米国トランプ関税の引上げによって、日本経済へ大きな影響を与えると危惧されてきたが、日銀の9月短観では2期連続好転という「杞憂」に終った。日米関税交渉をまとめた赤沢大臣は、「日米ウイン・ウインの関係維持」と発言し続けている。現状は、赤沢氏の指摘する状況で、日本経済を揺さぶる事態とはなっていない。
『ブルームバーグ』(10月1日付)は、「日銀短観、大企業製造業景況感は2期連続改善-早期利上げ観測の支え」と題する記事を掲載した。
日本銀行が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業製造業の景況感は2四半期連続で改善した。トランプ米政権の関税政策を巡る日米合意など不透明感の後退が、企業の景況感に影響した可能性がある。
(1)「大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス14で、市場予想と一致した。2024年12月以来の高水準。前回6月調査はプラス13だった。加工業種の造船・重機や電気機械、はん用機械、自動車などが改善。素材業種の鉄鋼や石油・石炭製品などが悪化した。先行きはプラス12と悪化が見込まれている。大企業非製造業の業況判断DIはプラス34と横ばいで、市場予想と一致した。建設や情報サービス、電気・ガスなどが改善した半面、宿泊・飲食サービスや通信、不動産などは悪化した。先行きはプラス28と悪化の見通し」
大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス14。24年12月以来の高水準で、トランプ関税引上げの影響を打ち消している。競争力が回復している結果だ。
(2)「今回の短観では、日米合意も踏まえた米関税政策が、製造業を中心とした企業の景況感や設備投資などの事業計画に与えている影響が注目された。結果として、引き続き影響は限定的にとどまっており、市場で高まっている日銀の早期利上げ観測をサポートする材料となりそうだ。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、「日銀短観では米国の関税による大きな影響はこれまでのところ見られていない」と指摘。日銀が最近のコミュニケーションで利上げが近いことを示唆しているとし、短観も企業活動の底堅さを示したことから、「今月の利上げの可能性は高まっている」と述べた」
トランプ関税の影響を最小限にとどめている結果、利上げの公算が強まっている。
(3)「日銀によると、米関税政策の影響について企業からは、日米合意を踏まえて不確実性が低下する一方、影響を新たに織り込む動きも見られている。物価高に関しては、価格転嫁の進展が業績改善要因となっているが、人件費・物流費などのコスト上昇や消費の下押しも懸念されている。1日の外国為替市場の円相場は1ドル=148円台に下落。米国政府機関の一部閉鎖への警戒感や日本銀行の利上げ期待の高まりからのドル売りが一服し、日銀短観が予想通りだったことからドルが買い戻されている」
日銀が利上げに慎重であったのは、トランプ関税の影響を見極めるためであった。これで、利上げへの条件が整った。
(4)「企業のインフレ期待を示す「企業の物価見通し」は、企業が想定する消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が平均で1年後、3年後、5年後のいずれも2.4%となった。5年後は前回調査から0.1ポイント上方修正された。25年度の大企業全産業の設備投資計画は前年比12.5%増。前回調査から0.9ポイントの上方修正となった。市場予想(11.3%増)を上回った。事業計画の前提となる25年度の想定為替レート(全規模・全産業)は、ドル・円が1ドル=145円68銭、ユーロ・円は1ユーロ=160円65銭となった」
企業の想定する消費者物価指数の前年比上昇率が、平均で1年後、3年後、5年後のいずれも2.4%となった。ここから、企業は金利水準をどのように推測しているか。1%以上を見込んでいるだろう。
(5)「米関税政策を巡っては、日本からの輸入品に25%の相互関税を課す方針が表明されていたが、政府間交渉の結果、自動車を含めて15%とすることで合意した。日銀の植田和男総裁は9月の金融政策決定会合後の会見で日米合意を評価しつつ、「今後のデータやヒアリング情報を確認していきたい」と語った。日銀は9月会合で、政策金利を0.5%程度に据え置くことを決めた。政策維持には、高田創、田村直樹の審議委員2人が利上げを主張して反対し、利上げに慎重とみられていた野口旭審議委員も29日の講演で、政策調整の必要性に言及。同会合の主な意見でも利上げ議論の広がりが確認された」
日本経済が、急速に正常化に向っている。ハッキリと、インフレ意識に向かい合う段階へ来ている。
(6)「ブルームバーグ・エコノミクスの見方(木村太郎シニアエコノミスト)は、次の通りだ。「大企業製造業の景況感は堅調で、米国の関税措置の影響が限定的であることを短観は示唆している。物価指標はインフレ率が2%を上回る水準で推移するとの見方を示しており、日銀のリスクバランスは、米関税による成長減速から国内要因による物価上昇に傾く可能性がある。われわれは10月の会合で0.25ポイントの利上げを予想する」
米国は、日本の利上げが遅れていることに批判的だ。これが、円安へ傾斜させているとみている。米国経済のピークアウトは、早ければ年内にも始まる。日米金利差が、本格的に縮小へ向うのはこの頃からか。


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