あじさいのたまご
   


中国の中核産業になった自動車は、地方政府が雇用や歳入源としてバックアップし、過剰設備の整理という喫緊の課題は手つかずである。6月1日実施の支払手形サイト60日規制は、国営自動車企業3社が守っただけという惨憺たる結果である。自動車業界は、現在の稼働率が50%程度とみられる。それでも、相変わらず設備投資へ前向き姿勢。集団的な「自殺行為」である。地方政府も、絡んでいるのだ。

 

『レコードチャイナ』(9月7日付)は、「中国はなぜEVブームを冷まそうとするのか―華字メディア」と題する記事を掲載した。

 

シンガポール華字メディア『聯合早報』(9月4日付)は、中国政府が電気自動車(EV)業界の過度な価格競争に是正を図っている現状を分析する記事を掲載した。

 

(1)「記事は初めに、「EVの分野で世界をリードしている中国では、過去5カ月間のバッテリー駆動車とプラグインハイブリッド車の販売台数が全販売台数の半分を超え、ガソリン車の需要が減少した。だが、業界はあまり楽観的な状況とは言えないようだ。約50社のメーカーが顧客獲得のために値下げを繰り返し、部品サプライヤーへの支払いに苦慮しているにもかかわらず、国有銀行から借り入れを続け、工場増設をするなど過剰生産の流れが止まらない」

 

約50社のメーカーが、顧客獲得のために値下げを繰り返している。支払手形サイト短縮令が出ているにもかかわらず、銀行借入による増設を続ける始末である。自殺行為が止まらないのだ。

 

(2)「中国政府は、このような熱狂的な動静を過度な競争を意味する『内向化』と定義し、政治局経済会議の声明で悪質な競争の防止を訴えるなどのキャンペーンを始めているが、8月11日に政府が発表したコンプライアンス報告書によると、部品受領後60日以内にサプライヤーに支払いを行うシステムを確立していたのは国有もしくは国営企業の3社だけだった」と紹介した」

 

部品受領後60日以内にサプライヤーに支払った自動車企業は、たったの3社のみという。相変わらず、拡大競争を続けている。

 

(3)「続けて、「自動車メーカーの投資を抑えるのは難しい。7月のデータでは、政府の警告の影響で減速が見られるものの、24年の同期と比較すると最初の7カ月間で21.7%増加し、4年連続の増加を示した。過剰生産と価格競争は中国経済にとって長年の課題だ。債務に依存の投資が政府主導の一連のプロジェクトに流れ込んだ結果、企業や工場が限りのある国内市場で激しい競争を繰り広げている」と述べた上で、「自動車業界の『内向化』は中国の投資主導型成長戦略の代償を表している。例えば、7月の製造設備投資のペースが少しでも鈍くなれば、経済全体のパフォーマンスを低下させるだろう。EVはスマートフォンやノートパソコンのように、製造量が増えれば増えるほどコストが安くなることから、メーカー側は市場シェアの拡大のために工場規模を拡大し、販売価格をどんどん下げようと考える」と指摘した」

 

設備投資の伸びが落ちれば、すぐにGDP成長率に影響するというダイレクトの関係ができている。自動車企業は、市場シェアの拡大のために工場規模を拡大し、販売価格をどんどん下げようとの考えに変わりがない。もはや、ここまで来ると「お手上げ」である。裏には、地方政府がバックアップしているという事情がある。

 

(4)「さらに、「当局は自動車業界全体の生産能力の管理で困難に直面している。その原因として、民間企業のEVやハイブリッド車の急増分の相殺のための生産縮小を国有企業に拒否されていることが挙げられる。中央政府とつながりがある国有企業の大手自動車メーカー4社(一汽集団、東風汽車、長安汽車、広汽集団)はガソリン車の生産を主としており、内燃機関には強いものの、EVではBYDやテスラシャオミには遠く及ばない。このような国営企業の工場閉鎖や従業員の解雇は、注目度の高い自動車産業だからこそ、政治的に困難だと考えられる」と指摘した」

 

業界競争において調整が効かないのは、民営企業と国営企業の利害関係が対立している結果だ。民間企業は、EVやハイブリッド車が急増しているので、その分の相殺を国有企業の内燃機関関連で減産するように求めて対立している。国有企業は、工場閉鎖や従業員の解雇をできず、「にらみ合い状態」が続いている。

 

(5)「最後に、「自動車メーカーと部品のサプライヤーが支払い不能になった場合、銀行にも巨額損失が及ぶ可能性がある。自動車メーカーは他社が損失を補填し続けられるよう保証する立場にあり、銀行は当局からクリーンエネルギー技術への投資を義務付けられている。部品メーカーは、メーカーの数カ月にわたる支払い遅延を受け入れつつも経営維持のために銀行融資に頼っており、事業立ち上げで融資を利用した多くの地方自治体は企業の救済資金を提供するためにさらに借り入れを必要としている」と述べた」

 

地方政府では、自動車企業救済のための資金を借入れるケースが出ている。こうなると、自動車業界の競争激化が、地方政府を巻き込んで「連鎖破綻」になりかねない状況になっている。