あじさいのたまご
   

ウクライナ戦争の終結は、これからが難問である。トランプ氏とプーチン氏が行なったアラスカでの首脳会談。18日にホワイトハウスで開かれたトランプ氏やゼレンスキー氏、欧州首脳らとの協議は、プーチン氏がゼレンスキー氏と首脳会談に応じる意思があるかどうか、大きな関心が集まっている。ロシア政府当局者らは19日、会談の実現に向けた動きをほとんど示唆せず、ラブロフ外相は、当局者間の接触に関する計画は「細心の注意を払って」進められるべきだと発言。他のロシア政府高官らは、ゼレンスキー氏がまともな政治家ではないとやゆした。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月20日付)は、「ロシア・ウクライナ首脳会談は期待薄か、現状維持続く可能性」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ロシアのプーチン大統領は、3年半にわたってウクライナのゼレンスキー大統領が正統性のない指導者で、操り人形だと批判してきた。米国トランプ大統領の要請に応じるかに注目が集まっている。プーチン氏は、2022年のウクライナ侵攻を正当化するため、国民に対し、この戦争は欧米との広範な対立の一部であり、ゼレンスキー氏とウクライナは単なる駒にすぎないと主張してきた。だが、ゼレンスキー氏と直接会談することになれば、慎重に築き上げてきたその構図と大きく矛盾する」

 

プーチン氏は、ジレンマに立たされている。これまで、ゼレンスキー氏を操り人形と批判してきたからだ。そのゼレンスキー氏に会えば、プーチン氏はこれまでの発言に傷がつくという理屈だ。無辜の市民が傷つき倒れるよりも、自己保身が先である。

 

(2)「トランプ氏からの要請は、プーチン氏を窮地に追い込むものだ。要請を拒否すれば、すでに追加制裁をちらつかせているトランプ氏の怒りを買うリスクがある。一方でゼレンスキー氏との会談に応じれば、ロシアのエリート層や国民との関係で政治的な打撃を受けることも考えられる。プーチン氏が速やかに、あるいは容易にゼレンスキー氏との会談に同意するとはみられていない」

 

トランプ氏という強圧権力者が、プーチン氏を苦しめている。要請に答えなければ、経済制裁が強化される。時間を引き延ばしつつ、最大の利益を得る。こういうプーチン式交渉術は成功するか。

 

(3)「プーチン氏は、ゼレンスキー氏を欧米の手先だとして繰り返し非難し、両首脳が会談する前には多くの複雑な問題を解決する必要があると主張してきた。またゼレンスキー氏が戦争中の選挙実施に関する問題を理由に通常の5年の任期を超えて大統領職を務めている点に触れ、ゼレンスキー氏の正統性に疑問を投げかけている。さらに、同氏が和平合意に署名する権限にも疑問を呈している」

 

ロシア経済が現在、急減速に見舞われている。ここへ、制裁が強化されればプーチン氏のメンツは吹飛ぶ。時間の問題であろう。

 

(4)「プーチン氏はこれまでに、両首脳の会談は和平プロセスの最終段階で行われるべきで、必要な文書に署名する形式的なものにすぎないと発言。6月には「会談する用意はある。ただし延々と物事を分け合うのではなく、最終段階としてこれを終わらせるためであればだ」と述べた。また「正統な当局者の署名が必要になるだろう」と語った」

 

「正統な当局者の署名が必要」というプーチン発言は、ゼレンスキー氏が侵略戦争で大統領選が行えないという「弱点」を指している。引き延しの口実だ。

 

(5)「アナリストらはプーチン氏がこの戦争に関し、冷戦終結以来ロシアが抱いてきた不満を再検討する広範な取り組みの一つだと説明。問題は、ゼレンスキー氏にとどまるものではないとした。ロシアがトランプ政権と関与していることは、ウクライナでの領土譲歩をはるかに超え、欧州全体の安全保障体制の構造に関わる合意を確保する取り組みの一部となっている。

 

プーチン氏は、NATO体制に疑念を持っている。これが、ウクライナを唆しているという理由だ。自らの侵略意図を隠すためであろう。

 

(6)「カーネギー財団ロシア・ユーラシアセンターの上級研究員、タチアナ・スタノバヤ氏は、「プーチン氏にとって、これは欧米側とのより広範な対立であり、ウクライナはロシアと欧米の戦場になっている」と説明。「プーチン氏からすれば、その中でゼレンスキー氏はプレーヤーではない」とし、「ウクライナが戦い続けているのは、欧米の支援があるからだ」と付け加えた」

 

プーチン氏は、ウクライナ戦争がロシアと欧米の戦争という位置づけである。となれば、米国は、前面に出てプーチン氏へ圧力をかけなければならない。プーチン氏は、「後講釈」で、侵略戦争を美化しているのだ。

 

(7)「プーチン氏は、和平に向けたトランプ氏の努力に対し、これまでに微妙な駆け引きを続けてきた。だがゼレンスキー氏との会談に応じれば、これが終わる可能性があるのは最も重要なポイントでもある。プーチン氏は、米政府による追加制裁を避けるために和平への意欲を表明する一方で、ロシア軍は攻勢を強めてウクライナ東部で重要な進展を勝ち取っている。その中でゼレンスキー氏との首脳会談に応じれば、プーチン氏は望まない正念場を迎える可能性もある」

 

プーチン氏の狙いは、米国の経済制裁を避けるために和平のポーズを取るが、すぐに休戦する気持ちはない。引き延ばして、ウクライナの占領地を増やす魂胆である。ゼレンスキー氏との首脳会談に応じれば、プーチン氏は望まない正念場を迎える可能性がある。