中国は、EV(電気自動車)が限界にぶつかるや、すぐにAI(人工知能)へ照準を合わせ、補助金によるテコ入れで発展策をとり始めた。だが、米国の半導体禁輸政策によって、自前での製造を余儀なくされている。見栄を張る中国政府は、ハイテック企業を督励しているが、基礎技術不足で難航している。ファーウェイのプロセッサー「Ascend」には、TSMCやサムスン・SKハイニクスの半導体が大量に使われており、「羊頭狗肉」状態を露呈している。
『ブルームバーグ』(10月3日付)は、「ファーウェイ、自社AI半導体にTSMCやサムスンの部品使用-調査」と題する記事を掲載した。
AI半導体の国産化目指す中国、依然として海外製ハードウエアに依存中国の華為技術(ファーウェイ)が同社の人工知能(AI)プロセッサー「Ascend」シリーズの一部で、アジア大手テクノロジー企業の先端部品を使用していたことが調査会社の解析で明らかになった。AI半導体の国産化を目指す中国だが、依然として海外製ハードウエアに依存している実態が浮き彫りとなった。
(1)「カナダの調査会社テックインサイツは資料で、ファーウェイの第3世代「Ascend910C」チップの複数サンプルを分解調査した結果、台湾積体電路製造(TSMC)および韓国のサムスン電子とSKハイニックスの部品が使われていたと発表した。テックインサイツの調査によると、ファーウェイのアクセラレーター向けに使用されたダイ(die)の製造元はTSMCだった。ダイは半導体ウエハー上に並ぶ電子回路である。サムスン電子とSKハイニックスが、製造した旧世代の高帯域幅メモリー(HBM)「HBM2E」も搭載されていた。両社の部品はそれぞれ異なるサンプルで確認されたという」
ファーウェイの第3世代「Ascend910C」チップには、TSMC、サムスン、SKハイニクスの部品が使われている。
(2)「米国による対中禁輸政策は、中国が最先端AIシステムにアクセスすることを制限する狙いに加え、ファーウェイやその他の中国半導体メーカーが製造能力を高め、米半導体メーカーのエヌビディアに世界市場で挑むことを防ぐ目的もある。中国当局は一方で、国内半導体業界をエヌビディア製品依存から脱却させようと図っており、そうした中でファーウェイの910Cは国内で最も競争力のある製品となっている」
中国当局は、国内半導体業界をエヌビディア製品依存から脱却させようと図っている。ファーウェイの910Cは、国内で最も競争力のある製品とされている。その中国最先端AIチップに西側諸国の部品が使われているのだ。
(3)「ファーウェイは、国内のパートナーによる910Cの生産拡大を進めているが、以前確保していた海外製品の在庫が極めて重要な役割を果たしてきた。代表的な事例として、ファーウェイはTSMCで製造された数百万個のダイを調達することに成功。これは算能(Sophgo)という仲介会社を通じたもので、同社は中国企業への転売を事前に開示していなかった。TSMCは算能との取引を停止し、米政府に通報。米政府は算能に制裁を科した。それでもファーウェイはダイの在庫推計290万個をAscendシリーズに活用し、910C向けに今年いっぱいは十分に確保できる見通しだと、セミアナリシスのディラン・パテル氏ら専門家は分析している」
ファーウェイは、違法手段でTSMC製造の数百万個のダイを調達していた。これを使って、今年いっぱいは910C生産が可能という。
(4)「HBMについても課題がある。SKハイニックスは、米マイクロン・テクノロジーやサムスン電子と競合し、この分野のリーダーとなっている。HBMはエヌビディア製品などAIシステムに不可欠な部品で、通常は特定のプロセッサーと組み合わせて製造される。技術的に極めて複雑で、DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)の分野で先行するサムスン電子でさえ、エヌビディア向けHBMの適合認定を得るのに数年を要した」
HBMは、エヌビディア製品などAIシステムに不可欠な部品である。通常は、特定のプロセッサーと組み合わせて製造される。それが、ファーウェイの手に渡っていた。
(5)「米国は24年後半に「HBM2」およびそれ以降の先端モデルの対中販売を規制。さらに長鑫存儲技術(CXMT)など中国メーカーの生産能力を制限する規制を強化した。 セミアナリシスによると、ファーウェイはTSMCのロジックウエハーを備蓄したのと同様に、HBM在庫も積み上げていたという。ファーウェイがサムスン電子やSKハイニックスのHBMをいつ、どのように入手したのかは明らかになっていない」
ファーウェイは、TSMCのロジックウエハーを備蓄したのと同様に、HBM在庫も積み上げていたという。
(6)「セミアナリシスによれば、中国のCXMTはHBMで一定の進展を見せているものの、ファーウェイは依然として海外製品への依存度が高い。在庫が減り、「年末までには中国はHBMでボトルネックに直面すると予想される」という」
中国のCXMTは、HBMの試作に取りかかっているが成果を出していない。年末までは、手元のHBMの在庫があるものの、それ以降は未知数である。


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