中華料理には豚肉が欠かせない。中国が、世界最大の穀物輸入国であるのは、一大養豚産業が控えている結果だ。中国の家庭に欠かせない豚肉が、昨年8月のピークから今年8月で25%も値下がりしているのは、消費縮小と供給過剰の両面が影響している。中国は、2年おきに豚肉価格の暴落に出遭っている。まさに規則的な現象だ。ここまで分っていれば、事前に地方政府が生産調整の手が打てそうである。それができず、生産者を泣かせている。中国「国家資本主義」の名折れの事態が起こっているのだ。
『ブルームバーグ』(9月13日付)は、「中国政府、豚肉の過剰生産抑制図る-価格下落で養豚業者と対策協議へ」と題する記事を掲載した。
世界最大の豚肉生産国、中国が豚肉の過剰生産抑制に取り組んでいる。政府は価格を下支えするため、国内の大手養豚業者を呼び出して協議する予定だ。
(1)「主要養豚25社が、北京で9月16日に開かれる会合に出席し、生産抑制計画を共有したり、これまでの取り組みを報告したりするよう求められている。農業農村省が各社に送った通知をブルームバーグが確認した。同省畜牧獣医局によれば、出席する企業は、来年1月までの雌豚の頭数削減目標と今後1年間の生産計画を事前に提出しなければならない」
中国政府が、豚肉暴落に驚き主要養豚業者25社を集めて、今後1年間の生産計画を事前に提出しなければならなくなった。一般的な食肉用の豚は、半年で生産されるのが標準とされる。これから生産計画を立てれば、26年春には出荷量を減らせるという目論見であろう。「泥棒を捕らえて縄をなう」という状態だ。「社会主義計画経済」の看板が泣く事態である。
中国では、年間30頭以下の零細養豚農家が多数を占めている。政府の指導が届きにくいという一面もあるが、あれだけ厳しい「産児制限」を行なった国だ。しらみつぶしに個別農家の状況を調べれば、生産状況を把握できないことはあるまい。要は、怠慢なのだ。零細農家は豚肉価格の変動に敏感で、短期的な利益を求めて一斉に増産・撤退を繰り返している。このため、需給の安定化が難しいとされる。
ノーベル文学賞に輝いたパール・バック女史の『大地』(1932年)では、旧中国の農家が共同で豚を飼い、年末に売って「正月用品を買う」情景が描写されている。日本の戦前の農家が、鶏を飼う習慣と同じようなものであろう。中国では、農家と豚は切っても切れない関係にある。
(2)「この通知によると、国家発展改革委員会(発改委)も参加予定。中国メディアの財聯社が会合について最初に報じていた。農業農村省は、ブルームバーグからの問い合わせに対してすぐにコメントしなかった。中国は今年、過剰供給とデフレ圧力に対処するため生産者に繁殖用の豚の頭数を削減するよう求めている。景気低迷で消費が伸びず、豚肉の卸売価格は過去1年で25%近く下落した」
豚肉相場の変動が激しいことから、米国では「ピッグ・サイクル」という言葉が生まれているほどだ。1950〜1980年代の米国では、豚肉価格が3〜4年周期で大きく上下するのが一般的であった。それが今、政府の力を借りずに民間が自主的に相場変動を予測して生産量を調整している。
2024年〜2025年の米国では、豚肉価格は上昇傾向にある。卸売価格は前年同月比で11.2%高だ。これは、牛肉価格の高騰による代替需要や、ラテンアメリカ・アジア向けの輸出増加が背景にあると指摘されている。このように、米国と比べて中国の状況は、「時代遅れ」という印象を深める。国家資本主義の限界であろう。


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