシア産原油の購入が、ウクライナでのロシアの戦争の資金になっていると主張している。そうした原油購入への対抗措置として、米政権はインドに対し世界でも最高水準に入る関税率を示した」
米国は、ロシアのウクライナ侵攻を停戦させる手段として、ロシア産原油を輸入しているインドへ制裁関税を課した。
(2)「モディ氏は、トランプ氏の圧力に抵抗しているように見られながら、インド最大の貿易相手国である米国との関係を修復する方法を見つける必要があり、そのバランスを取らなければならないとアナリストは指摘する。首相として現在3期目に入ったモディ氏に対して、めったに真剣な攻勢をかけることのない野党の政治家は、突破口を見いだしている。ホワイトハウスが6日、インド製品に対する関税率を50%に引き上げると発表した後、インド議会で野党を率い、インディラ・ガンジー氏の孫でもあるラフル・ガンジー氏は「モディ首相は自分の弱さがインド国民の利益を害するのを許してはならない」と書いた」
インド最大の輸出先は米国である。それだけに、50%関税は手痛い打撃になる。感情論で対立しているわけにはいかないのだ。
(3)「関税の脅しを受け、インドではトランプ氏への敵対心が強まっている。トランプ氏が最近になってロシア政府に対する態度を硬化させるまで、米政府はインドによるロシア産原油の購入を容認してきた経緯があり、トランプ氏が原油購入を巡ってインドをやり玉に挙げたことに多くの人が憤慨している。インドのシャム・サラン元外務次官は「ロシア産原油の購入がそれほどの大問題ならば、彼(トランプ氏)はなぜ中国による原油購入について何も言わないのか」と問いかける。「なぜインドに対してだけ行動に出たのか」と指摘」
米国は、これまでインドのロシア産原油輸入について黙認していた。しかも、同じロシア産原油輸入国の中国は「お咎めなし」である。この不公平な姿勢にも怒りを募らせている。
(4)「外交上、世界でも特に重大な2国間関係であり、最近まで台頭する中国に対する防波堤と見なされていた米印間の騒動は、トランプ氏がホワイトハウスでモディ氏を温かく歓迎し、同氏のことを「素晴らしい友人」と称してから6カ月もたたないうちに勃発した。両国は2月、2国間貿易協定の第1弾を秋までに交渉するとともに、2国間貿易の規模を2倍以上に拡大し、2030年までに5000億ドル(約73兆6000億円)に引き上げると表明した。モディ氏は6月、ニューデリーで年内に予定される日米豪印の安全保障枠組み「Quad(クアッド)」首脳会合にトランプ氏を招待しており、貿易協定の第1弾がその場で調印されるとの臆測が飛び交った」
年内には、ニューデリーで日米豪印の首脳会談が予定されている。早急に、米印の対立を収束させねばならない。
(5)「だが、両国の関係はすでに悪化し始めていた。きっかけはトランプ氏が5月、カシミール地方のインド支配地域でのテロ攻撃を受けて始まったインドとパキスタンの戦闘を停止させたのは自分だと主張したことだった。米国とインドの貿易交渉について説明を受けた複数の関係者によると、トランプ氏は停戦を仲介するために貿易を交渉材料として使い、隣り合うアジアの核保有国間で起きた数十年ぶりの規模の衝突を終わらせたと主張していたが、自身の主張をモディ氏が公然と否定したことにいら立っていたという」
米印対立の導火線は、米国がインドとパキスタンの国境紛争を収束させたことに対する、インドの「謝意」がなかったことだ。
(6)「7月初旬には草案段階の貿易協定が、インドと米国の交渉担当者の間で合意された。だが、署名されないままトランプ氏の机に放置された。米関係者は、「彼(トランプ氏)の関与がなければ核戦争に発展しかねなかった今回の激しい紛争で停戦を確保するために、彼はインド、パキスタン両国との関係を使った」とコメントした。カーネギー国際平和財団の傘下組織カーネギー・インディアのルドラ・チャウドリ所長は、「米大統領は今でも、紛争の仲裁の解釈についてインドが公の場で同氏のエゴを満たしてやらなかったことに腹を立てていると思う」と話す。「現在の私の見立てでは、誰もが自分の立場を頑として貫くことになるだろう。(事態を打開する)道筋を見つける必要がある」と指摘」
トランプ氏は、ノーベル平和賞を狙っている。インド、パキスタンの停戦は、重要な受賞ポイントになるだけに、インド側の態度に立腹している。


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